団体交渉において弁護士が参加・同席するメリットと、同席する時の注意点について解説します。
突然団体交渉を申し入れられ、はじめての経験に不安がつのる気持ちがよくわかります。しかし、団体交渉の当事者はあくまで会社であり、弁護士はアドバイス、サポートする立場です。そのため、弁護士に団体交渉への参加・同席を依頼したとしても、準備事項や当日の交渉について、会社として主体的に取り組む必要があります。
当事務所では、団体交渉への参加・同席を依頼される場合、積極的にお受けしております。おまかせいただけるときも、弁護士に丸投げするような交渉態度では、団体交渉拒否の不当労働行為との指摘を受けるおそれがあるため注意が必要です。
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なお、団体交渉について深く知りたい方は、下記まとめ解説をご覧ください。
まとめ 団体交渉の対応を弁護士に依頼するメリット・依頼の流れと、弁護士費用
まとめ 団体交渉の対応手順
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団体交渉に弁護士が参加・同席するメリット
初めに、団体交渉に弁護士が参加・同席することのメリットについて3つ解説します。
初めて合同労組(ユニオン)から団体交渉の申入れを受けるとき、不明点が多く困惑することでしょう。参加・同席を依頼いただくかはともかく、まずは弁護士に法律相談し、アドバイスをお聞きいただくことが有効です。
なお、弁護士以外にどのような人物が参加すべきかは、「団体交渉における会社側の参加者・担当者」に関する解説もご参照くださいませ。
組合の圧力に屈しない
メリットの1つ目は、組合の圧力に屈しないことです。
団体交渉は、通常の交渉とは少し異なる空気で行われます。特に、合同労組(ユニオン)との団体交渉では、罵声や怒号、野次が飛び交い、精神的ショックやストレスを感じる方が多いのではないかと思います。
しかし、組合の圧力に屈してしまい、その場で出された書面にサインをしてしまえば、労使間の約束ごとは労働協約としての強い効果を生じます。しっかり会社の主張を伝えていくためには、組合の圧力に屈しず、団体交渉の席上でひるまず発言しなければなりませんが、会社側の担当者だけではこのような対応が難しいケースが多いです。
法的に正しい解決が期待できる
メリットの2つ目は、法律に従った正しい解決が期待できることです。
合同労組(ユニオン)の行う団体交渉では、ある社員と会社との間の労働問題、つまり、個別労使紛争の解決が目的とされることが多いです。このとき、労働組合側は労働法の知識を有していますが、会社側では知識が十分ではなく、組合側にとって有利な解決となってしまうことがあります。
団体交渉に、弁護士に参加・同席してもらうことにより、その場で法的なアドバイスを受けることができます。労働組合の法的な主張について、正しいか間違っているかについての、適切なアドバイスを受けることが期待できます。
特に、どのような言動が不当労働行為にあたるか、もしくはあたらないかを知っておくことは、団体交渉を正常な話し合いとするためにとても重要です。
証人になる
メリットの3つ目は、団体交渉に参加・同席していた弁護士は、不当労働行為救済申立事件で証人として証言する立場となることです。
団体交渉の際にきちんと対応していれば、参加・同席していた弁護士にもその旨を証言してもらって、不当労働行為には当たらないことを主張することができます。
ただし、このことはデメリットとして働くおそれもあり、団体交渉に参加・同席していた弁護士が会社にとって不利益な発言をしてしまうと、その事実は、後の紛争で会社側にマイナスな事情として考慮されてしまいます。この点で、団体交渉では、労働組合から常に発言を監視され、録音されていると考えて動かなければなりません。
団体交渉に弁護士が参加・同席する時の注意点
