求人詐欺ブラック企業対策

2017年度採用の広報活動が開始され、大企業の採用情報が発表されています。また、これ以前からIT企業等の採用情報が多く発表され、既に内定を出し始める企業もあります。

より良い人材を多く確保すべく、求人情報を他社よりも良く見せるため、実際とは異なる労働条件を記載するケースが頻発したことから「求人詐欺」等として話題となりました。

「求人詐欺」を行うブラック企業であるとのレッテルを貼られれば、本年度の求人に失敗することはもちろん、顧客の不買運動、信頼の低下による取引停止、株価下落等、思わぬ不利益を受けるおそれがあり、慎重な対策が必要です。

よくある求人詐欺の例

「求人詐欺」を行う場合、特によくあるケースが、金銭面における労働条件に虚偽の情報を記載するケースです。というのも、求職者が最も興味関心のある事項が、金銭面における労働条件であるためです。

求人詐欺は「ブラック求人」等とも呼称されます。例えば次のような相談事例が報告されています。

  • 求人情報と給与が大幅に違った。
  • 固定残業代が手当として支給され、給与の合計額に含まれることが隠されていた。
  • 残業時間が、面接で聞いた過去の実績と全く違う長時間労働であった。

求人票と雇用契約書の内容が異なる場合

求人票と雇用契約書は全く別物であり、記載された労働条件が異なることもあります。

例えば、求人票を見て面接を行った結果、話し合いの末労働条件を変更して雇用契約書を締結したとしても、全く問題ありません。

しかしながら、そこに「労働者を騙して有利な条件だと誤信させよう。」という悪意があると、「求人詐欺」とのレッテルを貼られることとなります。特に、労働者が最も関心を持つ給与が大幅に違うということとなると、ブラック企業との誹りを免れません。

したがって、まず広報活動を行う時点で、御社の提示する労働条件として原則変更ができないという意識で、広報活動の内容を決定してください。

虚偽の求人には刑事罰あり

虚偽の広報活動、求人を行った場合には、職業安定法によって「6月以下の懲役又は30万円以下の罰金」という刑事罰に処さられることが規定されています。

職業安定法65条
次の各号のいずれかに該当する者は、これを六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
(中略)
八  虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を呈示して、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者

したがって、仮に求人票と雇用契約書とが異なるという場合には、求人票を提出した段階から虚偽の情報を提出する意思があったと評価されないよう、事後的に労働条件が変更されるに至った事情・理由を説明できる準備をし、また、労働者に説明して真意からの同意を得なければなりません。

ただ、逆に、求人票と全く同一の条件でない限り雇用契約を締結できないという規制にしてしまえば、面接の結果労働条件を柔軟に調整するという判断も不可能となり、妥当な解決とはいえません。

ハローワーク求人から締め出されないために

平成27年10月1日より施行された若者雇用促進法(正式名称を「青少年の雇用の促進等に関する法律」という)により、青少年の雇用促進と職場環境・労働条件の向上を目的とした新制度が開始されました。

具体的に導入された制度は次の通りです。

  1. 事業主による職場情報の提供の義務化
  2. 労働関係法令違反の事業主に対する、ハローワークの新卒者向け求人の不受理
  3. 優良な中小企業の認定制度の創設

①、②については平成28年3月1日に施行され、③については平成27年10月1日に施行されました。これにより、故意に虚偽の情報を記載していた場合、求人詐欺行為が発覚しやすくなりましたし、発覚した場合のリスクも大きくなりました。

ハローワークで求人を行っていた会社の皆さんは、求人詐欺行為を行ったり、著しい労働基準法違反を繰り返す場合には、求人が不可能となってしまうおそれがあります。

求人詐欺に成功しても、未来は暗い

仮に、故意に虚偽の情報を記載した求人を行い、労働者を誤信させることによって雇用契約締結まで漕ぎつけたとしても、求人詐欺行為によって雇用した従業員の定着率は非常に低率にとどまることが予想されますから、喜ぶことはできません。

むしろ、雇用契約締結後に求人詐欺が発覚すると、解雇権濫用法理による解雇制限から解雇をすることが困難である反面、求人詐欺について一定の民事上の責任を負わなければならないことが予想され、経済的にもマイナスであるといえます。

万が一、求人詐欺による虚偽の情報の記載時点において、雇用契約が締結されていたと判断されてしまえば、虚偽の情報を前提とした労働条件に変更する必要に迫られます。

まとめ

少子高齢化がますます進行して労働力人口が減少する中、良い人材を安価に雇用したいという動機で、安易に虚偽の情報を記載する求人詐欺を行うことはお勧めできません。

御社が他企業に比べてより良い会社であることを示す方法は、金銭面における有利な条件に限られるものではなく、労働者に働きやすい人事制度作りこそ、魅力的な企業を作るのではないでしょうか。

効果的な人事・労務管理には様々なバリエーションがありますから、労働法の専門家を交え、御社に適した制度構築を進め、御社の魅力を高めるのがよいでしょう。

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