労働審判

労働審判は、平成18年(2006年)から始まった、比較的新しい制度です。
労働問題の訴訟をすると、非常に長期間かかり、労使ともに疲弊しかねないところ、迅速かつ適切・公平に解決することが、労働審判の目的です。
労働審判の目的や手続の詳細は、労働審判法に規定されています。
紛争の解決力が高い上に、裁判官を交えて話し合いができるため、労使ともに納得感が大きいことがメリットです。
労働者保護の流れにあり、解決までの期間が短いことから、多くの労働者(と労働者を代理する弁護士)が労働審判を利用するため、会社側(企業側)で労働問題を解決する当事務所でも、法律相談・お問い合わせの多い分野です。
しかし、数は多くなっていますが、労働審判を申し立てられたときに、会社側(企業側)に有利な解決とすることは、容易ではありません。
労働審判における会社側(企業側)の基本的な方針は、労働者の権利主張が、労働法、裁判例に照らしてどのように評価されるものかを正確に理解し、妥当な和解案(落としどころ)を見出すことです。
特に、労働審判の結論に大きな影響を及ぼすのが、第1回期日に行われる労働審判委員会による聴取です。
労働審判は、解決まで短期間で進むことから、できるだけ早く事実認定をし、心証形成をするという意思が裁判所にあります。
そのため、会社側(企業側)においても、第1回期日までに徹底的な準備をし、出せる主張・証拠は出し惜しみなく提出する必要があります。
一方で、証拠を大量に出せば勝てる、というものでもありません。
労働審判では、期間が限定的であることから、証拠による事実認定も、訴訟よりは簡素にならざるをえません。
そのため、重複する主張、無用な証拠を多く提出しすぎると、肝心かなめの会社側(企業側)に有利な、重要なものがかすんでしまうおそれもあるからです。