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弁護士 浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所を経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を開業。
企業の労働問題について、豊富な経験を有する。

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労働審判の参加者は誰が適切?参加者の選び方と、人選のポイント

労働審判の参加者の選び方について、誰が適切かを解説します。

労働審判の第1回期日は、その場でのやりとりで、裁判所(労働審判委員会)に事実関係をわかりやすく説明する必要があります。そのため、参加者の人選がとても大切です。納得いく解決とするため、有利な証言をしてくれる証人は必ず同伴しなければなりません。弁護士に依頼したとしても「丸投げ」は推奨されません。

参加をお願いしたい有利な証人の都合が合わずどうしても参加できないときは、労働審判の期日変更労働審判の管轄の移送を検討してください。

当事務所では、第1回期日で事実認定、心証が決まり、事実上の勝敗が決するおそれがあるため、裁判所(労働審判委員会)から質問が予想されるポイントについて想定問答の作成、リハーサル等の事前準備を徹底して行います。

なお、労働審判について深く知りたい方は、次のまとめ解説もご覧ください。

まとめ 労働審判の会社側の対応を弁護士に依頼するメリットと、手続き・解決の流れ

目次(クリックで移動)

解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所を経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を開業。
企業の労働問題に豊富な経験を有する。

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労働審判の参加者の重要性

労働審判、特にその第1回期日は、参加者の選定がとても重要となります。労働審判は、簡易迅速に労働問題を解決することを趣旨としているため、第1回期日の中で事実認定と心証形成が終了してしまうことを原則としているからです。

そのため、裁判所が事実を把握するためにも、訴訟のように証人尋問の機会はなく、労働審判の当日にいる人に話を聞くことによって補うこととなっています。第1回期日当日に出席した人物からしか事実確認ができないため、その労働問題について具体的な事情を知る人を、必ず同伴させなければなりません。

労働審判の手続きの流れは、次のとおり、第1回期日の前半で事情聴取が行われ、事実認定と心証形成の大半を決してしまい、その後、第1回期日の後半から第2回、第3回期日にかけて、調停手続きによる話し合いを行います。

労働審判手続きの流れ
労働審判手続きの流れ

このことからわかるとおり、事前準備と第1回期日が決定的に重要であり、会社にとって有利な事情を裁判所に伝える機会は、第2回以降には用意されないのが原則です。例外的に、第2回にも事情聴取が行われることはありますが、あくまで第1回の補充として行われることがほとんどであり、そこで出た新しい事情は軽視されるおそれがあります。

労働審判の第1回期日の参加者は、直接自身が経験した事実について発言し、裁判所(労働審判委員会)の質問に回答することで有利な事情をわかりやすく伝えるとても重要な役割を担います。

労働者側では、労働者自身が出席してくるケースがほとんどです。労働者からなされる労働者側にとって一方的に有利な発言に対して、その場でしっかりと否定しておくためにも、実際にその労働問題を経験した人が参加することが大切なポイントです。

労働審判における参加者の人選

労働審判の第1回期日における参加者の重要な役割を理解していただいたところで、このような重要な参加者の人選について解説していきます。

有利に進めるために、参加を検討すべき者には、次の人物がいます。

  • 社長(法人の代表者)
  • 人事労務の担当者
  • 直属の上司・同僚
  • 争点となる労働問題の当事者
  • 弁護士

上記はあくまで例であり、労働審判で争われる労働問題の内容により、適切な参加者を選ぶ必要があります。

以下では、参加者の人選を決定するときに考慮しておくべき人選基準について解説していきます。

労働審判における会社側の参加者の人選
労働審判における参加者の人選

社長(法人代表者)は参加すべきか

労働審判対応を弁護士に依頼するとき、弁護士が法人の代理人として参加するため、必ずしも社長(法人代表者)の参加・出席は必須ではありません。そのため、労働審判に社長(法人代表者)が参加すべきかは、ケースに応じて検討する必要があります。

