残業代未払い労基署是正勧告対応方法東京労働問題会社側弁護士

従業員を残業させた場合には、適切な残業代を支払う必要があり、残業代を支払わずにサービス残業をさせることは、労働基準法違反となります。

未払の残業代がある場合には、従業員側から労働審判、団体交渉などの方法で残業代請求を受けることがあり、この場合には、敗訴すれば、労働者に対して未払いの残業代を支払わなければなりません。

他方で、残業代の未払いは労働基準法違反であり、労働基準法を会社に対して遵守させるために検査、監督の強い権限を持っている労働基準監督署もまた、会社の未払い残業代を調査し、未払い残業代を従業員に対して支払うよう命じてくることがあります。

突然労働基準監督署から連絡があったり、突然の訪問で検査を受けたりすると、初めての経験だと焦って冷静な対応ができない場合がありますので、専門家によるアドバイスが必要不可欠です。

特に、最近では長時間労働による健康被害、メンタルヘルス、高額の残業代に未払いなどが社会問題化しており、ワタミ、大庄、ドン・キホーテ、ABCマートなど、様々な会社が話題に上ったことからも分かる通り、労基署は積極的に会社に対して立入検査を行い、指導・勧告をする体制を整備しており、会社側でも慎重な対応が必要です。

今回は、残業代未払を理由として労基署から立入検査、是正勧告を受けた場合の、会社側の適切な対処方法を解説します。

労基署からの連絡、訪問を受けた場合には、早急に企業側の労働問題に強い弁護士へご相談ください。

労基署の是正勧告の怖さ

経営が厳しくなると、従業員の残業代が人件費を圧迫し、残業代を支払わずに労働力だけを搾取する、サービス残業の魔力に取りつかれる会社も少なくありません。ブラック企業の中には、意図的に残業代を未払としている会社もあれば、労働法の知識がなく、残業代を支払わなくても場合に該当すると考えている会社もありますが、適切な制度設計を省略して残業代を支払わなければ、潜在的には未払い残業代が累積していくこととなります。

不景気で会社の経営がどれほど厳しいとはいえ、労働者の働いた分の残業代は支払わなければなりません。

残業代未払が労基署に発覚して是正勧告が出されると、これに従った是正をし、未払いの残業代を従業員に対して支払わなければならないこととなります。是正勧告に違反した状態を放置しておけば、残業代未払いの場合には、最終的には書類送検されて刑事罰が科せられるおそれがあります。

労働基準法は、労働者保護のための法律であり、その実効性の確保の観点から、違反行為に対しては刑事罰が設けられています。特に、賃金未払い、残業代未払い、死亡事故については、厳しい労基署の対応が予想されます。

労基署の是正勧告とは?

是正勧告とは、会社の労働基準法違反に対して労基署が提出する警告書のことを意味します。会社は、その経営を適切に行うためには、労働基準法を遵守しなければなりません。

労働基準法は、雇用関係における強行法規ですから、これに違反する合意を労使間で交わしたとしても、労働基準法違反となり、労基署から是正勧告を受けるおそれがあります。

労基署の行う是正勧告は、法的には「行政指導」の性質を有することから、必ずしも強制力のあるものではないものの、是正勧告に従わずに労基法違反の状態を継続すれば、書類送検され、労基法違反を理由とする刑事罰を科せられる可能性があります。

そのような意味で、労基署の出す是正勧告は、書類送検の手前で行う、会社の労基法違反に対する事前の警告なのです。

是正勧告に従うと、企業規模、従業員数によっては数億円、数十億円といった高額の未払い残業代を支払わなければならないケースもあり、労基署との交渉対応を慎重に行う必要があります。

労基署の是正勧告に対応する際のポイント

万が一、あなたの会社が、残業代の未払いを理由に労基署の是正勧告を受けてしまったら、対応方法を慎重に行わなければ、高額の未払い残業代支払を命じられるおそれがあり、また、放置しておけば刑事罰を科せられるおそれがあることから、対応方法を慎重に検討すべきであることは十分理解頂けたのではないでしょうか。

ここでは、労基署から、残業代未払いを理由に是正勧告を受ける際の、注意すべきポイントについて解説します。

残業代減額の根拠を主張・立証する

未払い残業代とは、ある程度機械的な計算によって、請求額が判明してしまうものです。したがって、労基署の調査が進むにつれて、労基署が会社の資料、従業員の残業時間に関する記録などを入手してしまうと、あとは機械的な計算によって未払い残業代の額が決定し、是正勧告によって支払を命じられるという流れになります。

