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うつ病(メンタルヘルス)の休職者から団体交渉│団体交渉の解決事例

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「うつ病」などのメンタルヘルス(精神疾患)にかかってしまう従業員が増えています。会社側(企業側)としても、うつ病の社員に対して適切に対応しないと、団体交渉によって責任追及されかねません。

今回は、うつ病によって休職命令を受けた社員から、労働組合に加入し、団体交渉を申し入れられた事例の解決を、弁護士がご紹介します。

労働組合から、「会社のせいでうつ病になった。」、「責任(金銭)をとってほしい。」と申し入れがあったときの対応について、具体的にイメージしてください。

当事務所の弁護士は、法律上の「守秘義務」を負っています。紹介する解決事例は、会社名などが特定できないよう、具体的な事実を適宜修正しています。

ご相談内容

「うつ病」にかかったと社員に言われたとき、「解雇するのは適切でない」ことは理解していました。

しかし、休職とした後突然、合同労組(ユニオン)に加入されました。会社の業務によって「うつ病」にかかったかどうかは、わかりません。

労働組合から、労災、安全配慮義務、休業補償などと言われていますが、請求金銭が高額すぎて払えません。

事案の概要

今回ご相談いただいた会社Y社は、東京都渋谷区に本社を置く、ゲームアプリを作っている会社です。従業員は40名で、若い従業員が中心の、元気のよい職場でした。

団体交渉を申し入れてきた労働者Xは、Y社において、主にゲームアプリのシステム開発を行っているSE(システムエンジニア)でした。会社に入社したのは約2年前です。

SE(システムエンジニア)など、技術職にありがちかもしれませんが、コミュニケーションは必ずしも得意ではなく、日ごろから無口だったため、体調が悪いとは気づきもしませんでした。

Y社の他の従業員も、社長も、Xは、話しかけないほうが、うまくいくのではないか、協調性はないのではないかと思い、気にも留めませんでした。

しかし、ある日突然、業務中にうわごとをつぶやき、頭痛とめまいを訴えて倒れてから、会社を無断欠勤するようになりました。

診断書が提出され「うつ病」だとわかりましたが、労働組合から団体交渉を申し入れるFAXを受け取るまで、Xの欠勤が会社の業務のせいとは思えませんでした。

団体交渉における労働組合の要求事項

うつ病などのメンタルヘルス問題が、労働問題へと発展したとき、感情的な対立が大きくなりがちなことから、労働組合からの要求も、受け入れがたいほど大きいことが少なくありません。

今回のケースでは、過労死、過労自殺などには至りませんでしたが、Xのうつ病は重いようでした。労働組合からの要求事項は次のとおりです。

ポイント

  • 「うつ病」が業務災害であることを認め、労災申請に協力すること
  • 「うつ病」の原因が会社の業務にあることを認め、労災では補えない慰謝料300万円を支払うこと
  • Xの「うつ病」の治療状況に配慮しながら、復職に協力すること

団体交渉による労働問題の解決

今回のケースでは、「うつ病」の社員の取扱いが適切であったかどうかが、団体交渉の重要な争点となります。

社員が「うつ病」にかかってしまったとき、「会社のせいではないのでは?」と思う場合であっても、慎重な対応が必要です。間違っても、「即日解雇」といった過激な対応はNGです。

団体交渉前の準備

第1回団体交渉にのぞむ前に、事前準備が肝要です。

「うつ病」などのメンタルヘルス(精神疾患)問題で、弁護士が気にするのは、「既往歴」です。つまり、「過去に、同様のうつ病にかかったことがないかどうか」です。

今回のケースでは、Y社での労働時間はさほど長時間ではなく、残業もそれほど多くはありませんでした。職場いじめ、パワハラなどの被害も報告されていませんでした。

より具体的な事実を詳しく知る、直属の上司からのヒアリングなどで、次の事実がわかりました。

  • Xの履歴書から、Xが短期間の間に、複数の会社を転々と転職していることが判明した。
  • Xが、同僚に、前職を退職するときに「多額の金銭を受け取った」と自慢げに話していた。

Xは、もともとうつ病にかかっていたのであり、このことから、Xのうつ病の原因は、会社の業務だけでなく、プライベート(私生活)にあるのではないかと推察されました。

第1回の団体交渉

会社は、第1回の団体交渉で、会社側(企業側)が把握しているかぎり、うつ病の原因となるようなXに対する業務上のストレスはなかったことを報告しました。

合わせて、団体交渉では、逆に会社から組合に対して、どのような事実が、「うつ病」の原因と考えるのかについて、丁寧に質問をしました。

労働組合からは、「私生活でなにを悩んでいたというのか。」、「馬鹿にするな。会社のせいだ。」という発言がありましたが、具体的な問題の指摘はありませんでした。

第2回の団体交渉

第2回の団体交渉では、会社は、労働組合(合同労組)に対して、事前準備で判明していた、Xの「うつ病」の「既往歴」について指摘しました。

労働組合からは、今回の症状は「既往歴」と関係ないこと、私生活上のストレスからの症状であるという根拠はないこと、といった反論がされました。

会社としては、「会社を辞めてほしい」という気持ちまではなかったことから、「休職期間を十分に使って、療養に専念してほしい」と伝えて締めくくりました。

第3回の団体交渉

第3回の団体交渉では、労働組合から、具体的な金銭の要求がありました。慰謝料としては、300万円を請求するという内容でした。

会社としては、裁判所や労働委員会でも認められる結論ならまだしも、「うつ病」の原因が不明ななかで慰謝料を払うなら、「労災は申請しないこと」もしくは「退職」が条件であると伝えました。

労働組合が、労働者側で持ち帰って検討することとなりました。

あっせん申請

労働組合からの金銭請求に対して、会社側(企業側)が「退職」を条件に持ち出したことから、団体交渉は終了となり、労働組合から「あっせん申請」がなされました。

「あっせん」は、労働委員会で行われる、話し合いを中心とする手続です。

「あっせん」の場では、労働者側の意向も、「退職」を条件とするものでもよい方向に傾いているのではないかと見て取れました。「あっせん」での要求は次の通りでした。

ポイント

  • Xにとって有利な時期に、合意退職によって会社を辞めること
  • 失業保険の関係上、離職票に記載する退職理由は「会社都合」とすること
  • 退職にともなう慰謝料として300万円を支払うこと

労働委員会の「あっせん」の場で、労働組合側の主張・要求が変化してきたことから、労使の歩み寄りによる解決が可能であるように思えました。

そこで、再度、弁護士を通じて合同労組(ユニオン)に連絡し、金銭解決の調整を行うための「事務折衝」を行いました。

労働問題の解決の内容

「あっせん」において、労働組合側の態度の軟化を見て、事務折衝においては、金額交渉だけを中心に行いました。

「合意退職すること」について、既に労使の合意に達していましたし、会社側(企業側)としては、退職理由を「会社都合」とすることには協力できました。

結果、休職期間中であって、生活に困窮していた可能性もありますが、解決金を200万円まで減額してもらって、「合意退職」を内容とする和解で終了しました。

担当した弁護士の解説

団体交渉では、誠実で、かつ、粘り強い交渉が重要です。

特に、「うつ病」などのメンタルヘルス(精神疾患)を議題とする場合、労働者側も、過熱しがちで、最初は話し合いにすらならないのでは・・・と不安になることも多いのではないでしょうか。

団体交渉や、場合によってはその後の労働委員会における「あっせん」、「救済命令申立て」といった手続で粘り強く話すことで、妥協点を探すプロセスを踏むことが重要です。

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