多くのケースでは、団体交渉に弁護士が参加・同席したほうが、会社側にとって有利に進むと考えられます。しかし、それは、会社側が労働組合対応に関する基本をきちんと理解し、弁護士に丸投げせずに当事者意識を持って対応する時に限られます。
弁護士に依頼したからといって、会社が組合対応を軽く考え、弁護士に丸投げしたり、団体交渉の席上で不用意な発言をしたりすれば、たとえ弁護士が参加・同席していても不利な流れとなってしまうこともあります。そのため次の注意点を守るようにしてください。
そこで次に、団体交渉に弁護士が参加・同席する時の、会社側の注意点について解説します。
「弁護士任せ」は不当労働行為のおそれ
団体交渉に弁護士が参加・同席する場合でも、団体交渉の当事者はあくまでも会社です。そのため、弁護士はあくまでもアドバイザーであり、弁護士に丸投げすることはできません。
なお、労働組合側で参加する上部団体の役職者は、弁護士と異なり、単なるアドバイザーではなく団体交渉の当事者となります。
そのため、団体交渉で弁護士に参加・同席してもらったとしても、弁護士に全て任せきりにしていると、十分な交渉をしていないと判断され、団体交渉拒否の不当労働行為だとの指摘を受けてしまうおそれがあります。ましてや、会社側の人物が一切参加しなかったり、権限のない平社員しか参加しなかったりして、弁護士が中心となって団体交渉を進めているようでは、違法な団体交渉拒否と言われても仕方ありません。
そのため、団体交渉について弁護士に参加・同席してもらうとき、次のような交渉態様とならないよう注意が必要です。
- 会社の者が一切発言せず、団体交渉における全ての説明を弁護士が行う
- 会社、労働組合の議論を弁護士が遮る
- 労働組合から会社の内情について説明を求められ、会社の者が回答できない
- 会社の者が回答を求められても、「弁護士に任せている」としか回答できない
上記のような問題ある交渉態様となってしまわないためには、会社側の参加者が十分に発言し、交渉に参加できるよう、団体交渉開始前の十分な事前準備が必要となります。
相談タイミングを見誤らない
団体交渉に対応するにあたり、合同労組(ユニオン)から最初の連絡が来た時点で、既に組合側では十分な準備をしていることが多く、戦いは始まっています。そのため、団体交渉当日より前にやるべきことは多くありますから、相談タイミングを見誤らないことが大切です。
団体交渉の参加者は、労使の協議で決めるものであり、組合側の要求に従わなければならないわけではありません。
そのため、労働組合から、弁護士の同席を拒否されたり、「会社の者だけで来るように」と言われたりしても、弁護士の同席を求めることに全く問題はありません。
弁護士がいても即決はしない
弁護士に、団体交渉に参加・同席してもらえば、団体交渉の席上で、即座にアドバイスをもらうことができます。実際、団体交渉の席上で、どうしても組合の発言が正しいかどうかが判断できず、一方で組合が早急な回答を求めてくるとき、「法律の専門的な判断が聞ければ回答できるのに」と感じることが多いのではないかと思います。
しかし、たとえ弁護士にその場でアドバイスをもらえたとしても、あくまで法的な側面からのアドバイスにとどまるのであり、その他の様々な事情を踏まえた経営判断を下すには十分でないこともあります。そのため、弁護士が参加・同席していたとしてもなお、その場で即断即決しなければならないわけではありません。
重要な検討事項は、やはり持ち帰って十分検討してから決断すべきです。また、同席してもらえるからといって事前準備を怠っていると、「弁護士に聞かないと決められない会社だ」というイメージを抱かれ、交渉態度が不誠実だとの指摘を受けやすくなってしまいます。なお、団体交渉の事前準備は次の解説をご参照ください。
弁護士が参加・同席しない方がよい場合
基本的には、弁護士が参加・同席したほうがよいケースが多いですが、参加・同席が会社にとって逆に不利益となり、行うべきでないケースもあります。この点は、個別の事情に応じて慎重な検討が必要なため、実際には、依頼事に弁護士とよく相談することがおすすめです。
