MENU
弁護士 浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所を経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を開業。
企業の労働問題について、豊富な経験を有する。

→弁護士 浅野英之の詳細
ご相談予約をお待ちしております。

パワハラ防止法によるパワハラの相談窓口の設置義務化への対応方法

パワハラ防止法で義務化された、ハラスメント相談窓口の設置など、企業側ですべき防止措置への対応について、今回は詳しく解説していきます。

パワハラについて、改正労働施策総合推進法が施行(大企業は2020年6月1日〜、中小企業は2022年4月〜)。
この法改正は「パワハラ防止法」とも呼ばれ、社会問題化するパワハラなどのハラスメント対策が目的です。

これにより、ハラスメント相談窓口の設置の義務化をはじめ、企業には、パワハラに対応すべき義務が定められ、速やかな対応を余儀なくされています。

企業は、法律上の措置義務に正しく対応しなければ、安全配慮義務違反の責任を追及され、損害賠償を請求されるリスクも。
実際、パワハラの事後対応をあやまり、会社が損害賠償を命じられた裁判例は少なくありません。

当事務所では、相談窓口を弁護士に外部委託できるサポートを提供しています。
詳しくは、下記をご参照ください。

↓↓ 動画解説(約11分) ↓↓

目次(クリックで移動)

解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所を経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を開業。
企業の労働問題に豊富な経験を有する。

\相談ご予約受付中です/

パワハラ防止法と、ハラスメント相談窓口の設置の義務化

パワハラ防止法の正式名称を「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(労働施策総合推進法)。

冒頭のとおり、労働施策総合推進法30条の2第1項は、事業主に対し、パワハラについて「雇用管理上の措置」をとるよう義務付けています。
パワハラ防止法上の義務について、具体的な条文は次のとおりです。

労働施策総合推進法30条の2

1. 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

2. 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

3. 厚生労働大臣は、前二項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において「指針」という。)を定めるものとする。

4. 厚生労働大臣は、指針を定めるに当たつては、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴くものとする。 厚生労働大臣は、指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

5. 前二項の規定は、指針の変更について準用する。

労働施策総合推進法(e-Gov法令検索)

まず、「パワハラ」とはなにかという定義を簡単に解説した上で、このパワハラ防止法によって、企業側が、いつ、どのような対応をすべきか、行うべき施策について説明していきます。

↓↓ クリックで移動 ↓↓

なお、厚生労働省のガイドラインも参考にしてください。

厚生労働省「職場におけるハラスメント関係指針」

すでに、セクハラへの対応については、先に改正されていた男女雇用機会均等法により、防止措置が義務化されていましたが、今後は、セクハラ、パワハラをあわせて、ハラスメント全般についての防止措置が必要となります。

パワハラ防止法上の「パワハラ」とは

パワハラ防止法では、パワハラの定義が定められています。
パワハラ防止法にいう「パワハラ」とは、次の3つの要件を満たすものをいい、これに対して、企業が対策をすることが義務付けられています。

  1. 優越的な関係を背景としていること
    :社長や上司など、職場での地位が上であることはもちろん、年齢や技術、能力や集団の数などにより優位がとれていること(パワー)を背景にした嫌がらせ(ハラスメント)であること
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えていること
    :業務に必要のないことや、業務目的であっても不適切な手段によるものであること
  3. 労働者の就業環境が害されること
    :被害にあった労働者が身体的、精神的苦痛を感じて、業務に支障が出てしまうこと

職場における優越的な関係とは、上司・部下の関係が典型ですが、それに限らず、部下から上司へのパワハラ、同僚同士のパワハラなども存在します。
また、注意指導を目的とする言動は、業務上の必要性、相当性があるときは、パワハラにはなりません。

厚生労働省では、6種類のパワハラを類型化しています。

厚生労働省「明るい職場応援団 事業主向けパンフレット」
引用元:厚生労働省「明るい職場応援団 事業主向けパンフレット」

これによれば、以下の6種類にあたる言動が、パワハラと評価されます。

  1. 身体的な攻撃(暴行・傷害)
  2. 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
  3. 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
  4. 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行、不可能なことの強制・仕事の妨害)
  5. 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
  6. 個の侵害(私的なことに過度に立入ること)

現在、働く人の相談のなかで最も多いのがパワハラといっても過言ではないでしょう。
「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」(厚生労働省)によれば、民事上の個別労働紛争相談件数、労働局長による助言・指導、紛争調整委員会によるあっせんのいずれの件数も、「いじめ・嫌がらせ」が1位です。

