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問題社員対応

解雇する前に、退職届を受け取るための6つの方法と理由

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労働契約(雇用契約)を解消する方法には、辞職、合意退職など、労働者の意思がなければできない方法から、普通解雇、懲戒解雇、雇止めなど、会社の一方的な意思で行うものまであります。

数多くある、労働契約(雇用契約)解消する方法の中でも、まずはじめに検討すべき基本的な方法は「合意退職」です。

一方、会社の経営者から、次のような相談がよくあります。

よくある法律相談


問題社員に対して厳しく対応(解雇)することを他社員(従業員)にも見せ、示しをつけたい。
問題社員に大きな損害を負わせなければ、感情的に納得がいかない。
問題社員によって会社側(企業側)が大きな損害を負ったことを、「解雇」によって理解させたい。

「合意退職」を一切検討することなく、即座に解雇を選んでしまうと、労働者に対して与えるダメージが非常に大きく、労働問題の火種となってしまいがちです。

今回は、会社側(企業側)として、解雇をする前に「合意退職」を実現するために、労働者から退職届を受け取る方法、すなわち、「退職勧奨」の方法について、基本的な考え方を弁護士が解説します。

弁護士
浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、弁護士の浅野です。

会社側(企業側)の立場で、労働問題についてのご相談を受けるとき、最もよくあるご相談が、「問題社員対応」です。

会社側(企業側)の考えからすると、「問題社員」に対してできるだけ厳しく対応したい、解雇したい、というご希望も根強いですが、安易な解雇は、労働者からの責任追及をされるリスクがあります。

「合意退職」が基本!

労働契約の解消方法

労働契約(雇用契約)の、主要な解消方法には、次のとおり、多くのパターンがあります。

ポイント

  • 当然退職
    :労働者の死亡、会社の解散・清算、定年などによる退職
  • 合意退職
    :労働者が退職を申し込み、会社が承諾することによる、労使双方の合意による退職
  • 辞職
    :労働者からの一方的な意思表示による労働契約(雇用契約)の終了
  • 解雇
    :普通解雇・整理解雇・懲戒解雇など、会社側(企業側)の一方的な意思表示による労働契約(雇用契約)の終了
  • 雇止め
    :有期雇用契約の場合に、会社側(企業側)から更新を拒絶すること

この中でも、労使双方の合意による「合意退職」こそが、最も基本的な、労働契約(雇用契約)の終了方法であることについて、説明します。

雇用時は労使の「合意」

労働契約(雇用契約)の成立、すなわち「採用(入社)」は、労使間の合意によって成立します。

そのため、労働契約(雇用契約)を解消するときもまた、労使双方の合意による解約が「原則」であるとお考え下さい。

「合意退職」で労働トラブルを回避!

労働契約(雇用契約)の解消について、労使双方の合意による「合意退職」によることによって、会社側(企業側)としても、労働トラブルを回避することができます。

会社の一方的な意思表示によって、普通解雇・懲戒解雇などの処分を下すと、解雇をした後の労働トラブルを切り抜けるため、多くの時間的・金銭的コストを負うおそれもあります。

「合意退職」以外の方法が労働者に与える損失

「合意退職」以外の契約解消方法、すなわち、会社の一方的な意思表示によって、会社が労働者を強制的に追い出す方法によると、労働者にとっては、非常に大きなダメージを負うことになります。

賃金(給与)を収入源として生計を立てていた労働者にとって、自分ひとりだけでなく、家族の生活の維持すら困難になるおそれもあります。

「解雇」の損失は大きい

解雇をされることにより、労働者は、収入源を失うことになります。解雇によって労働者が負うダメージは、会社側(企業側)が想像する以上に大きいといえます。

会社側(企業側)にとって、問題社員1人を解雇したところで、会社経営に与える影響はそれほど大きくはないでしょうが、労働者にとっては、生活が立ち行かなくなるおそれがあるのです。

解雇によって、労働者が負う損失には、次のようなものがあります。

ポイント

  • 賃金という主要な収入源が失われる
  • 定期的な収入を基礎としていた住宅ローンが払えなくなる
  • 定期的な収入によって計画していた子育て、教育などの家族計画が狂う
  • 会社の寮に居住していた場合、職と共に住居を失う

「長期雇用」ほど損失が大きい

会社が労働者を「解雇」することによって生じる不利益は、「長期雇用」を前提としているほど、大きくなります。

日本の伝統的な大企業では、「長期雇用(終身雇用)」を前提として、新卒から定年まで、1つの会社で働くことを前提として雇用していることがあります。

このようなケースでは、「解雇権濫用法理」によって解雇は厳しく制限されやすいといわれています。その理由こそ、「解雇」による労働者に対して与える損失の大きさなのです。