社長(法人代表者)が出席すべきと判断するケースは、例えば次の場合です。

  • スタートアップ企業、中小・ベンチャー企業等小規模の会社で、人事関係の適任者が社長しかいない
  • 労働審判当日に、早期解決を図るため、判断権限を有する者が参加すべき
  • 争点となる労働問題について最もよく知る人物である

これに対して、社長(法人代表者)が出席すると不利になるおそれがある等、出席すべきでないケースもあります。

  • 労働審判の争点について、具体的事実をよく知らない(大規模な会社等)
  • 株式を有しておらず、最終決定権を持っていない
  • パワハラ気質のワンマン社長で、労働審判に参加すると不用意な言動をするおそれがある

事実関係を知る人は必ず参加させる

前章で説明したとおり、参加者の役割は「経験した事実を話すこと」です。これは訴訟における証人の役割と似ています。

そのため、労働審判の争点について、有利に進めるためには、有利な証言をしてくれる人物は必ず参加させなければなりません。つまり、事実関係をよく知る人物の参加は必須となります。

例えば、労働審判を申し立てた社員の直属の上司、同部署の同僚などが、この基準から参加者として挙げられます。

ただし、労働審判の争点が、未払残業代請求のように、会社全体に波及するおそれのある労働問題のとき、参加者の人選はかなり慎重に行わなければなりません。忠誠心の低い社員を参加させてしまうと、情報が漏洩してしまい、さらなる労働審判を招くことともなりかねません。

このようなとき、会社に有利な事情の顕出についてある程度あきらめ、役員や人事部長、もしくは社長のみの参加とする等、参加者を限定せざるをえないことがあります。

第2回以降は決定権者が参加する

第1回期日での事実確認の後、第2回期日以降は、調停にて話し合いが行われます。

解雇トラブルの労働審判では、解雇の金銭解決が図られ、解決金による調整を行うことが通例です。また、未払残業代請求の労働審判でも、労働審判段階で正確な残業代額を認定することはあまりされず、ざっくりとした大まかな金額での調整が図られます。

調停の話し合いが行われる第2回以降には、決定権者(通常は社長となるでしょう)を参加させることで議論をスムーズに進め、早期解決につなげるのが良いでしょう。弁護士のみに任せざるを得ないときでも、早期解決が企業側のメリットにもなることから、提案できる上限額を伝え、電話等で意思確認できる状態としておくことがおすすめです。

直接の加害者が出席する際の注意点

労働審判の争点が、ハラスメント問題(セクハラ・パワハラ等)であるとき、直接の加害者となった社員こそ、最も事実関係をよく知っている人物です。会社に有利な発言を得るためにも、ぜひとも労働審判二酸化させたいところですが、次のような事情には十分注意が必要です。

  • 冷静に、落ち着いて、感情的にならずに証言できる人物か
  • 今後も会社のために貢献してくれる人物か
  • 会社が、直接の加害者に対して懲戒処分や解雇等を検討していないか

特に、会社が今後、直接の加害者に対する不利益な処分を予定しているときには、会社とその社員との間で利益相反が生じることとなり、十分な協力を得られないおそれがあります。

なお、ハラスメントの程度がひどいとき等、加害者と被害者を同じ場で聴取することが適切ではないときは、裁判所(労働審判委員会)に事前に伝え、別室での聴取を行ってもらうよう配慮を求めることができます。

弁護士のみに出席を任せない

弁護士は、本人(会社)の代理人となるため、本人の代わりに労働審判に出廷することができます。そのため、弁護士が依頼を受けているとき、会社の方が1人も参加しなかったとしても違法ではありません。

しかし、弁護士だけでは、どれほど事前にヒアリングやリハーサルをしても、事実を詳しく話すには限界があります。弁護士がその場で回答できず、労働者側に有利な主張を否定できなかったとき、「確認し、後日回答します」という対応は労働審判では許されません。

