中小企業解雇有効解雇権濫用法理会社側労働問題弁護士東京

日本の伝統的な労働法においては、解雇権濫用法理によって、客観的に合理的な理由がなく、社会的に不相当な解雇は、解雇権を濫用した不当解雇であるとして、違法無効と判断されます。これは、労働者保護のための法理であって、このことから、労働審判、団体交渉、訴訟において解雇の有効性を争われると、会社側に不利な解決となる可能性が比較的高いと考えられることから、会社が問題社員に対して対応する場合には、特に解雇を行う場合には慎重な準備が必要であるとされるのです。

しかし、解雇権濫用法理の出来上がった背景には、日本の伝統的な労使関係における、「長期雇用慣行」「終身雇用制度」があります。新卒一括採用によって会社に入社し、定年まで勤め上げることを前提とした「年功賃金」という給与体系の下で会社に勤務している労働者にとって、途中で会社側の一方的な都合で雇用契約を解消されてしまうことは、非常に不利益の大きい行為であるためです。

その一方で、現代では、終身雇用制は崩壊しています。今や、最初に入った会社で、死ぬまで勤め上げようと考えている社員の方が少ないのではないでしょうか。

この傾向は、企業規模が小さいほど、中小企業ほど顕著であるといえます。中小企業では、即戦力が重視され、キャリアアップを目指して会社間で転職を重ねる労働者も大勢います。

今回は、このような現代の労働問題を取り巻く状況の変化から、解雇の有効性を判断するにあたって、企業規模を考慮すべき理由と、その考慮の仕方について、中小企業の視点に立って解説していきます。

問題社員の解雇をお考えの中小企業様は、会社の労働問題に強い弁護士へご相談ください。

長期雇用、終身雇用制とは?

終身雇用は、日本における特徴的な雇用制度であり、わが国特有のものです。その内容とは、新卒一括採用によって会社に正社員として入社した労働者が、定年になるまで同じ会社で働き続けるということです。そのため、会社は、いかに経営が苦しくなっても、配置転換や減給によって対応すべきであって、解雇を行うことは非常に厳しく制限されているのです。

そのため、終身雇用制を背景として、解雇権濫用法理による解雇の制限法理が生まれました。

終身雇用制は崩壊したと先程説明しましたが、終身雇用制には一定のメリットもあることから、未だこれを採用している会社も多くあります。終身雇用制を採用している会社は、一般的に企業規模の大きい会社ほど多い傾向にありますから、ここで、「中小企業の解雇も大企業と同様に厳しく制限されてもよいのか?」という問題意識が生まれるわけです。

終身雇用制は、労働者に対しても、定年までの安定した生活の糧を確保してもらうことができるという大きなメリットがあり、会社の側でも、長期的な視野に立って労働者を育成し、教育に資本投下をすることができるというメリットがありますから、終身雇用制自体に合理性が失われたわけではありません。

しかし、不況による会社の経済的な事情と、解雇の金銭的な解決の制度の一般化から、終身雇用による長い目線での人事労務管理よりも、企業規模が小さくなればなるほど、即戦力を中途採用し、成果に応じて賃金を支払うという制度へと移行してきたわけです。

したがって、中小企業では、終身雇用制という背景自体が薄れてきているわけですから、企業規模が小さければ小さいほど、解雇の有効性の判断においては、企業規模を考慮して判断すべきこととなります。

中小企業における従業員は流動化の傾向

以上の通り、中小企業においては、終身雇用制と年功序列賃金という、長期的雇用慣行を前提とした雇用システムが変容してきています。

特に、従業員数100人未満の中小企業では、従業員の雇用は流動化しており、労働者自身も、「一度勤めた会社に骨をうずめ、粉骨砕身で貢献しよう。」という意識は薄れています。

これまでの裁判例によって確立された解雇権濫用法理による解雇の厳しい制限は、長期的雇用慣行を前提とした法理ですから、終身雇用、年功序列という背景のあてはまらない中小企業で、大企業と同程度の解雇権濫用法理による制限を加えるのは妥当とは思われません。

したがって、解雇が有効であるか、無効であるかを判断する際には、企業規模を考慮要素として検討する必要があります。

整理解雇においても企業規模を考慮すべき

整理解雇を行う場合、整理解雇の4要件によって整理解雇の有効性を判断するわけですが、この際に、「解雇回避の努力義務」という考慮要素があります。

すなわち、整理解雇を行う前に、企業の経営を立て直すための手段として解雇以外に選択すべき手段がある場合には、そちらを実行してから解雇を行うべきであるという考慮要素です。

企業の経営を立て直すにあたって、整理解雇以外にも他に行うべき手段があるというケースでは、整理解雇が無効と判断される可能性が高くなるということです。この解雇回避の努力義務の際に、解雇回避措置としてよく挙げられるのが、「希望退職の募集」です。

しかし、大企業であれば、希望退職の募集を行って人件費を抑制することができるでしょうが、中小零細企業では、希望退職の募集を募っては、重要な人材の流出につながると共に、割増退職金が経営にとどめを刺してしまう可能性すらあり、希望退職の募集を行うことは困難でしょう。

このように、整理解雇の有効性を判断するにあたっても、企業規模を考慮要素の一つとすべきなのです。

企業規模が小さくても、グループ会社や世界的企業は別

以上の通り、企業規模が小さい中小企業の場合には、大企業に比べて、解雇の有効性は緩やかに判断されるべきであることは十分理解して頂けたかと思います。

ただし、企業規模が小さい中小企業の場合であったとしても、大きな企業グループに属しており、親会社が大企業である場合や、本社が海外にある世界的なグローバル企業の日本支社であるような場合には、通常の中小企業とは判断を区別する必要があります。

というのも、この場合には、大きな企業グループ内での人事労務管理を考えるのが適切なケースも少なくないため、中小企業に対して、親会社である大企業と同等の処遇を求めても差し支えない場合もあるためです。

したがって、このように大企業のグループ会社であったり、グローバル企業の日本支店であったりする場合には、会社自体の規模は中小企業であっても、解雇権濫用法理によって解雇が厳格に制限される場合もあるということです。

まとめ

日本の伝統的な労働法制においては、解雇権濫用法理によって解雇は厳格に制限されていることから、会社側で労働問題に対処する場合には、解雇は最終手段であることを肝に銘じて当たるべきです。

しかし、中小企業においては、必ずしも大企業と同様の人事労務管理まで要求されるわけではなく、企業規模に応じた適切な処遇を実践する必要があります。

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