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退職証明書の5つの注意点と、労働者から求められた時の対応まとめ

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shorui

会社は、労働者が退職するとき、労働者から求められたときは、「退職証明書」を労働者に交付する必要があります。

この「退職証明書」を提出すべき会社側(企業側)の義務は、労働基準法(労基法)に記載されている義務です。

「退職証明書」について、会社側(企業側)から、次のような法律相談を受けることがあります。

よくある法律相談


労働者から、「退職証明書」を求められたが、どのような記載をしたら会社側(企業側)のリスクが減るか知りたい。
「退職証明書」のよくある書式(文例・ひな形)を知りたい。
問題社員を解雇するとき、「退職証明書」にどのように記載したら労働問題を回避できるか知りたい。

特に、問題社員対応として、社員(従業員)を解雇するときには、会社側(企業側)の適切な対応としては、「解雇理由」を、労働者に対して書面で明示することが必要となります。

このような解雇の際には、「退職証明書」とともに、「解雇理由証明書」の記載が重要となります。労働者にも納得してもらい、労働審判、労働訴訟などの労働トラブルとなることを回避すべきだからです。

今回は、「問題社員対応」において会社側(企業側)が準備すべき「退職証明書」のポイントを、弁護士が解説します。

弁護士
浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、弁護士の浅野です。

問題社員が会社から退職するとき、労働トラブルが最も起こりやすいタイミングといえます。このことは問題社員が「解雇」する場合だけでなく、退職する場合でも同様です。

問題社員であっても、納得して退職をしてもらい、労働審判・労働訴訟などの労働トラブルとならないよう配慮するため「退職証明書」をきちんと出す、正しい対応を徹底しましょう。

退職証明書・解雇理由証明書とは?

従業員(社員)が、会社を辞めるときに、会社側(企業側)が労働者の求めに応じて交付しなければならない書類が、「退職証明書」、「解雇理由証明書」の2種類です。

それぞれ、定められている法律の条文、書類を出すべきタイミング、書面の記載内容なとが異なりますので、順に解説します。

退職証明書とは?

労働基準法22条1項において、退職をする場合に、労働者が請求をしたときは遅滞なく出さなければならないとされているのが、「退職証明書」です。

労働基準法22条1項

労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

会社側(企業側)が、「退職証明書」に記載しなければならない事項は、「解雇理由」のほか、次のとおりです。

ポイント

  • 使用期間
  • 業務の種類
  • 事業における地位
  • 賃金
  • 退職の理由(解雇の場合には解雇理由)

この「退職証明書」は、退職後にしか請求できません。

もっと詳しく!

解雇理由だけでなく、使用期間、業務の種類などの証明も求められることとなっており、再就職のとき、経歴の証明として活用されることが予定されています。

ただし、労働者から請求がない限り、会社側(企業側)が一方的に、解雇の理由などを記載することはできません。

解雇の理由が詳細に記載された「退職証明書」を出すことは、労働者の次の転職(再就職)の可能性を奪うこととなるからです。

解雇理由証明書とは?

労働基準法22条2項に定めのある、解雇予告日から退職日までの間に、労働者の請求に応じて会社側(企業側)が準備しなければならない書面が、「解雇理由証明書」です。

労働基準法22条2項

労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。

この義務によって、会社側(企業側)は、解雇予告をした場合には、退職日より前であっても、その解雇理由について証明書にて知らせなければなりません。

「解雇理由証明書」は、「退職証明書」と異なり、退職前であっても、解雇理由を明示しなければなりません。

退職証明書を出す目的は?

退職証明書は、労働者側においては、次のような目的があります。「退職証明書がほしい」という労働者の求めは労働基準法(労基法)の権利ですから、いずれの目的でも、拒否することはできません。

  • 転職先(再就職先)で、退職証明書を提出するように求められたため
  • 解雇・退職強要など、雇用契約の終了に異議があり、争いたいため

労基法に基づいた請求であることから、拒否をすることはできないものの、適切な記載をした退職証明書を渡すことは、会社側(企業側)にとってもメリットがあります。

そこで、退職証明書の重要性を理解していただくため、会社側(企業側)にとっても退職証明書を渡すことにどのような意味があるかを解説します。

労働トラブルを回避できる

正当な「解雇理由」をもって解雇にいたった場合には、退職証明書に、解雇理由を詳細に記載することによって、辞めていく労働者を説得する効果があります。

退職証明書に、会社側(企業側)の意見を、できる限り客観的に書くことによって、労働者が、「不当解雇であるかどうか」を判断する材料になり、やむを得ない解雇だったと受け入れてくれる可能性があります。

そのため、退職証明書に、適切な記載をすることは、労働トラブルの回避につながるという、会社側(企業側)のメリットになります。

再就職を促進できる

退職証明書には、労働者の求める事項しか書くことはできません。「解雇理由は書かないでほしい」と求められれば、解雇理由を書くことはできません。

どれほど「問題社員」であっても、退職の際にはしっかり配慮をしてあげることにより、次の仕事への再就職の手助けとなります。

早期の再就職・転職につながれば、結果的に、労働トラブルとなる可能性は低下します。

労働基準法(労基法)に定められた事項であっても、労働者が記載を求めない事項は、退職証明書に記載できません。

裁判所で「解雇理由」が考慮される

裁判所などに持ち込まれ、労働審判・労働訴訟などで、「解雇の有効性」が争いになることがあります。

裁判所が「解雇の有効性」を判断するとき、退職証明書に書かれた解雇理由にもとづいて判断が下されます。

後から主張を追加することができないわけではありませんが、有効な解雇であるならば、解雇の時点で、「解雇理由」の詳細は整っていることが予定されているからです。

退職証明書を求められたときの対応は?