そのため、弁護士だけが出廷する労働審判では会社の不利になる点は否めません。少なくとも第1回期日だけでも参加できないかどうかよく検討する必要があります。

なお、労働審判に正当な理由なく出頭しなかったときは、5万円以下の過料の制裁があります(労働審判法31条)。

期日前の参加者の準備(想定問答・リハーサル)

労働審判の第1回期日では、参加者がした発言・回答は、裁判所(労働審判委員会)の心証形成に、有利にも不利にもはたらきます。そのため、「声の大きい者が勝つ」という場ではなく、不用意な発言はむしろ不利益に影響してしまうおそれもあります。

一旦労働審判が開始されてしまうと、裁判所(労働審判委員会)は、参加者に対して直接質問をしてきて、回答を求めてきます。このとき、法的見解であれば弁護士に確認をとりながら進めることができますが、事実関係についてはアドリブの回答が要求されることも多くあります。

そこで、どのような発言が会社にとって有利ないし不利になるのかを理解してもらうため、労働審判の第1回期日より前に、事前のリハーサルを行うことが通例です。事前リハーサルでは、弁護士が作成した想定問答をもとに、弁護士から労働審判の流れや雰囲気について説明を受け、質疑応答の練習をします。

なお、事前にリハーサルを行うことで、労働審判への参加に適しない人物を見抜くことができる場合もあります。事前リハーサルですら緊張して満足に発言できなかったり、弁護士からの指摘に立腹して声を荒げてしまったりする方は、参加者として適任ではありません。

労働審判の進行は、裁判所(労働審判委員会)の指揮にしたがって行われるのが基本です。そのため、以上のような労働審判の参加者の対応は、あくまで裁判所(労働審判委員会)の質問に対して回答する、という流れで行うものです。

労働審判の参加者において、スムーズなフリートークをしなければならなかったり、主張をわかりやすくまとめてスピーチしたりしなければならないわけではないため、ご安心ください。

労働審判の参加者の発言のしかた、心構え

十分な想定問答の作成とリハーサルを事前に行っても、労働審判で行われるすべての質問を網羅し、回答の準備をしておくことは不可能です。想定問答・リハーサルにも限界があるのです。

そのため、労働審判の参加者においては、裁判所(労働審判委員会)から想定問答にない質問をされたとしても、アドリブで回答しなければなりません。このとき、法的見解については同席する弁護士がフォローできますが、事実関係に関する証言についてまで弁護士が助けていては、「虚偽の事実を作出した」というイメージを抱かれるおそれがあります。

最後に、労働審判に参加する会社の方が、アドリブで回答しても不利にならないよう、参加者の発言のしかたと心構えについて説明します。

労働審判の参加者の発言のしかた、心構え
労働審判の参加者の発言のしかた、心構え

原則は、答弁書通りに発言すること

労働審判対応を弁護士に依頼したときは、会社の反論を十分に考慮した答弁書を提出しているものと考えられます。労働審判では、簡易迅速な解決のために審理が3期日以内に制限されており、わかりやすく主張を伝えるためには答弁書の果たす役割がとても重要だからです。

労働審判当日の対応も、あらかじめ提出した答弁書の記載にもとづいて行うのが原則です。

答弁書に書かれている内容は、すべてこちらにとって有利な事情であることが当然ですから、参加者としては、事前に答弁書をよく読み返し、頭に叩き込んでおいてください。答弁書を読み込めば、申立書とは異なる角度から切り込まれたとしても、「どう回答するのが会社の主張と整合するか」をアドリブで判断できるようになります。

なお、答弁書どおりが一番とはいえ、次のような回答態度は、証言の信用性を低下させるためお勧めできません。

  • 答弁書を棒読みするような回答
  • 明らかに丸暗記に過ぎないことがわかる発言
  • メモを読みながらの発言

十分に答弁書を読み込んだ上で、それを咀嚼し、自分の言葉で発言するのが正しい対応です。

その場の判断や思いつきで回答しない

答弁書の内容を忘れてしまったり、緊張してなにを言えばよいかわからなくなったりしたとき、安易に思いつきで回答するのではなく、まずは冷静になって発言を控え、黙るべきです。「沈黙は金なり」と心得てください。

