中途採用入社内定注意点会社側労働問題東京弁護士

会社としては、中途採用者を採用する方が、即戦力として活躍してくれる可能性が高いため、中途採用者を重宝しがちです。

基本的に、新卒と中途は、同じ採用でも全く異なった性質のものですが、一般に語られている採用に関する労働法の基礎知識は、どちらかというと新卒採用に関するものに偏っている気がします。というのも、日本は伝統的に新卒一括採用が原則であり、新卒一括採用の正社員を対象として労働法の裁判例や法解釈が作られてきたからです。

これに対し、中途採用の場合には、メリットも大きい反面、一つ間違うと大きなデメリットが生じることとなります。中途採用者を入社させる場合には、新卒一括採用で語られている労働法の解釈とは別の考慮が必要なケースも少なくありません。

中途採用者を入社させる際の会社の適切な労務管理について、きちんとした知識を備えていなければ、折角メリットの多い中途採用者を確保できたと思ったら、事後に労働審判、団体交渉などのトラブルが起こる可能性もあります。紛争に対応するコストを考えると中途採用のメリットが生かしきれないのはもちろん、中途採用者の場合には一般的に給与が高い傾向にあることから、トラブルとなった場合に会社に及ぼす損害もそれだけ多額になりがちです。

今回は、中途採用者の採用、内定、そして入社に伴い、会社が注意すべきポイントをまとめて解説します。

中途採用者の採用を検討している会社様は、企業側の労働問題に強い弁護士へご相談ください。

中途採用にありがちな入社後のトラブル

中途採用にありがちな入社後のトラブルは、労使いずれからも「約束の内容と違う!」という気持ちから起こることがほとんどです。

例えば、次の例です。いずれも、よく相談のあるケースであり、「入社前に相談してくれていたらここまで問題は大きくならなかったのですが。」というアドバイスとなることがほとんどです。そして、多くのケースで、労働審判や団体交渉における解決金は、月額賃金を基準として決定されることが多いことから、新卒社員の労働問題に比べて、解決金が多額となる傾向にあります。

中途採用にありがちなトラブル①

まず、中途採用社員にありがちなトラブルは、入社時の対応を適切に行っていれば回避できたものも少なくありません。特に、能力不足が事後的に発覚したケースについて解説します。

中途採用にありがちなトラブル①
前職で人事部の責任者として、長年労務管理の経験をしてきたと聞いたため、人事部長としてヘッドハンティングしたにもかかわらず、入社後、実は前職では経理の仕事がメインで、人事の仕事は他の従業員や社会保険労務士が行っていたことが判明しました。

そのため、人事部長として在籍させておくわけにはいかず、降格をし、配置転換によって部署異動をさせましたが、有効活用できるポジションがなかったため解雇に踏み切りました。

その後、労働審判を起こされ、多額の解決金を支払う羽目になりました。

この事例の場合、会社の期待する業務、職種の程度が不明確であることが一番の問題です。どの程度の能力を前提としていたかを入社時に明らかにしておくべきですし、その後その能力に不足していると判明した段階で、それ以外の活用先を検討することはむしろ、期待されている能力の内容をますます不明確にしますから止めるべきです。

中途採用にありがちなトラブル②

また、能力不足による場合だけでなく、能力は十分で活用したい従業員についても、その活用できる能力、経験には制限がある場合があります。特に、前職との関係で情報を理由として中途採用した場合には、本当にその情報が適法に利用可能かどうかについて事前に確認が必要です。

中途採用にありがちなトラブル②
ライバル企業の部長クラスの人材が、転職を希望しているという情報を人材紹介会社から得て、すぐに採用をすることが決定しました。

当社としては、ライバル企業には少し差をつけられているところでもあったので、是非ともライバル企業の商品開発に関する内部情報を入手し、追随する商品を製作したいと考えていました。そのため、その社員には、入社してすぐにライバル企業の商品情報をまとめてもらい、また、データとして保有していたすべての情報を当社内の共有フォルダに入れてもらいました。

