残業時間の適切な端数処理、未払残業代の正しい計算│セブンイレブンが違法な切捨処理?

コンビニチェーン「セブンイレブン」本社が、独自の勤怠管理システムを利用して、労働者の残業時間を不当に切り捨て処理していたことが、参議院予算委員会において日本共産党辰巳孝太郎議員によって告発されました。

労働時間を適切な方法で把握、管理し、算出された残業代を支払わない場合には、後になって労働者から労働審判、訴訟等で争われた場合に、高額の残業代支払を義務付けられるおそれがあります。

労働時間の把握義務

会社には、労働者の実労働時間を適切に把握する義務があります。その内容は、始業時刻、終業時刻の確認と記録が主であり、その方法については、厚労省の基準によって、適切な方法は次の2つと定められています。

  1. 使用者が自ら現認すること
  2. タイムカード等の客観的記録によること

切り捨て処理の適法性・妥当性

労働時間の切り捨て、切り上げ処理、四捨五入等について、労働基準法上には規定がないため、実労働時間の細かい処理について問題となります。

原則1分単位の労働時間を記録する

労働基準法上に切り捨て、切り上げを許す規定がない以上、原則として、1分単位で実労働時間を把握して残業代算出等を行うのが原則です。

諸報道によれば、セブンイレブンの勤怠管理システムでは、システム上自動的に、15分未満の実労働時間を切り捨て処理して記録するよう設計されていたとのことです。

自動処理でなくとも、次の処理は違法と評価され、違法な端数処理が長期間続く場合には、合計すると相当時間分の残業代支払が義務付けられるおそれがあります。

  • 労働時間の30分未満の端数を一律にカットする。
  • 労働時間の端数を1日の労働時間ごとに処理するルールを設定する。
  • 遅刻をした場合には一律30分労働時間を減らすこととしている。

実労働時間を切り捨て処理することは、労働基準法の原則に反して違法であり、支払うべき賃金が未払いとなっているとして「賃金全額払いの原則」に違反することとなります。

許される労働時間の端数処理

とはいえ、端数処理に一定のルールを設けなければ、1か月に1分でも超過労働がある場合には残業代を再計算しなければならないこととなり、妥当性を欠きます。

事務処理を簡素化するという会社のメリットから、一定の端数処理を行うことが実務上許可されています。

  • 1か月の時間外労働・休日労働・深夜労働時間を通算して、30分未満の労働時間を切り捨て、30分以上の端数を1時間に切り上げて計算すること
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  • 1時間当たりの賃金額及び割増賃金額の1円未満の端数を四捨五入すること
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  • 1か月における割増賃金の総額の1円未満の端数を四捨五入すること
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  • 1か月の賃金支払額に生じた100円未満の端数を、50円未満は切り捨て、50円以上は切り上げて計算すること
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  • 1か月の賃金支払額に生じた1000円未満の端数を翌月に繰り越して支払うこと
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これらの端数処理は、厚生労働省の公表する通達(基発第150号)に示され、行政実務において承認されています。

ただ、この端数処理は厚労省の認める文言通りに適切に行わなければならず、次の処理は、この基準を誤解したことによる違法なものと評価される可能性があります。

  • 1日単位で、30分未満の端数を四捨五入する
  • 総労働時間を通算して30分未満の端数を四捨五入する。

まとめ

したがって、労働基準法及び厚生労働省の通達から乖離した不適切な端数処理を長期間にわたり継続していた場合、1日あたりの端数カット時間数は短時間であったとしても、「塵も積もれば山となる」方式に残業代の未払い額が蓄積されていきます。

残業代(割増賃金)の時効は2年間ですので、2年間分の残業代の合計額となると、相当な高額になるおそれがあります。その上、全社的に同じ方式で計算していたとすれば、他社員にも波及しかねません。

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