「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」(厚生労働省)
「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」(厚生労働省)

このようなパワハラ相談件数の急増は、パワハラ防止法によりハラスメント相談窓口の設置が義務化された背景ともなっており、企業の対応は急務です。

パワハラ防止法上の義務の内容

パワハラ防止法上の「雇用管理上の措置」義務について、どのような措置をとるべきかかは、パワーハラスメント防止のための指針(いわゆる「パワハラ指針」)に具体化されています。

パワハラ指針では、措置義務の内容を、以下の4点と定めています。

パワハラ防止法の措置義務
パワハラ防止法の措置義務

なお、ハラスメントは、パワハラだけでなく、セクハラ、マタハラなども問題化しています。
更には、顧客からの嫌がらせであるカスハラ(カスタマーハラスメント)、スメハラ、アルハラなど、新たなハラスメントも出現し、ハラスメント全般について総合的な対処を要します。

窓口設置についても、すべてのハラスメントの一元的な窓口と位置づけるのがおすすめです。このことは、パワハラ指針をはじめ、セクハラ指針、マタハラ指針など各種のハラスメントへの対応指針で、相談に応じて適切に対応するために必要な体制の整備が求められていることからも明らかです。

①事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発

職場においてパワハラしてはならないという方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発する必要があります。
社員に浸透させるためには、「パワハラを絶対に許さない」という強いトップメッセージが大切です。

どのような言動がパワハラとなるのかを教育したり、実際にパワハラをしたらどう処分されるのかを就業規則などに定め、指導することも含まれます。

具体的な方法は、就業規則に定めるほか、社内報、パンフレット、社内ホームページなどに定めたり、注意指導、教育、懲戒処分などを通じてパワハラが禁止であると示すなどが考えられます。

②相談(苦情も含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

相談窓口を設置して必要な体制を整備し、周知することが必要です。
相談窓口を設置し、パワハラが生じている場合や、そのおそれがあるケースで、すみやかに適切な対応ができる環境を整備すること。

パワハラ相談窓口の設置義務化について、どう対応すべきかは、次章で詳しく解説します。

③職場におけるパワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応

パワハラが実際に起こってしまったとき、まず事実関係を速やかに確認し、スピーディに対応することが必要です。

具体的には、事情聴取を行い、被害回復、謝罪、加害者と被害者の引き離し、パワハラ加害者の注意指導、処分などをし、解決と、再発防止に努めなければなりません。

④併せて講ずべき措置

以上の措置とあわせて講じるべき措置として、ⅰプライバシー保護とその旨の周知、ⅱ相談、協力、援助・調停の申請、調停の出頭を理由として解雇その他不利益な取扱をされない旨を定め、周知・啓発すること

パワハラをはじめとしたハラスメント対策を怠ると、従業員の尊厳を傷つけるだけでなく、優秀な人材の採用を難しくしたり、社員の離職を増加させたり、企業の社会的評価を低下させたりといった損失もあります。

いつから対応が必要?(大企業:2020年6月施行〜、中小企業:2022年4月施行〜)

パワハラ防止法は、2020年6月に施行。
しかし、中小企業では、準備の状況にも配慮して施行を遅らされていました。
中小企業では2022年3月31日までは努力義務でしたが、2022年4月1日からは中小企業にも、大企業と同じく相談窓口の設置などが義務化されます。

なお、「中小企業」の定義は中小企業基本法に準じ、資本金や従業員数により次のとおり定められます。

スクロールできます
業種分類資本金額又は出資総額従業員数
製造業その他3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
小売業5000万円以下50人以下
サービス業5000万円以下100人以下

今後は、中小企業を含むすべての企業で、パワハラ対策を講じなければならず、2022年4月1日以降も相談窓口を設置していないなど、義務違反があるときには、法律違反となってしまいます。

パワハラ防止法に違反したときの制裁

パワハラ防止法に定められた相談窓口の設置、再発防止策などの義務に違反したとして、現在のところまだ、刑事罰などの罰則は定められていません。
ただし、パワハラ防止法に違反したときの制裁として、厚生労働大臣の助言、指導または勧告を受けるおそれがあります。
そして、勧告に従わなかった場合には、企業名公表をされるおそれがあり、社会的制裁を受けるリスクがあります。

