業務命令違反をする社員は、問題社員ですから、会社として対応が必要です。
社員が業務命令に従わないとき、まずは注意指導して改善をうながすべきですが、しばらくしても是正されなければ、一定の処分を検討せざるを得ません。
業務命令違反を理由として会社がすべき処分のうち、最も深刻なものが「解雇」です。
ただ、解雇は、社員への影響が大きいため「解雇権濫用法理」というルールで制限され、不当解雇として違法、無効といわれてしまうこともあります。
解雇が無効となってしまえば、社員に業務命令違反という非があるにもかかわらず、勤務継続を主張されたり、解雇の解決金、慰謝料など多額の金銭を払わされたりするリスクもあり、慎重に進めなければなりません。
今回は、業務命令違反の社員に対して、会社がすべき対応と、解雇するときの進め方について、企業の労働問題に詳しい弁護士が解説します。
- 業務命令違反は、誠実労働義務の違反であり、問題社員であることが明らか。
- 業務命令違反への会社の対応は、その程度に相当するものを選択しなければならない。
- 業務命令違反でも、解雇するのは容易でなく、不当解雇といわれないためにはプロセスが大切。
↓↓ 動画解説(約12分) ↓↓
業務命令違反とは
業務命令違反とは、社員が、会社や上司の業務命令に、正当な理由なく従わないことです。
社員が業務命令に従わない理由には、さまざまなものが考えられますが、多くのケースでは、企業の経営方針や社内における処遇への不満が根底にあります。
社員は、会社に雇用されている以上、会社の業務命令には従う必要があります。
これは、雇用契約(労働契約)上の当然の義務として、社員には、会社の指示にしたがって誠実に労働する義務(誠実労働義務)があるためです。
そのため業務命令違反は、職務放棄ないし職務怠慢を意味するもの。
業務命令は、会社によって行われるものであり、代表者(社長など)がする場合もありますが、部長や課長など上司が代わってすることもあります。
業務命令違反をする問題社員の例
よく相談を受ける業務命令違反には、次のような例があります。
- 会社に不満があり、業務命令を素直に聞かない
- 業務命令がパワハラ、嫌がらせだと主張し、無視する
- 「自分のすべき仕事ではない」と考え、指示された仕事をせず、職務放棄する
- やりたくない仕事を勝手に断ってくる
- 残業するよう業務命令したが、定時で帰ってしまった
問題社員のなかには、自分の能力を過信し、「より高いレベルの仕事を任されるべきだ」といった勝手な思いから、業務命令違反を犯してしまう者もいます。
しかし、このような理由があれど、業務命令違反は、企業秩序を乱します。
たとえ能力が高く、業務命令に従わないほうが結果が出せるとしても、企業秩序を乱してよい理由にはなりません。
会社運営をしていれば、苦しい仕事、やりたくない仕事はどうしても生じますが、誰かがやらねばなりません。
業務命令違反を放置したり、許してしまったりしては、他の社員にしめしが付かず、みんな嫌な仕事から逃げてしまいますから、企業組織として活動していく意味がなくなってしまいます。
企業の経営というのは、社員が会社の指示にしたがって誠実労働義務を果たし、「一丸」となることではじめて社員間の相互作用が生まれ、組織としての力が発揮されるのです。
社員1人の勝手な判断による、業務命令違反を許してはならず、厳格な対応を要します。
業務命令違反への対応は、法律に定められていない
社員の業務命令違反に、会社がどう対応すべきか、法律には定められていません。
労働基準法をはじめとした労働法にも、業務命令違反への対応についてはルールがありません。
そのため「法律の問題」ではなく「契約の問題」、つまり労使の約束の問題として、対応方針を検討するのが重要。
このとき、労使間の契約内容となる、雇用契約書(労働契約書)、就業規則こそが、会社が対応していく上での参考とすべき指針になります。
業務命令違反の社員に対し、会社が検討すべき処分
次に、業務命令違反の社員に対して、会社が検討すべき処分は、大きく3つにわけることができます。
それぞれ性質の異なる処分なので、適切なタイミングを見極め、使い分ける必要があります。
処分の選択を誤ると、業務命令違反という問題の改善に効果がないだけでなく、処分の対象となった社員から争われ、労使トラブルを加速させてしまいます。
人事権の行使
業務命令違反に対して、まず検討すべきなのが人事権の行使です。