「解雇」で労働トラブルが激化

生活の糧を失うなどの損失を被り、窮地に陥った労働者は、会社側(企業側)に対して、「解雇無効」を求めて、労働審判、労働訴訟を行わざるを得ません。

労働審判、労働訴訟で、「不当解雇」と主張されたとき、解雇前に徹底して「問題社員対応」を行っていなければ、解雇が違法、無効と判断されるリスクが十分にあります。

解雇前に「退職届」を受け取るための方法

会社側(企業側)が、労働契約(雇用契約)の解消をめぐって労働トラブルを起こさないために、いかに「問題社員」でも、追い詰めすぎないことが重要です。

「問題社員」といえども、普通解雇・懲戒解雇などで大きなダメージを負い、家族の生活が成り立たなくなれば、労働審判・労働訴訟で「不当解雇」を主張してきます。

したがって、労働者の意思表示を得て、「辞職」、「合意退職」といった方法で労働契約(雇用契約)を解消することが重要です。このトラブル回避のための方法を、順に解説します。

なぜ「退職届」が必要?

労働契約(雇用契約)を、労働者の意思表示を得て解約するとき、労働者が「退職の意思表示をしたこと」を、証拠によって証明する必要があります。

口頭での「退職の意思表示」だけでは、あとから、「言った、言わない」のトラブルを招くおそれがあります。

労働者からの「退職の意思表示」があったことを明確にするため、退職届を受け取らなければ、後から、労働者側から、「解雇をされた」と主張されるケースもあります。

解雇理由があっても退職を説得する

裁判所であらそっても「解雇は有効である」と判断されるほどの「解雇理由」の存在する「問題社員」であっても、同様の対応をしてください。

たとえ「解雇理由」の存在する「問題社員」であったとしても、労働トラブルの回避のために、退職届を受領して「合意退職」とするべきです。

この際、裁判所で認められるほどの「解雇理由」がある場合には、あらかじめ「解雇理由」を労働者に対して丁寧に説明しましょう。

「解雇理由書」を説明する

問題社員に対して「退職届」を出すように説得するときは、「解雇理由」を、「解雇理由書」にまとめて、労働者に手渡すようにしてください。

その上で、「退職の意思表示」をしない場合には「解雇理由書」のとおりに解雇となることを伝え、「退職の意思表示」をする場合には、解雇はしないことを伝えます。

「解雇理由書」を作成し、労働者に対して手渡すことには、次のような効果が期待できます。

ポイント

  • 問題社員に対して、自身の問題点を理解させ、自主的に退職するよう促すメリット
  • 問題社員が弁護士に相談した際、弁護士から退職したほうがよい旨のアドバイスをしてもらえるメリット
  • 問題社員が労働組合に相談した際、労働組合が常識的な対応をしてくれるメリット

注意ポイント

以上のことは、「解雇理由」がきちんと存在する問題社員のケースでの、解雇前の退職届のとり方についての説明です。

これに対して、「解雇理由」が存在しないにもかかわらず、「退職しないと解雇になる」と伝えて退職をうながすことは、違法です。

違法な方法によって退職を強要したとしても、受け取った退職届自体が無効となるおそれがあります。

期限を示し、退職届を受け取る

「解雇理由書」などの書面によって、問題点をしっかり説明した上で、しかし一方で、期限を示して、退職届を提出するように伝えます。

このとき、期限を示すことによって、労働者にとっても労働問題の早期解決が期待できます。

解雇後でも退職届を受け取る

労働者が、ここまでの経緯によっても退職届を出してくれない場合には、最後は、会社側(企業側)としては解雇に踏み切らざるを得ません。

しかし、労働トラブルを最後まで回避するためにも、解雇の後であっても、労働者が「やはり退職届を出したい」という気持ちになったら、その退職届を受領すべきです。

ここで、「もう解雇しているから。」と、退職届の受領を拒否すれば、労働トラブルとなる可能性が非常に高くなります。円満退職のほうが、問題化しづらいといえます。

もっと詳しく!