なお、将来的には、罰則の導入も検討されており、ハラスメント相談窓口を設置する重要性は、さらに高まっています。

パワハラ防止法に定められたハラスメント窓口の設置のしかた

次に、パワハラ防止法に定められたハラスメント窓口を適切に設置するためにはどのように対応したらよいかを、以下の6つのステップに分けて解説します。

初動段階で、パワハラに気づくことは、企業のリスクを減らすためにも重要なこと。
パワハラを早期発見すれば、深刻化する前に対応できますから、何でも気軽に相談できるようにし、働きやすい職場つくりを心がけましょう。

パワハラ防止法に定められたパワハラ相談窓口を、適切な形で設置するようにしてください。

なお、厚生労働省の調査によれば、パワハラ相談窓口について、約8割の企業がすでに設置したと回答していますが、約2割強の企業は、これから設置をする必要があります。
あなたの会社が、この約2割強に含まれるなら、速やかな対処を要します。

厚生労働省「令和2年度 職場のハラスメントに関する実態調査」
引用元:厚生労働省「令和2年度 職場のハラスメントに関する実態調査」

パワハラ相談窓口の設置方法を検討する

まず、パワハラ相談窓口の設置のしかたを検討します。
パワハラ防止法、パワハラ指針における相談窓口の設置義務を守るために、次のいずれかの方法による必要があります。

  • 相談に対応する担当者をあらかじめ定めること
  • 相談に対応するための制度を設けること
  • 外部の機関に相談への対応を委託すること

つまり、相談窓口は、社内に設置する方法でも、外部機関に委託する方法でもよいです。

職場内では、どうしても上下関係が生まれてしまいますし、小規模な企業ほど、内部のつながりが濃くなります。
そのため、パワハラ被害者に「相談しづらい」と感じさせないよう、予算が許すなら、できるだけ外部機関に委託しておくのが効果的です。

社内と社外、双方に相談窓口を設置する方法も可能で、いずれにしても、相談しやすい環境づくりが重要。
ハラスメントの相談をしたい人にとっては、選択肢が広いほうが、相談しやすくなります。
各社員が、自分にとって相談しやすいと感じる窓口に相談してくれるようになるからです。

厚生労働省の「令和2年度 職場のハラスメントに関する実態調査」によれば、「社内のみに設置している」の割合が63.8%、「社内と社外の両方に設置している」が33.3%、「社外のみに設置している」が2.9%となっており、企業規模が大きくなるほど、相談窓口を外部に委託する例が増加しています。

内部相談窓口の設置方法

内部相談窓口とは、社内にハラスメント相談窓口を設置する方法。
主に、小規模な企業など、外部委託するコストをとりづらい会社は、内部相談窓口を設置するのがよいでしょう。

パワハラの相談窓口を社内に設置するとき、担当するものには次の例があります。
社内の部署で対応するときは、相談員となる担当者を定めて体制整備をします。

  • 社内の人事に関連する部署
    :人事部、労務部、総務部、コンプライアンス部など
  • 産業医
  • 労働組合

予算は、外部に委託するほどはかかりませんが、専用のメールアドレスや電話回線、相談室の設置といった整備が必要です。

外部相談窓口の場合

外部相談窓口とは、パワハラなどハラスメントの相談窓口を社外に置いて対応する方法のこと。

「社内の人には言いづらい」という場合も、社外の相談窓口なら、中立的な第三者に相談でき、会社に知られることなく匿名で、中立・公正な第三者に相談できるというメリットがあり、相談のしやすさにつながります。
かつ、弁護士、社労士など専門家の意見、アドバイスを聞くことができます。

人的リソースやノウハウ、スキルといった面で、社内に適切な担当者を用意できないとき、外部委託がおすすめです。

委託先には、次の例があります。
予算は「当事務所のサポート」で後述しますが、社員規模によって3万円〜10万円が相場の目安です。

  • 弁護士
  • 社会保険労務士
  • カウンセリング会社
  • ハラスメント相談窓口サービスを提供する民間企業

相談者の同意を得れば、社外相談窓口に寄せられた相談内容をもとに、相談窓口に指定した弁護士などの専門家と連携して、ハラスメント対策を講じることができます。

なお、各都道府県労働局の総合労働相談センター都道府県労働委員会の個別労働紛争のあっせん法テラス(日本司法支援センター)もまた、外部にあってパワハラの相談窓口となるものの、あくまでパワハラに悩む労働者が相談するためのもので、パワハラ防止法による相談窓口の義務化に関連するものではありません。