一方で、会社側で残業代を支払っていなかった理由として、正当な理由となるものも多く考えられますが、これらの事情は、以上の資料に明確に記載されていない限りは、労基署は、会社からの主張がなければ考慮してくれません。会社として、残業代を支払っていなかった理由として考えている主張があるのであれば、労基署に主張しなければなりません。

ただし、会社が主張すべき残業代減額の根拠を正確に示すためには、労働法と裁判例に対する正しい理解が必要です。労働法、裁判例から認められないような自分勝手な主張を繰り返すようでは、ますます労基署の心証(イメージ)は悪くなり、厳しい対応が予想されます。

例えば、労基署に提出した資料からはわかってもらえない会社側の主張として次のものが考えられます。

残業代を減額する会社側の主張
  • タイムカードの始業時刻の打刻のあと、朝食とコーヒーをとる時間があった。
  • タイムカードの終業時刻の打刻より前に、夕食休憩をはさんでいた。
  • 適宜休憩を自由にとりながら作業してよい、自由な職場環境であった。

ただし、会社側に、従業員の残業時間を把握する義務がありますから、「タイムカードが労働時間の実態と異なるので、実際の労働時間はわからない。」というような無責任な主張はお勧めできません。

できれば、労基署の監督官と対応する際に、企業側の労働問題に強い弁護士の同席を求めると、有利に議論を主導することが可能です。

労基署の監督官に警察権限があることに注意

労基署の監督官には、行政上の権限と、司法警察員としての権限があります。このうち、行政上の権限は、調査をしたり、資料の提出を要求したりといったものですが、司法警察員としての権限は、労基法違反について、強制捜査を行ったり、送検を行ったりすることのできる、いわば警察と同等の権限です。

そのため、未払い残業代について、労働基準監督官から是正勧告を受けた場合に、これを無視して是正しないでいると、法令違反の疑いが強いとされ、事業所の捜索、残業代に関係する資料の差押え、検察庁への送検、起訴といった厳しい対応が予想されます。

この場合、残業代の未払いが悪質と判断されると、刑事罰に処せられる可能性もあります。

指定された期限までに是正報告を行う

労基署から、残業代の未払いを理由とした是正勧告を受けると、具体的な期日を指定されて労基法違反状態の是正を求められます。

労基署の監督官の警察権限が非常に強大なものであることから、是正報告は必ず期限を遵守して適切に行いましょう。

仮に、是正勧告の内容に争いがあったり、労基署の事実認定が誤っていて是正勧告に従うつもりがなかったりといった場合であっても、指定された期限までに是正報告書を提出することをお勧めします。

当然、是正勧告の理由が正当であり、会社に労基法違反の事実がある場合には、適切な是正が必要となります。

是正を行うか、また、適切な是正内容に疑問がある場合には、企業側の労働問題に強い弁護士へご相談ください。

まとめ

以上の通り、労基署から労働基準法違反を指摘され、残業代未払いを理由に是正勧告がなされた場合、適切に対応していかなければ、最終的には送検されて刑事罰を受けるという厳しい結果となる可能性があります。

「是正勧告の内容が間違っている。」「是正勧告にそのまま従えば会社がつぶれる。」といったケースですら、労基署からの残業代未払いを理由とした是正勧告をそのまま放置しておくことは最悪の選択肢です。

労基署から残業代未払いを理由に是正勧告を受け、対応に苦慮する場合には、企業側の労働問題に強い弁護士へご相談ください。

労働問題・企業法務のお悩みは、弁護士へご相談下さい!

労働審判、団体交渉、就業規則、問題社員への対応など、使用者側の労働問題は、経験とノウハウが重要な、非常に難しい法律分野です。

会社を経営していくにあたり、労働者との交渉は避けられませんが、一度トラブルとなれば、致命的ダメージとなるケースもあります。弁護士に頼らずに社長自身で解決するとなると、莫大な時間とエネルギーが必要です。

労働問題に特化した解決実績の豊富な弁護士が、労働法を使って会社を守り、継続的に発展していく方法について、詳しく解説いたします。