労働法務ニュース

福島原発の復旧作業に関連して、東電、元請会社である東京エネシス、一次下請会社であるエイブル等に対して、四次下請会社の従業員らが、団体交渉を拒否されたことを理由に、団体交渉拒否の不当労働行為に該当するとして、東京都労働委員会に不当労働行為救済命令申立をしていました。

この団交拒否の争いについて、東京都労働委員会がこの度、平成28年3月30日、元請会社に団体交渉を命じる命令を下しました。

この事案では、元請会社、上位下請の従業員は、原発作業現場で、元請従業員、しかも四次下請会社の従業員に対して、直接指揮監督をしていた上に、苦情を言った従業員を解雇するよう、下請会社に圧力をかけていたというのが労働組合側の主張の理由です。

偽装請負状態にある場合には、実質的に下請会社の従業員の労働条件をコントロールしているのは元請会社になりますから、元請会社と団体交渉ができなければ、団体交渉を行う意味があまり認められないというわけです。

元請会社らの不当動労行為(団体交渉拒否)が認められた理由

元請会社らの不当労働行為(団体交渉拒否)が認定された理由は、元請会社らが団体交渉応諾義務の主体である「使用者」であると認められたということです。

その理由は、元請会社の担当者が、業務上の決定や変更について、直接下請会社の従業員に対して具体的な指示命令をしていたためです。

これに対して、発注元である東京電力は、具体的な指揮監督をしておらず、労働条件に影響を及ぼしてもいないことから、「使用者」にはあたらず労働組合との団体交渉に応じる必要はないとされました。

中間搾取、解雇については使用者性を否定

これに対して、中間搾取や解雇の問題では、元請会社らは「使用者」であるとは認められませんでした。

すなわち、賃金はすべて、直接の雇用主である四次下請会社が支払っているのであって、元請が提示して契約を締結した事実はないとされ、解雇についても元請会社が下請会社の指示をしたとは認定されませんでした。

下請会社の従業員からの団体交渉を受けないために

労働組合は、労働組合法による手厚い保護を受け、弱者の立場にある労働者を集団的に保護するために、会社との間で団体交渉を行うことができる権利を保証されています。

つまり、逆に言うと、労働組合が会社に対して団体交渉を申し入れてきたときには、会社はこれを受けて団体交渉を行わなければいけないということです。この団体交渉を行わなければならない会社を、労働組合法では「使用者」として限定しています。

ただし、「使用者」とは、直接の雇用契約の当事者である会社だけが含まれるのではなく、団体交渉の問題となる労働条件を実質的にコントロールしている今回の件ような場合、直接の雇用契約の当事者でなかったとしても団体交渉を受けなければならないケースが生じます。

そのため、元請、下請関係にある場合には、下請従業員に直接具体的な指示をしてしまえば、偽装請負の状態になり、労働組合法上も、団体交渉を行わなければならないという今回の東京都労働委員会のような判断が下るリスクが高くなります。

したがって、下請会社の従業員から団体交渉申入れを受けないためには、会社だけでなく現場担当者レベルで、偽装請負となるような業務命令を行わないよう周知徹底しておくことが重要です。

まとめ

労働組合の団体交渉権が強く保護されていることから、必ずしも雇用契約の当事者ではなくても、団体交渉を受けなければならない場合があります。

したがって、団体交渉の申入れを受けた際には、「うちの従業員ではないから。」「よく知らない組合からの申入れだから。」といった理由で放置しておくことはお勧めできません。

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