パワハラ相談窓口の担当者を決める

人事部など、社内にパワハラ相談窓口を設けることとした場合、次に、相談窓口の担当者を決めます。
このとき、担当窓口の長である人事部長や人事担当役員などを責任者として選任し、その下に、複数名の社員を相談担当として、組織的に対応できる体制を整備するのがポイントです。

複数の相談員を用意しなければ、パワハラに利害関係ある人が相談対応するのを避けられないおそれがあります。
小規模な企業ほど、どうしても利害関係人が相談員となる確率が上がってしまいます。
また、相談を複数でしなければ、パワハラ加害者からの攻撃の的になり、相談員の精神的ストレスが増大します。

また、セクハラ問題のように、性的指向、性的プライバシーがトラブルの原因となっているような相談もあるので、男女のかたよりもないようにしてください。

パワハラの相談体制を整える

相談窓口、相談担当者を決めたら、相談体制を整備します。

相談担当者には、相談のしかたについて研修、教育し、相談のロールプレイングを必ず実施してください。
パワハラが現に発生して悩んでいる方の相談、パワハラ発生のおそれがある方の相談など、微妙な事案にも対応しなければなりませんから、相談担当者には一定のスキルとノウハウを要します。

あわせて、性的問題など、プライベートな個人情報を取り扱うため、センシティブな情報も多く、プライバシーの遵守、不利益取扱の禁止についても、相談員に徹底して教育します。

パワハラの概念は広いため、相談窓口には、必ずしもハラスメント窓口での対応に向かない相談も寄せられます。
対応できない相談について、どのような種類の相談をどこに回すか、、リスト化しておいてください。
このとき、顧問弁護士、顧問社労士、産業医や労働組合、カウンセラーなどとの連携も必要となります。

相談マニュアル、チェックシートを作る

パワハラについての相談は、電話、メール、チャット、対面などさまざまな方法で受けられるようにしておきます。
しっかりと事情をヒアリングするため、また、匿名での相談も受け付けるため、まずはメールやチャット、書面などの文字ベースで問い合わせを受け付け、その後に、必要に応じて電話や対面にて事情聴取を行うという流れがおすすめです。

このとき、問い合わせの際の聴取を円滑に進められるよう、チェックシートやヒアリングシートを作り、パワハラの要点を簡易的に確認できるようにしておいてください。
また、対面相談をうまく進めるために、相談マニュアルも作成しておきましょう。

マニュアルやチェックシート、ヒアリングシートを作成するとことで、パワハラの相談担当者が退職したり、交代したりしたときにも、実効的な対策を継続できます。

パワハラ相談窓口の設置を周知する

体制整備が終わったら、パワハラの相談窓口を設置したことについて、従業員への周知が必要です。
相談窓口を設置しても、知られていなければ従業員に活用されず、設置義務を果たした意味が薄れます。
待ちの姿勢ではなく、積極的に活用してもらい、社員の悩み、困りごとを吸い上げていかなければなりません。

パワハラ相談窓口の周知は、社内報やパンフレット、社内イントラネットや掲示板、会社のサイトなど、社員全員に伝わる方法で行うようにしてください。
新入社員には、入社時に必ず告知します。
パワハラ相談窓口の設置時だけでなく、その後も、折に触れて常に周知を継続していかなければなりません。

周知のポスターなどの文面は、次のテンプレートを参考にしてください。

パワハラ相談窓口の設置について(テンプレート)

従業員各位

株式会社XXXX
代表取締役XXXX

当社では、この度、改正労働施策総合推進法(いわゆる「パワハラ防止法」)に基づき、下記のとおり、ハラスメント全般に関する相談窓口を設置しました。

  1. 社内相談窓口
    責任者:人事部長 XXXX
    電話番号:03−1234−5678
    メールアドレス:XXX@XXXX.XX
    相談対応時間:午前9時〜午後6時
  2. 社外相談窓口
    責任者:XXXX法律事務所 弁護士XXXX
    電話番号:03−2345−6789
    メールアドレス:XXX@XXXX.XX
    相談対応時間:午前9時〜午後6時

※プライバシーは遵守され、相談したことで不利益な取扱いを受けることはありません。
※相談は無料であり、匿名での相談も可能です。

厚生労働省のホームページでも、パワハラをはじめとしたハラスメントが許されないことを示すとともに、相談窓口を明示したポスターがダウンロードできます(厚生労働省:ポスター)。

