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弁護士 浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所を経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を開業。
企業の労働問題について、豊富な経験を有する。

→弁護士 浅野英之の詳細
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自主退職でも労働組合の団体交渉に応じたケース│団体交渉の解決事例2

相談内容
相談者
  • 東京都港区
  • デザイン系
  • 社員数5名

入社直後に、社員と言い争いになりました。小規模な会社ですから人間関係が第一であり、社長と折り合いが悪いなら辞めるのは仕方ないと考えていました。

案の定、次の日から出社しなくなり、LINEで「一身上の都合でやめます」とだけ連絡があって以来連絡がとれなくなりました。即日退職扱いとし、退職の手続きを進めている最中、その元社員が加入した合同労組(ユニオン)から連絡があり、団体交渉の申入れがありました。

実際には、入社してみて想像していた業務とは違った等、多くの不満があったようですが、小さな会社ですから異動もできず、うまくやれない人を戻すことはできません。

団体交渉と事務折衝で、少額の解決金による問題解決を実現

まとめ 団体交渉・労働組合対応を弁護士に依頼するメリット

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所を経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を開業。
企業の労働問題に豊富な経験を有する。

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相談に至った経緯

労働組合に加入し、団体交渉を申し立ててきた元社員Xは、まだ入社1ヶ月で、試用期間中でした。これからの活躍が期待できる人材と思って厳しく指導をしていましたが、仕事に嫌気が指したのか、社長の指示に従わなくなりました。

社長を含めて社員5名と小規模な会社で、社長と一緒に仕事をすることが多く、指示が厳しかったり、残業が当たり前のように続いていたりといったことから、Xの態度は日に日に悪くなり、社長と言い争いをすることが多くなっていました。

社長としても「試用期間の訓練も佳境に差し掛かり、本格的に仕事を覚えてもらおうと思っていた矢先」の唐突な退職に驚いていたところでした。Xから「一身上の都合」との連絡もあったため、自己都合退職として処理していましたが、Xの加入した合同労組(ユニオン)からは、「社長が辞めさせたも同然だ」、「ハラスメントであり、解雇に等しい」との責任追及を受けていました。

会社側では、残念ではあるが円満退社だと考えていたところが、労働組合から団体交渉申入書が届き、そうではなかったことが判明しました。

弁護士による対応と解決

団体交渉前の準備

一旦は自主退職を申出てきた社員でも、退職後に、労使トラブルの原因となることがあります。現代ではネット上に多くの情報が氾濫しており、退職後でも、請求できる残業代等があることを知り、労働組合に駆け込まれてしまうことがあります。

本件で、団体交渉申入書に記載された要求は次のとおりでした。

  • 就業規則、36協定、タイムカードの写しを開示すること
  • 未払残業代を支払うこと

本件のような小規模の会社の場合、残念ながら残業代対策が万全ではないことがあります。このような場合、退職した社員からでも、残業代請求の時効(2021年現在、3年間)を超えない範囲において請求を受けてしまいます。

今回のケースで、依頼を受けてから弁護士がヒアリングを行った結果、Xの試用期間中の訓練は社長が担当しており、社長が激務であったことに付き合わなければならず、昼休憩もとれない状態となっていたことが明らかになりました。

第1回の団体交渉

第1回の団体交渉には弁護士が同席しました。
団体交渉の席上で、労働組合から「残業代を支払え」、「残業代を払わないブラック企業は最低だ」と罵声がとびました。

事前準備において、一定程度の未払残業代が生じていることは確認できていたため、必要資料の開示とともに会社側で算定した金額を提示しました。

本事案では、次のような事情から、紛争が激化することは避けるべきケースといえました。

  • 既に退職した社員であり、退職の有効性については争いとならないこと
  • 勤務していた期間が短く、未払残業代が発生するとしても少額にとどまること
  • 未払残業代が発生すること自体には、労使ともに争いがないこと

したがって、第1回の団体交渉の結果、争点は「休憩がとれなかったこと」にあること、その分の残業代を労使ともに計算し、合意した金額を支払って解決すること、といった方向性で合意ができました。

事務折衝

第1回の団体交渉で、大枠の解決方針が定まったことから、これ以上の団体交渉の必要がなくなりました。そのため、今後は労使ともに残業代の計算結果を持ち寄り、事務折衝にて解決することとなりました。

休憩時間について、全くとれなかったわけではないものの、実際に休憩時間も惜しんで必死に働いていた日があったことについては会社側も認めるしかない状況でした。

その結果、労働組合側では、全ての休憩時間をとれなかったことを前提に15万円の残業代請求をしてきたところ、休憩をとれた日もあったことを反論し、結果、15万円の解決金を支払うことで合意に至りました。労使の主張にそれほど大きな乖離がなかったことから、団体交渉を再開することなく、事務折衝にて合意書を締結して終了しました。

弁護士のアドバイス

今回のケースは、未払残業代請求が団体交渉で争われた事案です。残業代請求は、たとえ社員が自主退職した後であっても争いの火種となることがあります。

残業代請求されてしまわないためには、日頃からの正しい労務管理が必須です。何も対策していない場合、長時間労働させていたにもかかわらず残業代を払っていなければ、団体交渉等の紛争で、残業代を支払わなければならなくなってしまいます。

今回のケースでは、休憩時間以外には残業代がしっかりと支払われていたこと、勤務していた期間が短かったことなどが功を奏して、少額の解決金で終了させることができました。

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