本解説では、労働審判を申し立てられた会社側で、その対応を依頼するときにかかる労働審判の弁護士費用の目安を解説します。労働審判を弁護士に依頼すると多くのメリットがありますが、唯一のデメリットは弁護士費用がかかる点です。
労働審判を会社側で依頼するときにかかる弁護士費用の目安は、およそ60万円〜100万円程度です(※根拠)。本解説では、まずは労働審判で会社側にかかる負担について説明した上で、当事務所の例をご説明いたします。
先に当事務所の費用をくわしく知りたい方は、「まとめ丨当事務所の弁護士費用」をご参照ください。
当事務所の費用は定額制の手数料方式とし、あらかじめ見通しをつけやすいようにしました。追加費用はかからないためご安心ください。また、初回の法律相談にて、親身に事情聴取し、最適な解決方針を提案することで、弁護士費用を超えるメリットを提案するよう心がけています。依頼いただくにあたり弁護士費用倒れに終わらないよう、不明点・疑問点があれば納得いくまでお聞きください。
なお、労働審判への対応について深く知りたい方は、次のまとめ解説をご覧ください。
まとめ 労働審判の会社側の対応を弁護士に依頼するメリットと、手続き・解決の流れ
↓↓ 動画解説(約9分) ↓↓
労働審判の弁護士費用の目安(会社側・企業側)丨60万円〜100万円
労働審判の弁護士費用の目安(会社側・企業側)は、およそ60万円〜100万円が相場です。
以下で、根拠を説明します。
「中小企業のための弁護士報酬目安」(2009年、日本弁護士連合会)によれば、労働審判と類似の仮処分手続きで会社の代理人となる時(顧問契約のない時)、
- 着手金
30万円程度(1位、46.1%)、50万円程度(2位、18.8%) - 報酬金
50万円程度(1位、33.2%)、30万円程度(2位、25.0%)
との回答があります(同統計で、約7割の弁護士が「労働審判と仮処分手続きとで弁護士費用は異ならない」と回答しました)。以上のことは、労働審判を会社側で依頼するときかかる費用の目安は、60万円〜100万円と考える根拠となります。
(なお、あくまで仮設事例への回答であり、得られた結果の有利・不利によりかかる費用が増減します)。
一方、弁護サービスが進化した現在、企業側で労働審判の依頼を受ける弁護士は、次章で解説する定額制の手数料方式を採用することが多いです。その理由は主に次の2点です。
- 企業は、将来の出費について予測可能な上限を要することが多いこと
- 労働者保護の観点から、過大で不当な請求を受けるとき、経済的利益が大きくなりすぎること
定額制の手数料方式を採用するときも、総額は60万円〜100万円程度となるのが通例です。
なお、かつては日弁連報酬基準が存在し、弁護士費用には基準がありましたが、平成16年4月より廃止され、現在では自由化されています。ただし、現在も多くの弁護士が、旧基準を参考に弁護士費用を決定しています。
労働審判の弁護士費用の決め方
労働審判の弁護士費用の決め方には、大きく分けて、次の3種類の方法があります。
そこで次に、弁護士費用の決め方について、わかりやすく解説します。
なお、決定方法に優劣はありませんが、弁護士費用についてどのような決め方をしているかで、各弁護士・法律事務所が、企業側の労働審判対応を受任するにあたっての考え方を知ることができます。当事務所が企業側の労働問題の解決にかける思いは、次の解説を参考にしてください。
着手金・報酬金方式とは
着手金・報酬金方式は、弁護士費用の決め方でもっとも一般的です。問題解決によって一定の経済的利益が見込めるとき、その経済的利益に応じた一定の割合を弁護士費用として定めます。
着手金は、依頼事件に着手する際に発生する弁護士費用、報酬金は依頼事件が終了した際に発生する弁護士費用です。
着手金・報酬金方式を採用する多くの事務所は、旧日弁連報酬基準を参考に、得られる経済的利益に応じて次のように定めるのが通例です。
経済的利益の額 | 着手金 | 報酬金 |
---|---|---|
300万円以下 | 8% | 16% |
300万円を超え3000万円以下 | 5%+9万円 | 10%+18万円 |
3000万円を超え3億円以下 | 3%+69万円 | 6%+128万円 |
3億円を超える場合 | 2%+369万円 | 4%+738万円 |
着手金・報酬金方式のメリットは、結果に応じた費用であるため経済的合理性を損なわない点です。しかし、次のデメリットが大きいため、企業側で労働審判の対応をする際の弁護士費用としてはあまり採用されません。
- 労働者側から過大、不当な請求があったとき、弁護士費用が高額になるおそれ
- 業務量や事案の難易によって増減することが多く、総額がわかりづらい
- 不当解雇に関する争い等、経済的利益を算定しづらい事案に対応しづらい
手数料方式とは
手数料方式は、固定額の手数料をいただく弁護士費用の決め方です。
手数料方式も、最初に一括でもらう場合と、事件の着手時と終了時にもらう場合とがありますが、重要なポイントは「総額が固定されている」という点です。
業務量や事案の難易度等にもよりますが、手数料方式でも、前章で解説した60万円〜100万円程度が、労働審判を会社側で対応する際の弁護士費用の目安となります。なお、交渉段階から依頼を受けたときは、労働審判にかかる費用は一定の割引をされるのが通例です。
タイムチャージ方式とは
タイムチャージ方式は、労働審判対応をするにあたり、業務遂行にかかった時間に、各弁護士の時間単価を乗じて弁護士費用を決める方法です。1時間あたりのタイムチャージは、各弁護士の経験等によって3万円〜7万円程度が通例です。