しかし、その結果できた商品に対して、ライバル企業から、情報を不正に入手して作成したと訴えられ、訴訟で争うこととなってしまいました。

保有している情報が、すべて適切に利用可能であるとは限らず、特に企業秘密については、前職との間で誓約書等を交わしている可能性が高いといえます。中途採用者のメリットは、注意をしなければ、そのままデメリットとして跳ね返ってくるケースも少なくありません。

中途採用者を働かせる会社が注意すべきポイント

ここでは、メリットも大きい中途採用者を有効に活用するため、中途採用者に特有のデメリット、リスクを低下させるために、中途採用者を働かせるにあたって注意すべきポイントを解説します。

中途採用者入社時に一番注意すること

まず、中途採用者の労働問題は、採用時に回避するのが一番です。労働関係は、採用時の雇用契約によって決まりますから、このスタート時点に最も慎重な配慮が必要となります。

すなわち、雇用契約書の締結に最大の注意を払うべきです。雇用契約書を書面で作成するのは当然のこととして、新卒社員の雇用契約書をそのまま使い回ししているようでは、配慮が足りないといわざるを得ません。

重要なことは、役職名によって具体的に地位を特定した上で、会社が期待する職務の内容を具体的かつ詳細に記載することです。この際、仕事の成果、業績によって判断する場合には、具体的な数値も記載します。

その他、重要な役職に就ける中途採用者の入社の際、雇用契約書への記載を検討すべき事項を列挙しておきます。

  • 出張の有無、回数
  • 海外出張の有無、回数
  • 全国転勤の可能性、頻度、期間

以上の事項を適切に定めておくことにより、雇用契約書を見れば、地位を特定して雇用したということが明確になり、雇用契約の内容となっている成果、業績が達成できなかったり、雇用契約の内容となっている能力が不足していた場合には、能力不足を理由として普通解雇できるようになるのです。

健康状態に十分注意すること

中途採用者は、会社の重要な役職につくことも少なくないため、健康状態が新卒社員以上に重要となります。

健康状態と、これを維持する労働者の意思がなければ、どれだけ能力と経験があったとしても、会社に貢献する成果を発揮することは困難です。重要な役職につくということはそれだけストレスも高く、残業時間も長くなりがちです。

労働契約の締結時には、健康診断の実施と共に、過去の病歴を申告させておくべきです。病歴の申告の際には、最近ではメンタルヘルスとなる労働者が年々増加していることに鑑みて、精神的な疾患の病歴についても申告させておきましょう。

なお、健康状態に関する虚偽の事実を告げて入社をした中途採用者に対しては、これが発覚した際には、虚偽の事実を告げたことが発覚した時点で、普通解雇理由となるかどうかを検討しましょう。

営業秘密の持ち出し・競業避止義務に注意すること

中途採用者の場合には、前職でも重要な役職に就任していたり、重要な業務を担当していたりすることが予想できます。

そのため、入社の前に、前職との間で秘密保持義務を負っていたり、競業避止義務を負っていたりしないかを確認しておきます。

というのも、前職の営業秘密を取得することが中途採用の目的であったり、前職と全く同じ業務を行わせることが中途採用の目的であったりする場合には、秘密保持義務、競業避止義務を広範囲で負っていると、そもそも中途採用者を採用した意味がなくなってしまうためです。

まとめ

以上の通り、中途採用者の入社には、中途採用ならではのメリットが非常に大きい反面、注意をしなければデメリットも大きく、下手を打てば、中途採用を行った目的が全く実現できないのはもちろん、多額の解決金を支払うこととなりかねません。

特に、解雇は、労働者の収入を絶つ行為であって、中途採用者の場合には会社に対する期待も高まっていることから、労働審判、団体交渉などで紛争が激化することも大いに考えられます。

中途採用者を採用することを検討している会社様は、企業の労働問題に強い弁護士へ法律相談ください。

労働問題・企業法務のお悩みは、弁護士へご相談下さい!

労働審判、団体交渉、就業規則、問題社員への対応など、使用者側の労働問題は、経験とノウハウが重要な、非常に難しい法律分野です。

会社を経営していくにあたり、労働者との交渉は避けられませんが、一度トラブルとなれば、致命的ダメージとなるケースもあります。弁護士に頼らずに社長自身で解決するとなると、莫大な時間とエネルギーが必要です。

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