人事権の行使とは、会社が、社員にあわせて、その処遇を変更するという処分です。
例えば、「自分のすべき仕事ではないから、業務命令には従いたくない」といって業務命令違反を犯す社員には、異動や配置転換を命じることで、適切な仕事を指示するといった解決策が考えられます。
なお、人事権の行使は、次に解説する、懲戒権の行使である懲戒処分とは、性質が異なります。
懲戒処分が、問題行為に対する制裁(ペナルティ)という意味合いが強い一方で、人事権の行使は必ずしも「罰」ではありません。
人事権の行使では、社員の活躍をサポートするために、その人の性質を評価し、それにあわせて処遇を変更するという意味があります。
懲戒処分
業務命令違反は、服務規律違反であり、これによって企業秩序を乱す社員には懲戒処分を下せます。
業務命令違反の社員に下すべき懲戒処分には、軽い順に、譴責・戒告、減給、降格、出勤停止、諭旨解雇、懲戒解雇といった多くの種類があります。
業務命令違反の内容や程度、回数、頻度、反省の度合い、改善の余地などの事情を総合的に考慮して、バランスのとれた処分を選択しなければなりません。
相当性に欠ける処分は、裁判所で無効と判断されるおそれがあるからです。
懲戒解雇をはじめ重大な懲戒処分を下すときは、弁明の機会を与え、社員側の言い分を聞く必要があります。
この段階で、弁明の機会を与え、社員に対して、「業務命令違反のどのような点が問題なのか」を理解し、自分の問題行為と向き合ってもらうことで、解雇まで進まずに改善してもらうことを目的とします。
なお、業務命令権は、雇用契約の性質として当然に会社に与えられていますが、懲戒権はそうではありません。
懲戒権は、就業規則によって会社に与えられるものなので、就業規則に懲戒処分についての規定がなければ、そもそも下すことはできない点に注意が必要です。
解雇
業務命令違反の社員に対して、会社が最後に検討するのが解雇です。
解雇は、「解雇権濫用法理」により厳しく制限されており、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には、権利濫用の不当解雇として無効になります(労働契約法16条)。
この点で、解雇することにはリスクもあるため、あくまで最終手段だと考えてください。
「言うことを聞かない部下はクビにしよう」というような簡単なものでは決してありません。
労働者が争ってきた結果、労働審判、訴訟などで負けてしまえば、問題社員なのに復職を許してしまったり、解雇の解決金、慰謝料などの多額の支出が必要となったりするおそれがあるため、慎重に進めてください。
解雇を労働審判で争われてしまったとき、解雇の解決金の相場は、次の解説をご覧ください。
↓↓ 解説動画(約10分) ↓↓
業務命令違反の社員を解雇するときの流れ
次に、業務命令違反の社員を解雇するときの流れを、6つのステップで解説します。
前章の解説のとおり、業務命令違反という重大な問題がある社員といえども、すぐに解雇してしまえば「不当解雇」といわれるリスクがあります。
そのため、業務命令違反の社員に対し、解雇へと進めていくときは、正しい手順を踏む必要があります。
注意指導する
はじめに、業務命令違反の社員に対して、注意指導を行います。
業務命令違反をする問題社員は、命令に従わないことをさほど重大な問題とはとらえていないおそれもあります。
まずは業務命令に従わないことの問題性を理解してもらうことからスタートしなければなりません。
そのためには、注意指導により問題点を指摘し、理解させるのが大切です。
業務命令違反がひどいときは、最終的には解雇となるわけですが、間違えてはならないのは「業務命令は解雇のためにあるわけではない」ということです。
そのため、辞めてほしい問題社員に対峙するときにも、解雇を焦るべきではなく、まずは改善ができないかどうか、注意指導からはじめるのが重要なポイント。
解雇を焦ってはいけません。
注意指導した社員から、「従わなければ解雇ですか?」と聞かれることもあります。
しかし、このような挑発を受けても応じてはならず、業務命令ないし注意指導にしたがって誠実に働いてもらえるよう、粘り強く説得を続けてください。
このとき、業務命令についてはもちろん、注意指導もまた書面で行って証拠化するのがポイントです。
書面に残しておけば、いざ労働者側から訴えられてしまったとき、「業務命令違反という重大な問題点があったこと」、「繰り返し注意指導したが、改善がなされなかったこと」を、客観的な証拠により証明できるからです。