労働審判を会社側で対応するとき、判例調査・文献調査が多くなったり、移動時間がかかったり等の事情から、タイムチャージだと弁護士費用が高額化してしまうおそれがあります。なお、労働問題に関する知識、経験が豊富にあれば、基本的な知識やノウハウは既に習得済みであることから、タイムチャージを実際の業務時間程度に抑えることができます。
その他にかかる費用(実費・日当等)
ここまで解説してきた着手金・報酬金、手数料、タイムチャージといった主要な費用に加えて、その他に付随的にかかる費用についても説明しておきます。労働審判を会社側で対応するにあたり、その他に実費・日当がかかるのが通例です。
実費
労働審判に対応する際にかかる実費は、依頼者負担とするのが通常です。なお、実費は、弁護士に依頼せず自身で対応する際にも当然かかります。
労働審判対応にかかる実費は、次のとおりです。
- 交通費
労働審判への出頭につき、弁護士が要する交通費 - 郵送代
労働審判に関する書類等を裁判所へ送付する際の郵送費 - 印紙代(申立手数料)
労働審判を申し立てる際に労働者側が支払うが、敗訴した場合には会社側負担となるケースあり
労働審判の申立手数料は、請求額によって決まるが、訴訟の半額程度とされる(手数料額早見表)
実費はさほど高額となることはありません。当事務所の例でも、1万円〜2万円程度が通常です。
日当
労働審判の期日に弁護士が出廷するとき、日当が発生することがあります(なお、遠方の労働審判の場合には、出張費・宿泊費等がかかることがある)。
労働審判は、原則として3回以内の期日で審理を終結することとされているため、日当の上限をあらかじめ予測しておくことができます。
なお、「日当がかかってしまうから1回の期日で終結を目指そう」等と、弁護士費用が障壁となって方針に影響を及ぼしてしまうことはおすすめできません。細かな費用を節約するあまり、本質的な解決で大きな損をしてしまわないよう十分注意してください。
弁護士費用を検討する際の注意点
最後に、会社側の立場で労働審判対応を依頼するとき、弁護士費用を検討する際に注意しておいてほしいポイントを解説します。
事前に十分な説明を受ける
まず、弁護士費用について事前に十分な説明を受けることが重要です。
前章で解説したとおり、現在、弁護士費用は自由化されており、弁護士・法律事務所によって費用の決め方が異なります。そのため、結局総額でいくらかかるのか、事前に十分な説明を受けておかなければ、他事務所との費用比較をすることができません。中には「当初かかる費用は安価だが、結局総額では高かった」という例も残念ながら存在します。
すぐには依頼を決められないとき、見積書を提示してもらい、持ち帰って社内で検討することも有効な方法です。労働審判を申し立てられてしまったとき、会社側では準備の時間的余裕がなく、早急な相談が必須ですが、依頼時の検討に時間をかけることは構いません。
解決の見通しを踏まえた合理性があるか
次に、弁護士費用を比較するにあたり、解決の見通しを踏まえた合理性があるかどうかを検討することが重要です。
いわゆる「安かろう悪かろう」では、弁護士費用が安くても、解決全体を通してみれば、結果的に損をしてしまうこととなりかねません。弁護士費用の提案は、目指す解決方針をある程度見通すことができて初めて決めることができます。この点で、同種の労働問題、労働審判対応について、豊富な解決実績を持っていることが、結果的にリーズナブルな弁護士費用の提案につながります。
特に、労働審判を解決するときに、調停成立とするのか、それとも調停不成立として審判を求めるかの判断は、弁護士費用に大きく影響します。審判を下してもらって、労働者側から異議申立てされ、訴訟に移行するときには追加費用が発生することが多いため、訴訟に移行したときの勝算がどの程度見込めるかをきちんと理解して判断しなければならないからです。
対面で相談して相性チェックする
労働問題では一般的に、労働者の保護が強いことが多く、紛争化する前から顧問弁護士を依頼する等しっかりと準備してきた場合でもない限り、会社側に不利な状況からのスタートとなる傾向にあります。そのため、労働審判の準備をする際には、弁護士は会社にとって耳の痛い話もしなければなりません。
この点で、労働問題では、一緒にサポートしてくれる弁護士との相性も大切になってきます。ただでさえ耳障りな話なのに、「嫌いな弁護士から説教されている」という気分で聞いているのでは、良い解決は望めません。
弁護士費用だけで比較することなく、弁護士の能力・経験や人柄・相性等を踏まえて決定しなければならないことから、実際に初回の相談で弁護士と対面で話し、疑問点・不明点を確認しながら進めることが大切です。
まとめ丨当事務所の弁護士費用
当事務所では、企業側の労働問題の解決を得意としています。当事務所で、会社側の労働審判をお任せいただくときかかる弁護士費用は、次のとおりです。
着手金 | 30万円 |
---|---|
報酬金 | 40万円 |
企業側の労働審判対応について、当事務所の弁護士費用に関する考え方には、次の特徴があります。
- 定額制
企業側の労働問題では、労働者保護が強いと、実際に認められるより高額な請求をされてしまいます。そのため、着手金・報酬金方式で弁護士費用を定めると高額になりすぎるため、費用の総額を予測しやすいよう、定額制の手数料方式を採用しています。 - 合理的
企業側の労働審判を多く取り扱っており、解決事例とノウハウの蓄積があることから、他事務所よりも安価な弁護士費用を提案できます。 - 追加費用なし
労働審判の解決時、得られた経済的利益に応じた追加費用はかかりません。前述のとおり、労働者側からの過大で不当な請求があるとき、得られた経済的利益が大きくなりすぎるおそれがあるためです。 - 顧問割引あり
労働審判対応の依頼とともに顧問弁護士契約をいただける場合には、着手金について顧問割引が適用されます。