パワハラ相談を踏まえた対策を講じる

相談窓口に寄せられた内容のなかで、既にパワハラの被害が生じているなど、事後対策が必要なケースもあります。
このとき、パワハラ相談を踏まえた、パワハラの事後対策を講じなければなりません。

ハラスメントが発生したことを把握したときには、ただちに対応しなければなりません。
このとき、まずは加害者と被害者を引き離して被害の拡大を防止した上で、加害者、被害者やパワハラの目撃者のヒアリングを行って事情を把握するようにします。

事実関係の調査を要するときには、相談担当者とは別に、調査担当者を選任したり、調査委員会を設置する例が多いです。
対応の詳しい流れは、厚生労働省「パワーハラスメント対策導入マニュアル」のフローチャートも参考にしてください。

厚生労働省「パワーハラスメント対策導入マニュアル」
厚生労働省「パワーハラスメント対策導入マニュアル」

パワハラが事実だったときには、加害者への処分も社内で検討しなければなりません。
懲戒処分には、譴責・戒告、減給、降格、出勤停止、懲戒解雇などの種類がありますが、パワハラの内容や程度、回数・頻度、悪質性などに応じて、就業規則に基づいて適切な処分を決めます。

懲戒処分が重すぎると、今度は、パワハラ加害者の側から「不当処分」だとして争われるおそれも。
量定に迷うときには、弁護士にご相談ください。

懲戒処分の重さ
懲戒処分の重さ

あわせて、パワハラ加害者からの報復防止や、直接の接触の禁止などの手段を講じて、二次被害の防止に努めるようにしてください。

パワハラなど暴力・暴言を理由に解雇するための知識は、次の解説をご覧ください。

↓↓ 動画解説(約11分) ↓↓

パワハラ相談窓口の設置義務に対応するときの注意点

次に、パワハラ相談窓口の設置義務に対応するとき、企業側で注意しておくべきポイントを解説します。

パワハラ対策は全社的に進める

パワハラ対策を進めるとき、「法律上の義務だから仕方ない」など消極的な気持ちで進めることのないようにしてください。
相談窓口を設置するのみにとどまらず、パワハラ対策は、会社主導で全社的に進めることが大切です。

パワハラ相談窓口のみで対応が困難なパワハラ被害のケースでは、他部署での連携も必要となります。
特に、パワハラの事後対策が必要なケースでは、加害者と被害者との分離をしたり、加害者を移動させたりするにあたり、他部署の協力が必須となります。
パワハラを社内から根絶するため、社長が率先して、パワハラ対策を進めるというトップダウン型の対策が必要となります。

就業規則を修正・変更する

パワハラ防止法上の措置義務への対応のなかで、「就業規則を変更すべきか」という法律相談を受けることがあります。

パワハラ防止法と、相談窓口の設置義務化について、就業規則に定めておくことまで義務とはされていません。
そのため、この法律との関係では、就業規則の修正・変更は必須ではありません。

ただし、パワハラが禁止されることの周知・啓発、全社的な方針を明らかにするなどの目的で、就業規則においてパワハラ禁止を宣言することは有効です。
パワハラに関する規定がなされていない就業規則を使用している会社では、これを機に、就業規則を改訂しましょう。

また、パワハラ対策として懲戒処分を用いるケースは多くありますが、懲戒処分に関する規定が十分ではない就業規則もよく見られます。
就業規則に定めておかなければ、会社は懲戒権を行使することはできませから、パワハラが懲戒事由として定められているかどうかといった点をはじめ、就業規則上の懲戒規定を見直しておいてください。

あわせて、パワハラ防止規程やマニュアルの作成を進めておくのもおすすめです。

パワハラの相談窓口を社外に設置するメリット

最後に、パワハラの相談窓口を、社外に設置することについて、会社側のメリットを解説します。

前章で解説したとおり、パワハラの相談窓口は、社内窓口を設置する方法、社外窓口を設置する方法のほか、双方を設置する方法もあります。
社員の相談しやすさを重視すれば、双方に設置しておく方法が、おすすめです。

パワハラ相談する社員に安心を与えられる

パワハラ相談窓口を、外部機関に委託するメリットの1つ目は、パワハラ相談する社員に安心を与えられることです。

社内に窓口を設置する場合、担当するのは人事部などとなりますが、社内だと人間関係を気にして相談しづらいという人も少なくありません。
会社が小規模となるほど、利害関係者が関わっている可能性を否定できず、噂なども気になることがあります。

