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弁護士 浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所を経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を開業。
企業の労働問題について、豊富な経験を有する。

→弁護士 浅野英之の詳細
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うつ病の休職中の社員による団体交渉│団体交渉の解決事例4

相談内容
相談者
  • 東京都渋谷区
  • アプリ制作会社
  • 社員数40名

アプリ制作のベンチャーを経営しています。納期がタイトとなりがちで長時間労働が続いていたところ、社員からうつ病になったといわれ、休職を命じました。

解雇が難しいことは理解していましたが、他の社員は同じ時間労働しても倒れていないため、当該社員には辞めてほしいという気持ちが先行してしまい、面談時につい「ベンチャーには合わないから退職したほうがよいのでは」と口走ってしまいました。

合同労組(ユニオン)に加入され、会社の業務によってうつ病になったと主張され、安全配慮義務違反なので慰謝料1000万円を支払うよう要求されています。当社はベンチャーであり、高額すぎる請求に応じることは現実的に難しいです。

団体交渉の結果、退職を前提とした金銭解決を実現

まとめ 団体交渉・労働組合対応を弁護士に依頼するメリット

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所を経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を開業。
企業の労働問題に豊富な経験を有する。

\相談ご予約受付中です/

相談に至った経緯

今回の相談は、ベンチャー企業における団体交渉の例です。

ベンチャー企業では、その性質上、時間を気にせず働くことが美徳とされ、長時間労働が放置されてしまいがちです。特に、今回のケースのように、システムエンジニアの例では、納期直前の長時間労働がよく問題となります。また、システムエンジニア等の技術職にありがちなように、コミュニケーションが必ずしも得意ではなく、社長をはじめ社員とも接点がそれほどなかったため、うつ病のり患に気づくのが遅れた点にも問題があります。

ある日突然、業務中にうわごとをつぶやき、頭痛とめまいを訴えて倒れてから会社を欠勤するようになり、その後荷提出された診断書により、うつ病だとわかりました。

しかし、創業者である社長は、昼夜を問わず働くのがベンチャー企業では当然であり、他の社員も同じような働き方をしていたことから、Xの病気が必ずしも会社だけのせいだとは思えませんでした。合同労組(ユニオン)に加入して団体交渉を要求されてもなお、そのような気持ちが前に出てしまい、発言をするたびに労働組合から厳しい忠告を受け、問題を悪化させ続けていました。

弁護士による対応と解決

団体交渉前の準備

合同労組(ユニオン)を通じて提示された要求は、次のとおりでした。

  • うつ病が業務災害であることを認め、謝罪すること
  • 労災申請手続きに協力すること
  • うつ病が業務に起因することを認め、安全配慮義務違反の慰謝料1000万円を支払うこと
  • 治療状況に配慮しながら、復職に協力すること

第1回団体交渉にのぞむ前の事前準備が肝要です。特に、うつ病など精神疾患(メンタルヘルス)の原因が業務にあるのかどうかを検討するためには、当該社員の既往歴、つまり、過去に同種の精神疾患にかかったことがあるか、という点の調査が重要です。

実際、社内の労働時間は、締切直前を除けばさほど長時間ではなく、ハラスメント等の相談例もありませんでした。一方、Xは過去に家庭内の問題を理由として体調を崩していることを直属の上司に相談していたことが判明しました。また、前職も1年内に退職していることも明らかになりました。

第1回の団体交渉

第1回の団体交渉から、弁護士が同席しました。
第1回の団体交渉では、会社の把握している限り、うつ病の原因となるような業務上のストレスがなかったことを報告した上で、逆に、会社の業務に関するどのような事情がうつ病の原因となっていると考えるのか、労働組合側に主張を求めました。

労働組合からは、「私生活での悩みはなかった」、「馬鹿にするにもほどがある。会社のせいであることは明らかだ」という強い主張がありましたが、語気荒く主張を繰り返すのみで、具体的な事実の指摘は全くありませんでした。

第2回の団体交渉

第2回の団体交渉にも弁護士が同席しました。
第1回の団体交渉では、まずは組合側の主張を聴取することを優先したものの、特に具体的な指摘はなかったため、第2回の団体交渉では、会社側から、事前準備で判明していたうつ病の既往歴について指摘しました。

これに対しても、労働組合側からは具体的な説明はなく、既往歴とは関係ない病気だという主張が繰り返しなされるのみでした。会社としては、業務との起因性を調べるため、過去の診断書とカルテを開示するよう求めましたが、労働組合側としてこれらの要求には応じないとのことでした。

会社としては、「辞めてほしい」という気持ちまではなかったことから、「休職期間を十分使って療養に専念してほしい」と伝え、締めくくりました。

第3回の団体交渉

第3回の団体交渉にも弁護士が同席しました。
第3回の団体交渉では、労働組合から具体的な金銭の要求があり、慰謝料について200万円まで譲歩してもよいという内容でした。

会社としては、業務起因性についての具体的な主張がないままであることを指摘しましたが、その点についての議論を詰めるよりも前に金銭解決できるのであれば、そちらを優先して協議したいということでした。

団体交渉中に弁護士と相談した結果、退職をしてもらい労働問題を一括解決できるのであれば慰謝料の支払いをするメリットがあること、その場合、慰謝料150万円までであれば支払いに応じられることが決まり、そのように労働組合に提案しました。その結果、次の内容で、団体交渉の席上で合意が成立するに至りました。

  • 退職日は来月末とすること
  • 離職票に記載する退職理由は「会社都合」とすること
  • 退職にともなう解決金として150万円を支払うこと
  • その他の債権債務関係は一切ないと確認すること

これ以上に問題が拡大した場合には、長時間労働に対する未払残業代請求等もあり得たところ、150万円で全ての問題を解決することができた点で成功事例であるといえます。

弁護士のアドバイス

団体交渉では、誠実で、かつ、粘り強い交渉が重要です。

特に、うつ病等の精神疾患(メンタルヘルス)が争点となるとき、労働者側でも会社に対する恨みが深く、議論が過熱しがちです。過労死、過労自殺といった更に大きな問題に発展するおそれもあり、慎重な対応が望まれます。

うつ病等の精神疾患(メンタルヘルス)に罹患する社員は増加しており、会社としても適切な対応をしなければ団体交渉で責任追及をされるおそれがあります。

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