固定残業代制度手当残業代廃止ブラック企業労働問題弁護士東京会社側

固定残業代制度を導入している会社は、昨今の裁判例、行政の流れに従えば、ブラック企業との評価を受けないためにも、固定残業代制度を廃止する方向で検討すべきタイミングが来ているといえます。

今でもなお、固定残業代制度には、様々なメリットがあるのは確かですが、会社が労働者に支払う残業代の総額を減らす役割は、固定残業代制度にはありません。

むしろ、固定残業代制度が無効とされることとなると、逆に労働者に対して支払わなければならない残業代が増額される可能性すらあります。

その上、現在では、固定残業代制度を支払うことによって労働者に支払う残業代を違法に減額しようとしているブラック企業の実態が明らかになったことから、固定残業代制度を導入しているという事実だけで、ブラック企業であるかのようなイメージを持たれかねません。

今回は、会社が固定残業代制度を廃止すべき最近の流れについて解説します。

適切な方法によって残業代対策を行いたい会社様は、企業の労働問題に強い弁護士へご相談ください。

雇用促進法の指針による固定残業代明示の義務化

平成27年10月に施行された若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)にしたがって厚生労働省より出された指針(「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」)により、固定残業代制度を利用することによって不当に有利な扱いを受けようとするブラック企業の手口は、採用段階で封じられることとなりました。

すなわち、求人企業は、固定残業代制度に関する情報の明示を義務付けられたためです。これによって、固定残業代制度を導入することによって固定残業代以上の残業代の支払いを逃れようとするブラック企業に対して、求人段階から排除されることとなります。

指針の概要は、次の通りです。

第二 事業主等が青少年の募集及び採用に当たって講ずべき措置
一 労働関係法令等の遵守
(一) 募集に当たって遵守すべき事項
へ  青少年が応募する可能性のある募集又は求人について、一定時間分の時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する割増賃金を定額で支払うこととする労働契約を締結する仕組みを採用する場合は、名称のいかんにかかわらず、一定時間分の時間外労働、休日労働及び深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金(以下このヘにおいて「固定残業代」という。)に係る計算方法(固定残業代の算定の基礎として設定する労働時間数(以下このヘにおいて「固定残業時間」という。)及び金額を明らかにするものに限る。)、固定残業代を除外した基本給の額、固定残業時間を超える時間外労働、休日労働及び深夜労働分についての割増賃金を追加で支払うこと等を明示すること。

なぜこのように求人の際に固定残業代を明示することを義務付けることとなったかというと、求人段階で一定の残業代を賃金に含み、賃金を高く見えるよう見せかけて求職者を誘い、好待遇を保証するかのように誤解させる手口が横行したためです。

すなわち、同じ基本給であったとしても、固定残業代を導入せずに労働基準法に従った残業代を支払う企業と、固定残業代を導入してそれ以上の残業代を支払わないブラック企業では、実際には後者のブラック企業の取り扱いは違法であるにもかかわらず、後者の方が求人票上は好待遇に見えてしまっていたからです。

この指針を受け、ハローワークの求人では、固定残業代制度を導入している場合には、明示を指せる方針となりました。

以上のことから、固定残業代制度を導入することは違法ではないものの、残業代を実際に働いた時間よりも少なく支払おうとする目的であれば違法であり、また、この意図を隠して求人したとすれば、厚労省の指針に反し、ブラック企業であるとの評価を免れません。

ブラック企業が採用している制度であること

固定残業代制度は、労働法に違反して労働者を使い捨てるブラック企業に典型的な制度です。

ブラック企業では、労働者をできる限り低賃金で酷使する必要があることから、サービス残業を頻発させるわけですが、この際、残業をさせるにもかかわらず一切残業代を支払わないというのでは、労働者も権利の侵害甚だしいとして労働審判や団体交渉によって争いを起こすわけです。

これに対して、固定残業代制度で一定の残業代を与えておけば、それ以上に残業代を支払わなくても争ってくる労働者が少なく、また、労働法への理解に乏しければ、「固定残業代制度の場合、それ以上の残業代を請求することはできない。」と誤解してくれることを期待できるためです。

したがって、ブラック企業では、このように故意に残業代を逃れる目的で固定残業代制度を導入することも少なくないわけですが、固定残業代制度の導入方法が適切でなければ、ブラック企業と同列に見られ、会社の評判が失墜するとしても仕方ありません。

まとめ

以上の通り、固定残業代制度は、割増賃金の算出をする手間が省けるとか、労働者のダラダラ残業の防止につながるといった一定のメリットはあるものの、これに比して余りあるほどの大きなデメリットがあります。

これらのメリットは、固定残業代制度以外の方法によっても実現できる一方で、固定残業代制度を導入することは、よほど慎重に順法精神をもって行わない限り、ブラック企業と同視されかねない危険な行為です。

適切な残業代の支払い方法と残業代減額を検討されている会社様は、企業の労働問題に強い弁護士へご相談ください。

労働問題・企業法務のお悩みは、弁護士へご相談下さい!

労働審判、団体交渉、就業規則、問題社員への対応など、使用者側の労働問題は、経験とノウハウが重要な、非常に難しい法律分野です。

会社を経営していくにあたり、労働者との交渉は避けられませんが、一度トラブルとなれば、致命的ダメージとなるケースもあります。弁護士に頼らずに社長自身で解決するとなると、莫大な時間とエネルギーが必要です。

労働問題に特化した解決実績の豊富な弁護士が、労働法を使って会社を守り、継続的に発展していく方法について、詳しく解説いたします。