雇用契約書の記載事項

雇用契約書作成説明締結
雇用契約書に記載するのは、法定の必要最小限の事項で十分と考えがちです。

しかしながら、労働条件通知書に加え、より詳しい労働条件を記載し、採用前にきちんと労働者に説明しておくことによって、「話が違う」といった事後のトラブルを防止することができます。

就業規則を作成している場合には、細かい部分は就業規則によることとし、雇用契約書と同時に就業規則を渡し、確認してもらうのが効果的でしょう。

雇用契約書や就業規則には、会社としては労働者に知られたくないことも記載してあります。例えば「半年働けば有給休暇がもらえる。」「契約で定めた以上の時間はたらけば残業代がもらえる。」といった具合です。

しかしながら、これらを隠しておくことは、事後にトラブルとなった場合のリスクにしかなりません。

雇用契約書の締結方法

このようにして作成した雇用契約書を、労使間で説明確認の上、締結します。

雇用契約書は2通作成し、2通共に会社、労働者が署名(もしくは記名)、押印した上で、互いに1通ずつ保管します。

これは、労使双方で、雇用契約の内容に争いが生じたときに、お互いに合意の内容を確認できるようにしておくためです。

雇用契約を締結する前の説明は、できる限り丁寧に行うようにしましょう。可能であれば、すべての条項について労働者と一緒に声に出して読み合わせを行った上で、疑問、不安はその場で払しょくしてもらった上で雇用契約を締結するのが最善です。

また、後日、「雇用契約書への署名押印を強要された。」、と労働者側から主張されないよう、熟慮する時間を与えましょう。

労働者が「持ち帰って検討したい。」「家族と相談して決めたい。」と依頼する場合には、これを受け入れ、間違ってもその場で署名押印を強要することのないようにしましょう。

雇用契約書と一緒に締結しておきたい書面

労働者と合意すべき内容は、仕事と賃金に関することだけではありません。雇用した後でのトラブルを防止するため、特殊な誓約をしてほしい場合があります。

秘密保持、競業避止など、特に注意して遵守してほしい事項がある場合には、雇用契約書とは別に、誓約書を締結することが有益です。

また、労働者だけでなく、その家族、親族などとの間で身元保証書を締結することも、後日の労使紛争を円満に解決するために重要です。

誓約書

誓約書とは、労働者に、特に守ってほしいことについて、労働者に約束させるための書面です。

誓約書を締結しなかったとしても、在職中の秘密保持義務など、信義則上当然に義務を負うものもありますが、誓約書という形で署名押印を求めることにより、義務違反に対する抑止力につながります。

会社が誓約を求める内容としては、競業避止義務、秘密保持義務等が一般的でしょう。業種によって、特に遵守してほしい項目があれば、特記するようにしましょう。

就業規則上の懲戒事由と連動させ、誓約書に違反するような秘密保持義務違反、競業避止義務違反を犯した場合には、懲戒処分が可能なように規定すべきです。

なお、秘密保持、競業避止などに関する誓約書は、入社時だけでなく、昇格時や、重要なプロジェクトへの参画時など、重要なタイミングでは、再度個別的な義務を確認する誓約書を締結しておくことをお勧めします。

(参考)入社誓約書

身元保証書

身元保証書とは、社員に責任のある行為について、身元保証人が連帯して責任を負う旨を約束する書面をいいます。

労働者と近しい関係にある親族、家族等が、何か問題のあった場合には連帯して責任を負うことを約束することによって、いざ労使トラブルとなった場合、労働者が紛争を激化させることに対する歯止めとなる効果が期待できます。

ただし、身元保証書の効力については、身元保証法で、最長5年という定めがあるため、その後も身元保証の効果を継続したい場合には、再度締結しなおさなければなりません。期間を定めていない場合は、有効期間は3年とされます。

身元保証人は、原則として2人とし、保証能力がある者を会社で条件を絞って決定します。

また、身元保証書は、労働者による損害の保証だけでなく、メンタルヘルス、うつ病などのトラブルとなった場合の緊急連絡先、緩衝材としての役割をも果たすことが多くあります。

(参考)身元保証書

雇用契約書の保存義務

雇用契約書は、雇入れ、退職に関する書類として、賃金や実労働時間を証明する証拠と同様に、退職から3年間、法律によって会社に保存が義務付けられています。

これは、労使トラブルの原因となりやすい残業代請求権の時効が2年、退職金請求権の時効が5年間とされていることによるものです。

したがって、退職金トラブルとなるおそれのある労働者は、念のため5年間は雇用契約書も保存しておいた方がよいでしょう。

インターネット上の書式を一律に利用しない

インターネット上には、多くの雇用契約書の書式が出回っています。しかしながら、これを安易に流用することはお勧めできません。

例えば、インターネット上の書式には、次のような弊害があります。

雇用形態の種類に即した内容になっていない

インターネット上の雇用契約書は、ごく一般的なものである可能性が高いですが、一方で、会社では、雇用形態を様々に使い分け、労働者をその実態に合った処遇としていかなければなりません。

また、同じ正社員であっても、契約内容は一律でないケースも多いです。

したがって、インターネット上の雇用契約書が、どのような労働条件を前提とした書式であるかを考慮せずに、全社員に使いまわすことはお勧めできません。

最近では、労働力人口の減少、限られた労働力の活用のための女性、高齢者の活用、介護離職の防止などの観点から、ワークライフバランスを考慮すべく、労働時間、就労場所などを一部に限定した「限定正社員」の活用を勧める流れもあり、同じ雇用形態の中でも、雇用契約書の内容は様々に変わります。

就業規則を前提としている(前提としていない)

インターネット上の雇用契約書の中で、非常に簡易な雇用契約書は、別途就業規則を作成し、周知・届出をしていることを前提としている場合があります。この場合には、就業規則にどのような定めがあるかによって、雇用契約書の記載が変わってくる可能性があります。

したがって、就業規則があるかどうか、自社の状況とも合わせて雇用契約書の内容を検討しなければなりません。

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