労働審判に参加すると、突然話を振られたり、思わぬ質問をされることがよくあります。回答に詰まって黙ってしまうのはむしろ良いことで、逆に、自分の判断やその場の思いつきで軽々に発言してしまうと、思わぬ不利益を会社にもたらすおそれがあります。

労働審判対応を弁護士に依頼しているとき、答弁書に書かれていなかった事実に思い当たったとすれば、それは会社にとって有利な事情とはいえない可能性が高いといえます(そうでなければ、弁護士が有利な事情の記載をもらしたということです)。どうしても発言に迷うときは、同席する弁護士に確認をとってから行うという対応が適切です。

答弁書と記憶が異なるときの発言のしかた

労働審判において、会社の主張をわかりやすく伝えるために答弁書がとても重要な役割を果たすことから、弁護士は会社関係者に何度も確認をとりながら答弁書を作成します。

しかし、それでもなお、労働審判の席上で様々な角度から質問されたことによって、答弁書の記載と自身の記憶が異なっていたことが明らかになるケースがあります。労働審判対応における準備期間は必ずしも十分に確保できているとはいえず、弁護士の作成した答弁書といえど完璧ではありません。

このようなとき、自身の記憶のほうを優先することが基本となり、これと異なる答弁書の記載についてはその場で口頭で訂正するように対応します。記憶にもとづいて回答すべき理由は、その後の質疑応答で再び矛盾ある発言をしたり、嘘の上塗りを重ねていたりすると、ますます信用性を低下させて不利な結果となってしまうからです。

法的判断に関する発言をしない

裁判所(労働審判委員会)から、労働審判の場で質問される内容には、事実関係に関するものだけでなく、法的判断に関するものが含まれていることがあります。本来、労働審判の参加者は、事実関係をわかりやすく裁判所に伝えるための役割を持っており、裁判における証人に似ています。

そのため、本来であれば事実関係について中心的に発言を求められるべきですが、委員の中には、自由な発言を好み、参加者に対して法的意見を求めたり、参加者個人の感想を求めるような質問をしたりする方もいます。

このようなとき、法的判断に関する発言が誤っていると、裁判所(労働審判委員会)に対して会社不利の心証を与えてしまうおそれがあります。法的判断に関する発言は控え、どうしても必要なときは「法的判断なので」と前置きした上で、弁護士に代わりに回答してもらう対応が適切です。

まとめ

今回は、労働審判に出席すべき参加者について解説しました。

労働審判の第1回期日は非常に重要であるため、早めに参加者の人選を済ませ、想定問答の作成、リハーサルを含めた入念な打ち合わせをする必要があります。ただでさえ、労働審判を申し立てられた際の対応には時間的余裕がないことが多いため、早急な対処が必須となります。

当事務所の労働審判サポート

弁護士法人浅野総合法律事務所では、企業の労働問題解決に注力しています。

労働審判について豊富な解決事例をもとに、裁判所(労働審判委員会)から質問のあるポイントを想定し、限られた時間内で効果的な事前打ち合わせを行うようにしています。有利な解決を勝ち取るため、労働審判の第1回期日の重要性を理解し、事前準備を怠らないように心がけてください。

労働審判についてよくある質問

労働審判における参加者の人選はどのように決めたらよいですか?

労働審判の参加者・出席者を決めるとき、事情を知る人を必ず連れて行くようにしてください。また、決定権限を持っている人が参加するほうが早期解決に資すると考えます。もっと詳しく知りたい方は「労働審判の参加者の人選」をご覧ください。

労働審判の参加者はどのような準備をしておくべきですか?

労働審判で参加者・出席者の人選が済んだら、想定問答を作成し、リハーサルを行います。労働審判の現場で、会社に不利益な発言をしないよう綿密な準備を怠らないでください。より詳しく知りたいときは「期日前の参加者の準備(想定問答・リハーサル)」をご覧ください。

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