始末書を書かせる
次に、始末書を書かせることです。
業務命令違反の問題性について納得してくれない社員には、始末書を書いてもらうことで、自分の行為の問題点を認識してもらう必要があります。
始末書を拒否し、どうしても自身の問題点を認めようとしないときは、「始末書」ではなく「顛末書」を書かせるという代替案も検討してください。
「始末書」は、問題行為の経緯とともに反省・謝罪を意味するのに対して、「顛末書」は経緯の報告を意味しており、反省・謝罪という意味合いは含まれおらず、社員にも受け入れてもらいやすいからです。
問題点を社員本人に理解させ、改善の様子を報告させるためには、業務日報を書かせる方法もおすすめです。
業務命令違反が改善されるまで、継続的に日報を作成、提出させることで、改善の経過を明らかにするとともに、タイミングを見て適切な指導をすることができます。
始末書と顛末書の違いを区別し、適切に使い分けるため、次の解説もご覧ください。
軽度の懲戒処分・人事処分で改善をうながす
注意指導しても業務命令違反が止まらなくても、すぐ解雇するのではなく、軽度な懲戒処分、人事処分によって改善をうながすのが適切です。
「処分」という形を示し、通知書を渡すといった形式を踏むことで、重大性を理解してくれない社員も、事の深刻さを悟ってくれると期待できます。
例えば、譴責・戒告といった処分にし、通知する方法があります。
この場合、今後も勤務を継続することを前提とした処分となります。
なお、業務命令違反という問題行為の程度に応じた、必要性・相当性のある懲戒処分でなければ、無効と判断されるおそれがあります。
合意退職を目指し、退職勧奨する
どうしても業務命令の重要性を理解してもらえないとき、会社に残り続けることは社員にとっても不幸なケースも。
業務命令違反の理由に、会社への不満、社長個人への恨みなど、深刻な感情的対立があるケースでは、もはや、その会社での活躍は望めないでしょう。
このとき、話し合いをすることで社員に合意退職してもらえないか検討してください。
合意退職に向けた働きかけを「退職勧奨」といい、退職条件について労使が合意すれば、円満な退職となります。
退職勧奨では、労働者の意思に反して無理やり退職させてしまうと、違法な退職強要となるため注意が必要です。
話し合って合意退職してもらうと、業務命令違反を許したように思えて納得いかないかもしれません。
しかし、業務命令違反が重大なときでも、解雇をめぐるトラブルで負けると、不当解雇となってしまいます。
また、たとえ勝訴できそうな事案でも、解雇の有効性を争うには、相当な時間と費用が必要なことを、会社も覚悟しなければなりません。
退職勧奨の結果、社員が退職に応じるとき、必ず退職合意書を作成しておいてください。
↓↓ 動画解説(約14分) ↓↓
普通解雇する
何度も注意しても改善されず、退職勧奨をしても社員が退職に応じてくれないと、いよいよ解雇を検討します。
このとき、どんな解雇をするかについて、「普通解雇」と「懲戒解雇」のいずれかを選ばなければなりません。
懲戒解雇のほうが、普通解雇よりも厳しい処分と考えられており、裁判所で争うときにも、懲戒解雇のほうが普通解雇と比べて、有効と認められるためのハードルが高い傾向にあります。
また、普通解雇では、30日前に解雇予告をするか、足りない日数分の平均賃金を「解雇予告手当」をして支払う必要があります(労働基準法20条)が、これに対して、懲戒解雇だと、重責解雇だとして、労働基準監督署の解雇予告除外認定を受けた上で、即日解雇するケースがあります。
以上の点を検討すれば、よほどの重大な事情のないかぎり、まずは普通解雇が原則だと考えるべきです。
そのほうが、会社にとってリスクが少ない対応だといえるからです。
懲戒解雇する
業務命令違反について、就業規則で、懲戒解雇事由として定めている会社が多いです。
厚生労働省のモデル就業規則でも、「正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき」という事情が、懲戒解雇の理由として記載されています。
懲戒解雇は、会社のとりうる手段のなかでも最も重く、社員に与える影響も大きいもの。
そのため、懲戒解雇をする前には、必ず弁明の機会を与え、社員の言い分を聞かなければなりません。
弁明の機会なしに懲戒解雇とすると、労働者側から争われてしまったとき裁判所で不当解雇と判断される可能性が高まります。
