同一労働同一賃金とは?

用語集

同一労働同一賃金とは、同一の労働を行う労働者に対しては、同一の賃金が支払われることを保証する原則をいいます。

同一労働同一賃金の原則のない場合に、例えば、同一労働であるのに賃金が異なる理由として考えられるものとして、雇用期間の有無、性別、人種、出身地、職種、業務内容、業態、転勤の有無、主たる生計者であるかどうか等、様々な要素が考えられます。

現在の日本の労働法制においては、完全なる同一労働同一賃金が貫徹されているわけではないですが、次の点に注意が必要です。

  • 不当な差別になる労働条件の違いは許されないという規定があります。
  • 一定の労働者を保護する趣旨から、労働条件の区別が許されない場合があります。
  • 全く同一(「均等」)でなくてもよいが、均衡を考慮しなければならない場合があります。

現在の流れでは、「同一労働同一賃金」が、非正規社員を保護して正規社員に近い労働条件を保証しよう、という趣旨で推進されています。

不当な差別の禁止

次のものは、不当な差別であるとして、この事実だけを理由として労働条件を区別することが法律によって明確に禁止されています。

  • 性別(「女性であること」) : 労働基準法4条
  • 国籍 : 労働基準法3条
  • 信条 : 労働基準法3条
  • 社会的身分 : 労働基準法3条

「有期・無期」による区別は「合理性」が重要

会社が労働者に対し、期間の定めの有無によって労働条件を異なるものと設定することについては、労働契約法の次の定めによって、その区別が合理的なものでなければなりません。

労働契約法20条
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

この労働契約法20条は、民事的効力を持つと解釈されており、つまり、労働審判や裁判において、会社の決めた労働条件の区別が「不合理である。」との判断が下った場合には、無期労働者と同様の労働条件であったものとして差額分の損害賠償が認められるということです。

「派遣」による区別は「均衡」が重要

派遣法では、派遣労働者であるか直接雇用であるかによる労働条件の区別は、均衡待遇を確保することが配慮義務であると規定されています。これは、平成27年施行の労働者派遣法の改正によって、「努力義務」から「配慮義務」に引き上げられたものです。

均衡待遇が必要とされるのは、次の労働条件です。

  • 賃金
  • 教育訓練
  • 福利厚生施設の利用

「パート」による区別は努力義務

会社が、パートタイマーであることを理由に正社員との給与格差を設けるなど、パートをその雇用形態によって労働条件を区別する場合、一定の義務が生じます。

パートタイム労働法では、「職務の内容、人材活用の仕組みや運用などが通常の労働者と同一のパートタイム労働者」に限定して、賃金決定を同様のものとすることを努力義務と定めています。

改正前は、これに加えて、期間の定めがないことも要件とされていたため該当者は非常に少ないとされていましたが、パートタイム労働法改正によって、期間の定めがある場合にも均等待遇が必要となりました。

「配慮義務」は、「努力義務」よりも重く「義務」よりも軽いということで、その程度は個別の事情における判断によりますが、少なくとも一定程度の措置が必要となり、均衡待遇が不可能である場合には代替措置の提案が必要となります。

解決しない同一労働同一賃金

以上の通り法律で一定の義務が生じるとされ、パートタイム労働法改正など、同一労働同一賃金の実現に向けて進んでいますが、完全な実現は困難ですし、完全な実現ができたとして、これで労働問題が全て解決可能というものでもありません。

現在の労働法制では、「期間の有無」「派遣という雇用形態」「労働時間が通常の労働者より少ないこと(パートであること)」といった理由での労働条件の区別が一定程度制限されているものの、完全に制限されているわけではありません。

  • 「期間の有無」を理由とする合理的区別は可能
  • 「派遣」を理由とする場合、均衡を考慮すれば均等、完全同一でなくてもよい。
  • パートについて、通常の労働者との一定の差異があれば区別可能

御社が労働条件を決めるにあたり、どのような事情を考慮し、どのような事情を考慮してはならないのかについて、多くの法律が関係する可能性があります。適切な労働条件の設定をし、労働トラブルを未然に防止することが重要です。

【追記】経団連が、同一労働同一賃金の提言を実施

経団連が、政府の検討を進める「同一労働同一賃金」法制に対する提言をまとめたことから、この提言の影響が注目されています。

同一労働同一賃金は、欧米における、既に決まっている仕事の内容に応じた賃金が与えられる「職務給」にそぐうものであって、日本の伝統的な制度にそぐわない可能性があることが示唆されています。

日本では、経験や能力に応じた「職能給」や、年齢や勤続年数に応じた「年功」の伝統があります。したがって、「同一労働同一賃金」をあらゆる部分に徹底していくことには、弊害も指摘されています。

経団連の提言では、次のように意見され、日本の伝統的な給与制度にマッチした法改正を求める形となっています。

職務内容だけでなく、勤務地や職種の変更の可能性などを含めた人材活用の仕方など、様々な要素を総合的に勘案して同一の労働に当たるかどうかを評価することを基本とすべき。

安倍首相の打ち出した「同一労働同一賃金」は、全体の4割ともいわれる非正規社員の活性化にもつながるという意図もありましたが、経団連の指摘を反映すると、非正規社員への均一化は、必ずしも進まない可能性があります。

これに対して不公平感を感じる可能性のある非正規社員に対する賃金制度の丁寧な説明、正社員化や教育訓練の実施の重要性が提言されています。

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