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弁護士 浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所を経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を開業。
企業の労働問題について、豊富な経験を有する。

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労働審判の管轄とは?どこの裁判所で行われるかと、移送による変更

本解説では、労働審判の管轄と、移送について説明します。管轄とは「どの裁判所で法的手続きを利用できるか」について定めるルールのことです。

利用したい裁判所が労使で同じときはよいですが、次のケースでは希望する管轄が異なることがあります。

  • 全国展開する会社で、本社機能が都心部に存在する場合
  • 会社を辞めた社員が、地方に帰省した場合

遠方で申し立てられた労働審判に対応しなければならないと、費用や手間が多くかかり、紛争を継続するためのコストが過大になるおそれがあります。管轄は、労働審判を申し立てる労働者側が第一次的に判断しますが、労働者側の選択した管轄が会社にとって不利なものであるとき、移送の申立てを検討することとなります。

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まとめ 労働審判の会社側の対応を弁護士に依頼するメリットと、手続き・解決の流れ

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所を経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を開業。
企業の労働問題に豊富な経験を有する。

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労働審判の管轄とは

労働審判の管轄とは、労働審判をどの裁判所で行うかということです。労働審判を申し立てるときに、労働者側で申立先となる裁判所を選定することとなるため、会社側の立場では、「労働者の申し立てた裁判所が、労働審判を行うのに適した裁判所か」という観点で、管轄の検討を行います。

まずは、労働審判の管轄についてのルールを解説していきます。

労働審判の管轄の基本

労働審判の管轄について、労働審判法2条1項に次のとおり定められています。

労働審判法2条1項

労働審判手続に係る事件(以下「労働審判事件」という。)は、相手方の住所、居所、営業所若しくは事務所の所在地を管轄する地方裁判所、個別労働関係民事紛争が生じた労働者と事業主との間の労働関係に基づいて当該労働者が現に就業し若しくは最後に就業した当該事業主の事業所の所在地を管轄する地方裁判所又は当事者が合意で定める地方裁判所の管轄とする。

労働審判法(e-Gov法令検索)

上記の条文をまとめると、労働審判法における労働審判の管轄は、

の3つのいずれかとなります。

労働審判の管轄の基本
労働審判の管轄の基本

なお、通常の民事訴訟の管轄も、原則として「被告の住所地」が管轄することとなっていますが、これ以外に、不法行為に関する訴訟について「不法行為地」、不動産に関する訴訟について「不動産の所在地」等に特別管轄が認められています。一方、労働審判には特別管轄はありません。

労働審判は、地方裁判所が管轄することとなっており、簡易裁判所で行うことはできません。

また、労働審判は原則として本庁で行うこととされています。支部については、東京地裁立川支部、静岡地裁浜松支部、長野地裁松本支部、広島地裁福山支部、福岡地裁小倉支部といった限られた支部でのみ取り扱われています。

相手方の住所、居所、営業所、事務所

相手方の住所、居所とは、使用者が法人ではなく個人のときに利用される管轄のルールです。住所とは生活の本拠のことをいい、通常は、住民票の所在地を意味するのが一般的です。これに対して、居所は必ずしも生活を営んでいる場所でなくても、相当な時間滞在していれば足りるとされており、就業場所等が含まれます。

相手方が法人のときは、営業所、事務所の所在地が管轄の基本となります。最もよく利用されるのは、会社の商業登記簿に記載された本店所在地です。

一方で、本店所在地でなくても、また、登記簿に登記されていなくても、会社が業務を営んでいる場所があれば労働審判の管轄を有すると判断されることがあります。そのため、全国に営業所があるような企業では、労働者の都合のよい場所で労働審判を申し立てられてしまうおそれがあります。

就業場所

労働審判を申し立てる社員が、就業していた場所、もしくは、最後に就業していた場所に、労働審判の管轄が認められます。最後に就業した場所にも管轄が認められるのは、解雇後に争いとなったケースや、異動や配置転換を争うケースで、労働者に不利益な管轄のみに限定されないようにするためです。

事務所・営業所はもちろんのこと、事務所・営業所といえるほどの独立した業務の実態がない場所でも、労働者が就労していたと評価できれば、労働審判の管轄を有すると判断されることがあります。

なお、既に就業場所が閉鎖されているときは、その所在地を管轄する地方裁判所で労働審判を起こすことはできません。この点で、事業所閉鎖を理由とする整理解雇を争うとき、既に閉鎖済の事業所を管轄する裁判所には労働審判を申し立てることはできません。

合意管轄

労使間で管轄について合意ができているときは、その合意した地方裁判所へ労働審判を申し立てることができます。これを「合意管轄」といいます。

合意管轄によって労働審判を申し立てるときは、通常、事前に協議によって管轄合意書を作成し、労働審判申立書とともに提出することで管轄の合意があることを裁判所に証明するようにします。この点、労働審判規則3条では、管轄の合意は書面で行わなければならないと定められています。

このような経緯から、合意管轄が利用されるのは、その労働問題について当事者間で事前の協議が行われており、会社としても合意管轄に応じることにメリットがあるケースに限られます。なお、就業規則や雇用契約書にて、会社側に有利な合意管轄が定められていしても、労働者にとって不利益が大きいときは労働者保護の観点からその定めが無効と判断されるおそれがあります。