弁護士が参加・同席しないほうがよいケースには次のものがあります。
- 担当弁護士に、団体交渉の参加・同席の経験が乏しく、会社に不利益な発言をしてしまうとき
- 弁護士と会社との信頼関係が十分でなく、団体交渉の席上で臨機応変なアドバイスが期待できないとき
- 労働組合が協調的であり、会社だけでも交渉を円滑に進められる可能性が高いとき
特に、弁護士が参加・同席したことにより不利な流れとなってしまわないよう注意が必要です。迷うときには、第1回の団体交渉は会社の者だけで参加し、その結果次第で弁護士に依頼するかを検討するのでもよいでしょう(ただし、この場合には、後戻りできないような合意を交わしてしまわないよう注意が必要です)。
なお、弁護士が参加・同席しないケースでも、法的アドバイスを事前に受けたり、想定問答を作成してもらったりといった後方支援が有効です。
弁護士費用がかかる
団体交渉について弁護士に参加・同席を依頼するときには、弁護士費用がかかります。大切なことは、弁護士に支払うコストと、弁護士を依頼しなかったときに会社が受ける損害を比較し、どちらに経済的合理性があるかを吟味することです。
この点で、団体交渉に参加・同席した経験の豊富な弁護士であれば、実際の解決事例に即して、どのようなメリットがあるかをわかりやすく解説してくれます。
なお、団体交渉対応について依頼いただくときにかかる弁護士費用について詳しく知りたい方は、次の解説をご覧ください。
まとめ
今回は、団体交渉について弁護士に参加・同席してもらうことに関する法的知識を解説しました。
弁護士の中にも、団体交渉には出席せず後方支援に留めるべきという考えの方もいますし、ケースによってはそのほうが良い解決となることもあります。ただ、当事務所では、団体交渉にひとりで参加する社長の辛さをよく理解しており、少しでも力になるため、参加・同席を提案する例が多いです。
当事務所の団体交渉サポート
弁護士法人浅野総合法律事務所では、企業側の労働問題解決を得意とし、団体交渉サポートに注力しています。
数多くの団体交渉に参加・同席してきた経験と、豊富な解決事例を踏まえ、団体交渉の席上でも、その事案に応じた会社側に有利な解決に向け、団体交渉をリードしていくことが可能です。ぜひ一度ご相談ください。
団体交渉への参加・同席のよくある質問
- 団体交渉への弁護士の参加・同席はメリットがありますか?
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団体交渉を申し入れられてしまったとき、弁護士に参加・同席を依頼することで、組合の圧力に屈しず、法的に正しい解決を求められるメリットがあります。もっと詳しく知りたい方は、「団体交渉に弁護士が参加・同席するメリット」をご覧ください。
- 団体交渉に弁護士が参加・同席するとき、会社側の注意点はありますか?
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団体交渉を弁護士に依頼し、参加・同席してもらうとしても、弁護士に丸投げでは、団体交渉拒否の不当労働行為となるおそれがあります。また、できる限り早く相談するよう心がけてください。もっと詳しく知りたい方は、「団体交渉に弁護士が参加・同席する時の注意点」をご覧ください。
- 相手方のことを理解する
合同労組(ユニオン)とは?
誠実交渉義務とは - 団体交渉の申入れ時の対応
労働組合加入通知書・労働組合結成通知書の注意点
団体交渉申入書のチェックポイント - 会社側の事前準備と回答書作成
団体交渉の事前準備
会社側が回答書に書くべきこと - 参加者の選定と心構え
会社側の参加者・担当者は誰が適切か
参加する会社担当者の心構え
団体交渉に弁護士が参加・同席するメリット - 団体交渉当日の対応
団体交渉当日の進め方・話し方
やってはいけない禁止事項 - 団体交渉の解決までの流れ
解決までにかかる期間
団体交渉の打ち切り方 - その他
派遣先の団体交渉応諾義務