「解雇理由」をしっかり説明して解雇の意思を伝えると、退職をうながされていたときは、「解雇まではされないだろう」と考えていら労働者も、思い返す可能性があります。

その結果、「解雇を撤回してほしい。やはり自主退職したい。」と言ってくることが期待できる場合があります。

同じ労働契約(雇用契約)の解消であれば、労働者の自主的な意思によって退職してもらえるよう、解雇の際にも、「退職届を○日以内に提出すれば、解雇を撤回してもよい。」と伝えておく方法があります。

粘り強く説得する

退職をうながす前に、「解雇理由」を必ず精査し、退職勧奨を拒否された場合には「解雇」を通告できる程度に練り上げておく必要があります。

労働契約の解消という効果が同じであれば、労働者の意思表示によって合意退職、辞職が実現するほうが、労働トラブルを抱えやすい解雇よりも有用です。

労働者としても、いずれにしても会社に在籍し続けることが不可能であれば、解雇よりは自主退職、合意退職の方が将来のダメージが少ないことは明らかです。

裁判所において、労働審判、労働訴訟となっても認められる程度の「解雇理由」があるのであれば、「合意退職」は、労使双方にとってより良い解決です。

特に懲戒解雇は「死刑」に等しい

普通解雇ですら、不利益が大きいですが、懲戒解雇は、労働者に及ぼす不利益は更に大きくなります。

「普通解雇よりも懲戒解雇の方がハードルが高い」ことを理解してください。そのため、懲戒解雇は、普通解雇に比べて、会社に更なる慎重さが求められます。

近時のコンプライアンス重視の風潮により、業務上のミスや不祥事に対して「懲戒解雇」で厳しく対処しようとする会社もありますが、安易な懲戒解雇は危険です。

むしろ、会社側(企業側)が懲戒解雇に期待するメリットは、次のとおり、考え直す必要があるかもしれません。

注意ポイント

懲戒解雇は、労働者の再就職の道を絶つ可能性すらある、非常に厳しい処分です。

ある会社で懲戒解雇されるほどの問題を起こした社員を、雇用したいという会社は皆無であるからです。

「懲戒解雇」でも退職金を必ず「不支給」にはできない

「懲戒解雇」をしたほどの問題を起こした労働者が退職をするときに、発生する「退職金」を減額、不支給とするため「懲戒解雇」を選択する会社があります。

しかし「懲戒解雇」したからといって、必ずしも退職金を「不支給」にできるわけではありません。

就業規則に「懲戒解雇の場合、退職金を支給しない」と書いてあっても、裁判例では、勤続の功労を失うほどの問題行為がない限り、退職金を完全に不支給とすることは認めない傾向にあります。

他社員への示しは「懲戒解雇」でなくてもつけられる

ご相談いただく会社の中には、「懲戒解雇」という制裁を加えなければ、他の従業員への示しがつかない、同じ問題行為を行う社員があらわれる、と考える方もいます。

しかし、他社員への示し、企業秩序を理由として「懲戒解雇」を選択するのは、労働審判、労働訴訟で争われるリスクが大きいと考えられます。

むしろ、会社内の信頼関係がしっかりしていれば、「合意退職」であっても、実質的には「問題行為への制裁」であることは、理解してもらえるはずです。

問題社員対応と解雇は、弁護士にお任せください

いかがだったでしょうか?

今回は、「問題社員を解雇したい」という、会社側(企業側)から弁護士に対してよくある法律相談に対して、解雇以外の方法による解決のポイントを解説しました。

どうしても「解雇」とせざるを得ないケースもありますが、まずは、「解雇をする必要があるのか。」、「解雇ではなく合意退職で解決できないか。」を検討してみてください。

問題社員の解雇は、労働審判、労働訴訟で頻繁に争われる、会社にとって重大な問題です。

問題社員への対応や、解雇を検討している会社は、ぜひ、事前に弁護士まで法律相談ください。

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弁護士法人浅野総合法律事務所(東京都中央区)では、労働問題と企業法務しています。 会社で、常日頃から問題となる労働問題と企業法務に特化することで、会社を経営する社長、人事労務の担当者の目線に立って、親 ...

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まとめ

企業の労働問題解決ナビをご覧いただき、誠にありがとうございます。

問題社員対応は、いつの時代も、会社側(企業側)の大きな悩みとなります。今回の解説では、次のことをご理解いただけます。

解説まとめ


雇用契約の解消方法のパターンと、その中でも「合意退職」を原則とすべき理由
解雇前に、「合意退職」するための会社側(企業側)の具体的な方法
懲戒解雇する際のリスク

会社側(企業側)で、問題社員対応にあたるときは、後々に、労働審判訴訟などで争われた際に、どの程度のリスクを負わなければならないか、予見しながら進める必要があります。

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