社外だと中立、専門家の意見を反映できるという強みがあります。

顧問弁護士に依頼すれば、社内の実情把握も容易

パワハラ相談窓口を社外に設置すると、社内窓口に比べ、会社の実情把握がしづらいのではという不安が生じます。
顧問弁護士に依頼すれば、社内の実情把握も容易で、会社にあわせた相談が実施できるメリットがあります。

顧問弁護士は、常日頃から会社の法律相談を受け、アドバイスをしているからです。

一方で、「顧問弁護士がいるから、相談窓口を頼む必要はない」というのは間違いです。
相談窓口の設置は、パワハラ防止法上の義務であり、顧問弁護士を依頼するだけでは、会社からの法律相談は聞けても、社員からのパワハラ相談を聞くことができないからです。

ちなみに、顧問弁護士に、内部通報窓口を任せる場合に、その相談内容が会社に筒抜けとなってしまうと、相談をためらわれてしまうおそれがあり、対策が形骸化してしまいます。
利益相反となるおそれもあるため、中立性・公平性を担保し、窓口を分けること、中立性・公正性が守られることを社員に周知することといった対策を要します。

なお、内部通報窓口について定めた消費者庁のガイドラインでは、「中立性・公正性に疑義が生じるおそれ又は利益相反が生じるおそれがある法律事務所や民間の専門機関等の起用は避けることが必要である」として、中立性、公正性、利益相反に配慮が必要だと記載されています。

そもそも社内の部署にまかせてもよい窓口ですから、顧問弁護士が就任してはならないということはありません。
統計上も、調査対象企業の約半数が、顧問弁護士に社外窓口を委託しています(消費者庁「平成 28 年度 民間事業者における内部通報制度の実態調査 報告書」

まとめ

今回は、改正労働施策総合推進法(いわゆる「パワハラ防止法」)によって義務化された措置義務、特に、パワハラをはじめとしたハラスメントの相談窓口の設置について、企業側の対応手順を説明しました。

同法は、大企業では2020年6月、中小企業では2022年4月より施行され、早急な対応が必要です。

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所では、改正労働施策総合推進法(いわゆる「パワハラ防止法」)に義務付けられた措置義務を守るための、会社側のサポートを充実させています。
特に、ハラスメント相談窓口について、外部機関となって委託を受けることができます。

相談窓口を外部委託いただくときの料金(弁護士費用)は、社員数(企業規模)に応じて次のとおりです。

スクロールできます
内容料金(弁護士費用)
初期費用5万円
外部相談窓口(社員300名未満)1万円/月
外部相談窓口(社員300〜1000名)3万円/月
外部相談窓口(社員1000名以上)5万円/月
電話相談窓口の追加設置2万円/月
ハラスメント調査の実施30万円〜
ハラスメント研修の実施10万円/回
サービスの概要
  • 専用のお問い合わせフォームより、ハラスメント相談を24時間365日お聞きします。
  • ハラスメント相談について、24時間以内に、弁護士からの回答を行います。
  • 相談内容を踏まえ、再発防止のためのアドバイスを行います。
  • 社員からの法律相談を無料でお聞きします。

企業規模が小さい会社では、外部に委託するコストが気になるという方もいることでしょう。

しかし、社内に相談窓口を設置する方法でも、決して費用は安く済むわけではありません。
担当する相談員の時間を拘束してしまう上、法律上の義務を正しく守ろうとすれば、ノウハウやスキルを蓄積したり、研修、教育を行ったりするための費用がかさんでしまうためです。

パワハラ防止法のよくある質問

パワハラ防止法では、会社にどんな義務が課されますか?

パワハラ防止法は、企業にパワハラ対策を義務化しており、具体的には、パワハラに関する方針の周知・啓発、パワハラ相談窓口の設置の義務化、適切な事後対応といった点が義務となっています。もっと詳しく知りたい方は「パワハラ防止法と、ハラスメント相談窓口の設置の義務化」をご覧ください。

パワハラの相談窓口を設置するために必要な手順は?

パワハラの相談窓口の設置が義務とされていますが、適切に相談窓口を設置するためには、設置方法の検討、相談担当者の選任と教育、相談体制の整備、マニュアルやチェックシートの作成といった流れで進める必要があります。詳しくは「パワハラ防止法に定められたハラスメント窓口の設置のしかた」をご覧ください。

目次(クリックで移動)
閉じる