弁明の内容も踏まえて、懲戒解雇にすべき重大事案と判断できるときには、懲戒解雇とします。
懲戒解雇は、経歴に傷がつき、転職活動に悪影響となるリスクがあるなどの理由から、労働者側が争ってくると容易に想像されます。
細心の注意を払い、それでもなお懲戒解雇とするときは、事前に弁護士へ相談し、アドバイスをもらうのが有益です。
業務命令違反による解雇に関する裁判例
業務命令違反を理由にした解雇について、有効と判断した裁判例、無効と判断した裁判例の双方があります。
やむを得ず、業務命令に従わない社員を解雇せざるを得ないときも、裁判例の判断基準を知っておけば、できるだけリスクを少なくして解雇を進めるのに役立ちます。
↓↓ クリックで移動 ↓↓
業務命令違反による解雇を有効と判断した裁判例
東京地裁平成30年11月29日判決
東京地裁平成30年11月29日判決は、金融機関で働く期間の定めのない社員が、解雇の無効を争った事案です。
この裁判例では、顧客情報を厳しく管理すべき金融機関の従業員でありながら、業務上の必要なく顧客情報にアクセスしたこと、配置転換や異動の命令にしたがわず、自分が会社を監視する権限を有しているなどの独自の見解に固執したこと、といった悪質な業務命令違反を認定して、解雇を有効なものと判断しました。
業務命令違反による解雇を無効と判断した裁判例
東京地裁平成28年2月4日判決
東京地裁平成28年2月4日判決の事案では、労働者、プロジェクトから降りると発言したこと、顧客から委託された業務を独自の判断で断るような姿勢を示したことなどといった業務命令違反を理由にされた解雇について争われました。
以上のような解雇理由に対して、労働者側からは、いずれも要望や意見にすぎず、実際には業務命令にしたがっているという反論がされ、結果、解雇権濫用により、解雇は無効であると判断されました。
この裁判例では、月90時間を超える残業が1年間続き、体調不良を訴えても改善されなかったといった事情から、上記のような発言は「正当な業務負担軽減の要望」であると判断しました。
業務命令違反の社員に、損害賠償請求できるか
業務命令違反が深刻であり、会社に損失が生じているときには、指示・命令に違反した社員に対して、損害賠償を請求すべきケースもあります。
会社は社員を業務命令によってコントロールして、組織として機能しているわけですから、業務命令に従わない社員がいれば適切な成果を発揮できず、会社にとって損害が生じてしまうケースもあります。
ただし、単に業務命令に従わないからといった軽い理由では、損害賠償請求は認められません。
損害賠償請求を、裁判所で認めてもらうためには、その業務命令違反が「不法行為」(民法709条)といえるほどの違法性があり、かつ、それによって会社に損害が生じていなければなりません。
この点で、業務命令違反を理由として損害賠償請求しようとすれば、それによって生じた損害について、証拠によって立証する努力を会社側でしなければなりません。
業務命令違反の社員に対応するときの注意点
最後に、業務命令違反の社員に対応するとき、会社側で知っておいてほしい注意点を解説します。
業務命令違反し、会社の言うことをきかない社員は、会社への忠誠心が低く、帰属意識がないと考えられます。
もはや退職を見越し、転職活動をしていることもありますが、このようなとき、業務命令違反への会社の対応に問題があると、退職のタイミングで労働者側から争われ、会社が不利益を被ってしまう危険もあります。
業務命令が違法だと、拒否する正当な理由がある
問題のある業務命令違反だといえるためには、その業務命令が適切なものでなければなりません。
違法な業務命令であるときには、拒否することに「正当な理由」があります。
そのため、単にその指示・命令に従うことを拒否したからといって、責められるわけではありません。
会社側で注意すべき違法な業務命令には、例えば次のものがあります。
- 違法行為を指示する業務命令
- 残業代(割増賃金)を払わないのに、残業をしなければこなせない仕事量を押し付ける業務命令
- 長時間労働、過度のストレスにまったく配慮しない業務命令
- 妊娠中の女性社員に負担となるマタハラ的な業務命令
業務命令違反を指摘するとき、社員が指示・命令に従わない理由をよく理解し、その理由が「業務命令の違法性」についての指摘ではないかどうか、慎重に検討してください。
業務命令権の濫用に注意する
