一般背景用(肩たたき)

解雇とは、会社の一方的な意思表示によって、労働契約を終了させることです。

解雇は、従業員の生計の手段を奪う極めて重大な処分ですので、法律によって厳格な規制がなされています。ですから、従業員を解雇した後に、解雇の有効性が問題視されトラブルにならないよう、従業員を解雇する場合には事前に専門家に相談し慎重に検討することが必要です。

解雇の種類

解雇の種類には、大きく分けて次の3つがあるとされます。

期間の定めのある社員(有期契約社員等)について、期間満了を理由として行う「雇止め」も、その就労年数の長さ、更新の回数、更新を期待させる会社の言動の有無、更新手続の適正性などの諸事情によっては、解雇と同様の考慮が必要な場合があります。

普通解雇

普通解雇とは、勤務成績の著しい不良等、従業員の労働能力や適格性の欠如・喪失を理由とする解雇です。

整理解雇

整理解雇とは、経営不振等の経営上の必要性に基づく解雇です。

懲戒解雇

懲戒解雇とは、従業員の規律違反に対する制裁としての解雇です。

解雇に対する法的規制

日本の労働法制では、解雇権濫用法理という法理論が、労働契約法ないし判例で定められています。

この法理によれば、合理的な理由があり、社会的相当性のある解雇でなければ、解雇は違法、無効と判断されることとなります。解雇が違法無効とされると、解雇対象の労働者を復職させた上で、解雇期間中の賃金を支払わなければなりません。

また、これに加え、労働者保護の観点から解雇を禁止とする場合や、適法に解雇できる場合でも一定の期間制限を置かなければならない場合等の定めがあります。

一定の場合に解雇を禁止する法律

一定の場合には、労働者の保護を理由として、法律の明文上、解雇が禁止されています。この場合には、そもそも解雇をすることが不可能ですので、注意が必要です。

以下の規定に反した解雇は、当然に無効とされます。

  • 国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇(労基法3条)
  • 業務上の傷病による休業期間及びその後30日間の解雇(労基法19条)産前産後の休業期間及びその後30日間の解雇(労基法19条)
  • 従業員が労働基準監督署へ申告したことを理由とする解雇(労基法104条)
  • 従業員が労働組合に加入していることを理由とするなど不当労働行為となる解雇(労基法7条)
  • 女性であること、あるいは女性が婚姻、妊娠、出産したこと、産前産後の休業をしたことを理由とする解雇(男女雇用機会均等法第9条)
  • 育児・介護休業の申し出をしたこと、または育児・介護休業を取得したことを理由とする解雇(育児・介護休業法第10条)

解雇予告義務

会社は、従業員を解雇する場合、少なくとも30日前に解雇の予告をしなければなりません(労働基準法20条1項)。

30日前に予告をしない場合には、30日分以上の平均賃金を支払わなけばなりません。これは従業員の生活を守る趣旨で規定されているものです。

したがって、仮に従業員を即時解雇しようとすれば、30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。

なお、解雇予告に必要とされる30日という日数は、平均賃金の1日分を支払った日数分だけ短縮することができます。つまり、10日分の解雇予告手当を支払った場合には、解雇の日を30日より、10日間前倒しすることが可能なのです。

解雇予告義務には適用除外と例外が認められています。解雇予告の除外理由は、次の通りです。

  • 日々雇い入れられる者(1か月以内の場合)
  • 契約期間が2か月以内の者
  • 4か月以内の季節的業務に使用される者
  • 試用期間中の者(14日以内の場合)

          
また、次の場合には労働基準監督署署長の認定を受けることを条件に解雇予告手当を支払う必要がなくなります。

  • 天変事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
  • 従業員の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合

                 

客観的合理的理由があること

解雇の事由は、就業規則に必ず記載しなければならない事項です(労働基準法89条3号)。

普通解雇の場合、就業規則に列挙されていない事由に基づく解雇も可能とされていますが、労使間の契約内容を明確にして後日の紛争を予防するためにも、解雇の事由を予め就業規則に定めておくことが望ましいです。

懲戒解雇の場合は、従業員が会社秩序を乱したことに対する制裁罰ですので、予め就業規則に明確な懲戒解雇事由を定めておく必要があります。

解雇を検討する場合には、まず解雇の客観的合理的理由として、どのような事情があり、就業規則のどの規定に該当するのかを確認しましょう。

権利の濫用に該当しないこと

客観的合理的理由があると判断された場合にも、これに加えて、解雇が社会通念上相当であると認められなければ、権利の濫用として無効となります(労働契約法16条)。

そして、社会通念上の相当性は、裁判例において、極めて厳格に判断されており、解雇の事由が重大な程度に達していること、解雇を回避する手段がないこと、従業員に斟酌すべき点が認められないこと等の事情に当てはまって初めて解雇が有効と判断されています。

事例判断となりますが、無断欠勤や遅刻の程度が極めてはなはだしく、注意しても全く改善が見られない従業員に対する解雇有効とされる可能性があります。

また、協調性がないことを理由に解雇する場合、協調性がないことを基礎づける具体的事実の存否や程度を考慮し、改善の機会を与えたが改善されないという事情があれば、解雇が有効とされる可能性があります。