ここまで解説した、退職証明書の目的、特に、会社側(企業側)にもある重要なメリットを理解いただけたでしょうか。

退職をした労働者から、退職証明書を出すよう求められたときは、退職証明書の会社側(企業側)にとっての意味を理解し、それに沿う形で、記載、提出する必要があります。

そこで、退職証明書を求められたときの、会社としての適切な対応を、順に解説していきます。

労働者が記載を求める事項を聴取する

労働基準法(労基法)に、記載するように定められた事項であっても、労働者が記載を望まなければ、退職証明書には書いてはいけないこととなっています。

労働者が記載を望まないにもかかわらず、労働者の希望にしたがわない退職証明書を出した結果、再就職がうまくいかなければ、前職である御社への恨みとなり、「解雇は不当だ」と争う可能性が高まります。

退職証明書を出すよう求められたら、まずは、法定記載事項を示し、どのような記載事項を求めるか、労働者に聞きましょう。

具体的かつ詳細な記載とする

労働者が、解雇理由について退職証明書に記載することを求めたならば、その労働者は、「解雇の有効性」を争うことを意図しているのかもしれません。

しかし、労働トラブルとなることが予想できても、退職証明書を拒否できません。

むしろ、退職証明書に、解雇理由を説得的に書くことによって、相談先となる弁護士や労働組合、ひいては、その後労働審判や労働訴訟で「解雇の有効性」を判断する裁判所を説得するようにします。

退職証明書の記載禁止事項

退職証明書を、ブラックリスト代わりにして、問題社員を排除しようとする会社側(企業側)の行為は禁止されています。

労働基準法22条4項

使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第一項及び第二項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。

問題ある退職証明書を出すことによって再就職を妨げることは、労働トラブルの火種となるので、避けるべきです。

退職証明書を遅滞なく作成する

退職証明書は、労働者から求められたら、「遅滞なく」交付することが義務付けられています。

労働基準法(労基法)において、「○日以内」と明確に定められているわけではありませんが、「解雇」をした場合であれば、既に「解雇理由」は決まっているはずであり、退職証明書はすぐに出せるはずです。

むしろ、退職証明書の作成に相当長期間かかるようでは、「解雇理由は、さほどなかったのではないか。」、「無効な解雇ではないか。」と勘繰られてしまう原因ともなりかねません。

退職後の金品の返還

労働契約(雇用契約)が終了したときは、辞職、合意退職や、解雇のいずれであっても、労働者の請求に対して「7日以内」に、賃金の支払、金品の返還をしなければなりません。

退職証明書の要求とともに、賃金の支払を求められたときは、給与支払日よりも前であったとしても、退職の際には「7日以内」に対応する必要があります。

労働基準法の「7日以内」の金品の返還などは、退職金の場合には、退職金規程などで「退職後1か月以内」などと定めておくことで、例外とすることができます。

問題社員対応は、弁護士にお任せください

いかがだったでしょうか?

今回は、「退職した社員から、退職証明書を求められた」という、会社側(企業側)から弁護士に対してよくある法律相談に対して、対応方法と注意点を解説しました。

「解雇」をした場合はもちろんのこと、「解雇」でなかったとしても、会社を辞めてもらうタイミングは、最も労働トラブルの起こりやすいタイミングです。

労働基準法(労基法)に、会社の義務と定められている「退職証明書」について、正しい対応をすることで、労働トラブルの火種となる可能性を低下させることができます。

問題社員への対応や、解雇を検討している会社は、ぜひ、事前に弁護士まで法律相談ください。

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弁護士法人浅野総合法律事務所(東京都中央区)では、労働問題と企業法務しています。 会社で、常日頃から問題となる労働問題と企業法務に特化することで、会社を経営する社長、人事労務の担当者の目線に立って、親 ...

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まとめ

企業の労働問題解決ナビをご覧いただき、誠にありがとうございます。

問題社員対応は、いつの時代も、会社側(企業側)の大きな悩みとなります。今回の解説では、次のことをご理解いただけます。

解説まとめ


「退職証明書」と「解雇理由証明書」の違い
「退職証明書」の目的と、会社側(企業側)のメリット
「退職証明書」を求められたときの、具体的な対応方法

会社側(企業側)で、問題社員対応にあたるときは、労働審判、労働訴訟で争われても適切な反論ができるよう、「退職証明書」を準備する段階から、入念な検討が必要となります。

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