会社には、雇用契約上の当然の権利として、業務命令権があります。
しかし、権利があるからといって、どのように行使してもよいのではなく、不適切な権利行使は「業務命令権の濫用」として逆に問題視されてしまいます。
業務命令があれば社員はどこまででも従わなければならないのではなく、業務命令には範囲があり、合理的な範囲でしか指示・命令することができないということです。
業務命令権の濫用となるケースには、例えば次のものがあります。
- 他の社員に比べて、不平等で、不公平な業務命令
- 明らかに不必要な仕事をさせられる業務命令
- 職種限定の合意をしている社員に対し、契約外の業務を押し付ける業務命令
- 社員を自主的に辞めさせる目的で、嫌がらせを内容とする業務命令
- 過剰なノルマ、経験の不足する困難な仕事を命じるなどの「過大な要求」
- キャリアや経験、能力に比して簡単な仕事を命じるなどの「過小な要求」
権利濫用の意図が会社になくても、命じられた社員側から「その業務命令は権利濫用だ」と反論されることも。
このとき、会社が業務命令の正当性を主張するのであれば、「なぜその業務命令をするのか」、「その業務命令が、会社にとってどんな意味があるのか」、「業務命令した仕事が会社にとってどれほど重要なのか」といった点を説明し、社員の理解を求めるようにしてください。
この点を争ったJR東日本(本荘保線区)事件(最高裁平成8年2月23日判決)では、就業規則の書き写しを命じた業務命令は、教育指導としても業務命令権の裁量を逸脱して違法であると判断しました。
業務命令違反への注意指導が、逆にパワハラだといわれたら
業務命令違反への上司による注意指導が強すぎたり、暴言・暴力や人格否定をともなうものであったりすると、部下の側から、「むしろ注意指導がパワハラにあたるのではないか」と反撃を受けるケースがあります。
また、最近では、部下が上司の指示に従わず、嫌がらせを繰り返すことが「逆パワハラ」として問題視されています。
しかし、上司の業務指示が正当であるかぎり、従わないことは服務規律に違反するのですから、躊躇して引いてしまっては、図に乗らせることとなりますから、注意指導をやめてはなりません。
このような業務命令違反の程度が悪質な問題社員に対しては、その上司1人に注意指導、教育を任せきりにするのではなく、全社的に対応していく必要があります。
さらに上司や社長などに相談し、会社全体で連携しながら、業務命令違反の社員の問題点を明らかにして対応していきます。
パワハラ防止法により、パワハラ相談窓口の設置をはじめ、ハラスメント対策が義務化されました。
↓↓ 動画解説(約11分) ↓↓
まとめ
今回は、業務命令違反の社員に、会社が対応する際に知っておきたい法律知識を解説しました。
業務命令に従うことは社員の義務ですから、素直に従わない社員の側に非があるのは当然です。
しかし、それでもなお、すぐに解雇としてしまっては不当解雇のリスクがありますし、嫌がらせ的な業務命令でパワハラをすることは許されざる行為です。
粛々と対応し、注意指導から改善要求、退職勧奨へ、と進めるのが、リスクの少ない問題社員対応といえます。
当事務所のサポート
弁護士法人浅野総合法律事務所では、企業の労働問題に精通しており、顧問弁護士として、多くの企業の問題社員対応について支援してきた実績があります。
業務命令違反を繰り返す社員には、懲戒処分や退職勧奨、解雇など、厳しい対応が必要です。
当事務所では、弁護士の後方支援によって法的リスクを排除するアドバイスをしたり、処分の通知書を代わりに作成したり、退職勧奨や解雇通告の場に同席するといったサポートを提案できます。
業務命令違反への対応によくある質問
- 業務命令違反の社員に対して、どんな処分をすべきですか?
-
業務命令違反があるとき、まずは注意指導して、改善をうながし、勤務が続けられないか試みます。その後、懲戒処分、人事権の行使などを経てもなお会社を辞めてもらわざるをえないときは、退職勧奨、解雇の順にすすめてください。詳しくは「業務命令違反の社員に対し、会社が検討すべき処分」をご覧ください。
- 業務命令違反の問題社員を解雇できますか?
-
業務命令違反が著しいときは解雇できますが、解雇権濫用法理によって制限されていますから、有効に解雇するためには、少なくとも、何度も注意指導し、それでもなお業務命令に従わなかったという事情が必要となります。もっと詳しく知りたい方は「業務命令違反の社員を解雇するときの流れ」をご覧ください。