外国企業の管轄

外国法人等、その所在地が日本にないときや、事務所・営業所が日本にないとき、労働審判の管轄は次のとおり定められています(労働審判法2条2項、3項)。

  • 日本国内に住居所がないとき、住居所が知れないとき(労働審判法2条2項)
    →最後の住所地を管轄する地方裁判所
  • 日本国内に事務所・営業所のない法人のとき(労働審判法2条3項)
    →代表者その他の主たる業務担当者の住所地を管轄する地方裁判所
  • 外国の社団又は財団のとき(労働審判法2条4項)
    →日本における代表者その他の主たる業務担当者の住所地を管轄する地方裁判所

なお、以上のことは、相手方たる使用者が法人のときだけでなく、個人のとき(つまり、個人が使用者となって労働者を雇用していたとき)の労働審判の管轄にも適用されます。

労働審判の管轄を、移送によって変更する方法

労働審判の管轄についてのルールに従うと、たとえ管轄のある裁判所であっても、会社側にとっては都合の悪い場所に申立てをされてしまうケースがあります。特に、全国にチェーン展開する会社や、本社機能と営業所機能が分割されている企業等で、よく起こる不都合です。

次に、このような管轄の不都合について、会社側の立場で、移送によって変更する方法を解説します。

労働審判における移送の考え方

労働審判では、第1回期日の席上で、裁判所(労働審判委員会)が事情聴取をし、心証形成するのが実務です。そのため、簡易かつ迅速な決定のため、第1回期日はとても重要視されており、第1回期日までに出ていない主張、第1回期日で取り調べることのできない証拠や証人は、労働審判委員会の判断根拠とはならないおそれがあります。

会社側にとって不都合な遠方で労働審判で行われてしまったとき、会社側にとって重要な証人となる社員が出席することができなかったり、出席できたとしても多くの時間と費用を失ってしまうおそれがあります。

このように労働審判では期日の現場に会社の人が出頭する必要性がとても高いことから、訴訟の場合にも増して、移送の申立てをする必要性が高いといえます。

労働審判で認められた移送には、次の2つの種類があります。

管轄違いによる移送

労働者が労働審判を申し立てた裁判所が、前章で解説した管轄のルールに照らして、管轄が存在しないというとき、移送をしてもらうことができます。

このような管轄違いのときには、会社側からの申立てがなくても、裁判所の判断で移送をしてくれます。

この場合、下記条文に「移送する」と定められているとおり、必ず移送をされることとなっています。たとえ裁判所が、その場所で判断するのが適切ではないかと考えたときでも、管轄違いのときには必ず移送しなければなりません。

労働審判法3条1項

裁判所は、労働審判事件の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、これを管轄裁判所に移送する。

労働審判法(e-Gov法令検索)

裁量による移送

労働審判では、第1回期日の参加者の発言がとても重要です。そのため、労働審判の処理に適切ではない場所で申立てが行われたときには、移送の申立を検討することとなります。

このような処理の便宜のための移送は「裁量による移送」といって、移送するかどうかは最終的には裁判所の裁量に委ねられます。そのため、一応は管轄があるわけですから、必ず移送されるわけではありません。会社側として、移送されたほうが有利な審理を受けることができると考えるときには、移送を求める理由を、説得的に書面で主張する方法が有効です。

移送に関する判断は決定によって行われ、不服がある当事者は即時抗告することができます。

労働審判法3条2項

裁判所は、労働審判事件がその管轄に属する場合においても、事件を処理するために適当と認めるときは、申立てにより又は職権で、当該労働事件の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。

労働審判法(e-Gov法令検索)

まとめ

今回の解説では、労働審判の「管轄」の基本的なルールと、会社側にとって不利な場所での申立てを受けてしまったときに活用すべき「移送」について解説しました。

労働審判は、労働者保護のために簡易かつ迅速な解決が得られるメリットがありますが、労働者に手厚い保護を与える一方で、会社側にとって不都合で、対応に苦労する場所で申立てをされてしまうおそれがあります。管轄の基本的なルールを理解し、積極的に移送申立をしていくことが、企業側の最適な対応です。

当事務所の労働審判サポート

弁護士法人浅野総合法律事務所では、企業の労働問題解決に特化し、労働審判について迅速に対応しています。

労働審判は3回までの期日で終結しますから、遠方で申し立てられた労働審判でも出席を要するのは3回が上限です。そのため、当事務所は東京都内にありますが、遠方の労働審判でも対応することができます。

労働審判についてよくある質問

労働審判はどこの裁判所で行われますか?

労働審判がどこの裁判所で行われるか(管轄)は、会社の本店所在地で行われることが多いですが、これ以外に、事業所・営業所の所在地や社員の最終就業場所等でも行うことができます。もっと詳しく知りたい方は「労働審判の管轄とは」をご覧ください。

労働審判が遠方で申し立てられてしまったら、どうしたらよいですか?

労働審判の管轄がある限り遠方でも申立てが可能で、このとき会社として対応に苦慮することがあります。管轄に間違いがあったり、対応が困難なとき、移送の申立てを検討してください。より詳しく知りたいときは「労働審判の管轄を、移送によって変更する方法」をご参照ください。

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