整理解雇の4要件

整理解雇は、従業員側の事情によらない解雇であるため、判断基準を明確にするべく、裁判例上定着した判断要素があります。

具体的には、次の整理解雇の4要件を満たしているかどうかで判断するというのが判例の確立した理論です。

  1. 人員削減の必要性が認められること
  2. 解雇対象者を解雇することについて人選の合理性があること
  3. 会社が解雇回避努力を尽くしたこと
  4. 事前に解雇の必要性を説明し、誠実に対応したこと

                

解雇によるリスクを避けるに

なるべく解雇をしないこと

解雇は、従業員に対する極めて重大な処分ですので、後に効力が争われる可能性を否定できません。そして、解雇の効力が争われた場合、会社側が、法的に有効な解雇であることすなわち解雇に客観的合理的理由があり、対象となる従業員を解雇することが社会通念上相当であることを積極的に主張立証する必要があります。

よって、解雇の場合には、法的手続に関して多大な時間面・費用面でのコストがかかることが予想されます。

ですから、まずは、従業員との間で十分に話し合い、従業員から退職届を提出させるなど、自発的に退職するように協議することが将来のリスクを予防する観点から望ましいといえます。

どうしても解雇が必要な場合

一般的に解雇をする場合には、後日のリスクに備えて以下のことが重要となります。

法的手続に備えて、証拠を残しておくこと

従業員が法的手続によって解雇の有効性を争った場合、上述の通り、会社側が解雇の有効性を積極的に主張・立証しなければなりません。

そこで、従業員の能力の欠如を客観的に示す資料や、次に述べるとおり、従業員に対し注意指導の機会を設け、改善が見られなかったことを示す資料等を書面等で残しておき、後日の紛争に備えることが大切です。

事前に注意・指導の機会を設けること

解雇を行う前に、従業員に対し、どのような点がなぜ問題なのかを伝え、従業員に弁明の機会や改善の機会を与え、改善されるか様子を見ます。さらに、改善が見られない場合には、再度同様の機会を設けることが望ましいです。

そして、これらの機会に従業員に対して交付した書面等を保管し、後日、会社側に有利な証拠として提出することです。

解雇の前により軽度の処分を行うこと

減給等のより軽い処分によって改善の見込みがあったにもかかわらず、いきなり解雇という重大な処分にでた場合、解雇が社会通念上の相当性を欠くと判断される可能性が高まります。

ですので、まずは、解雇より軽度の処分を行うことによって、従業員が改善するかどうかを見極めることが考えられます。

懲戒解雇であれば、従業員の会社秩序維持違反の程度が、解雇相当の重大なものなのか、また懲戒の前例等に照らして適切な処分かどうかを慎重に検討し、より軽い処分の妥当性を検討する必要があります。

配置転換等、雇用を継続するよう努めること

特定の職位で採用されている等の特別の場合を除き、従業員の労働には代替性があることがほとんどですから、他の部署に配置転換をすることで従業員の雇用を継続することができないかを検討する必要があります。

もっとも、特別の能力・経験があることを前提に中途採用された場合や職位を限定して採用された場合においては、他の職務に転換することは期待されていませんので、このような場合にまで解雇の前に配置転換して雇用継続の努力をしなくてもよいと考えられています。

有期契約を更新しない場合の注意

雇止めとは?

期間を定めた労働契約の期間満了時に、会社が契約の更新を拒否することを雇止めといいます。

有期契約においては、雇用契約は、会社と従業員との間で定めた期間の満了をもって終了するのが原則です。

しかし、有期契約を反復更新し、比較的長期間雇用関係が継続し、従業員に雇用を継続してもらえるという期待が生じることは珍しくありません。このような場合には、従業員に一定の保護が必要と考えられるため、雇止めについて以下のような制約があります。

解雇権濫用法理が類推される場合があること

解雇権濫用法理の類推とは、有期契約が反復継続され無期雇用と同視できるような場合、または雇用継続の合理的期待が認められる場合には、雇止めに解雇権濫用法理を類推するという考え方であり、現在裁判所で採用されている考え方です。

期間の定めのある従業員の雇止めに対して解雇権濫用法理を類推適用すべきか否かは、次の諸事情を総合考慮して判断されます。

  1. 雇用の常用性・臨時性
  2. 更新の回数
  3. 雇用の通算期間
  4. 契約期間管理の状況(更新手続の状況)
  5. 継続の期待をもたせる言動の有無
  6. 雇用継続に対する期待の相当性

したがって、会社が、従業員との有期労働契約の期間満了時に労働契約を終了する予定であれば、雇用契約時に、更新手続をきちんと行い、従業員に将来の雇用継続の期待を抱かせるような行為をしないように注意するべきです。

雇止めを検討している場合、事前に弁護士にご相談いただければ、裁判例を踏まえた上で、どのような事実が雇用継続の期待を抱かせるものになるのかについて注意点等をご説明することが可能です。

更新の承諾について、

平成24年8月1日に施行された改正労働契約法により、解雇権濫用法理が類推されるような場合に、従業員から契約の更新が申し入れられると、会社は契約更新したものとみなされるようになっています(労働契約法19条)ので、事前に対策をとる重要性は一層高まっているといえます。

法律上の無期契約への転換について

また、平成25年4月1日以降、有期契約の通算期間が5年を超える場合には、一定の要件のもとで、有期契約が無期契約に転換することもあります(労働契約法18条)。

したがって、短期間のみに限定して雇用する趣旨であれば、その旨明確に説明して労働条件の内容とした上、その条件に基づいて実務上も運用していかなければなりません。

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