労働法務ニュース

解雇された元従業員女性が、妊娠の事実を会社に伝えた2か月後に通告された解雇について不当解雇であるとして訴えていた訴訟について、平成28年3月22日、東京地裁(千代田区霞が関)が判決を下しました。

判決内容は、この女性に対する解雇を無効とし、解雇期間中の未払い賃金の支払を命ずるものでした。

「マタハラ」(=マタニティ・ハラスメント)という用語が流行し、妊娠を理由とした不利益な処分を行うことが問題視されている昨今において、新たな裁判例が加わったものと見ることができます。

マタハラ防止のために企業がとるべき措置については、こちらの記事を参考にしてください。

マタハラ(マタニティ・ハラスメント)とは

マタハラとは、会社で働く女性が、妊娠・出産・育児という出来事をきっかけとして、社内で嫌がらせを受けるなど労働環境が悪化したり、解雇・異動・減給・降格などの不利益な処分を受けたりすることをいいます。

最高裁においてマタハラが違法となる可能性について言及されたことをきっかけとして有名となり、この判例とその差戻審の判断を受けて男女雇用機会均等法、育児・介護休業法の解釈通達が改正されたことが記憶に新しいかと思います。

この通達改正では主に、どのような行為が妊娠等を理由として行われる不利益取り扱いとなるかを明らかにすると共に、名目上は他の理由で行われた処分であったとしても実際には妊娠等を理由にしている場合にもその処分が違法となる可能性があることに言及しました。

したがって、妊娠等を理由として不利益な処分をすることはもちろん、その他の理由を名目としたとしても実際には妊娠等が理由であるといった場合には、違法となり、その処分が無効となるおそれがあります。

妊娠以外の理由による解雇

今回の判決では、諸報道によれば、妊娠以外の理由を建前として解雇がなされたとのことです。すなわち、その理由としては、「協調性がないこと」「注意指導をしても改善の余地がないこと」「社員としての適格性がないこと」といったものでした。

これらの理由は、それだけとってみれば、程度によっては解雇が有効となる可能性のあるものですが、対象者が直前に妊娠していたという事実が、会社にとっては仇となりました。

妊娠中に解雇をする場合には、その理由付けを他に考えることができたとしても、その内容が合理的な理由かつ社会的に相当なものでなければ、無効となる可能性は通常の場合に比べても高いと言わざるを得ません。

妊娠中の解雇は原則無効

今回の判決では、労働契約法16条違反(解雇権濫用法理)が会社の敗訴した理由となりましたが、労働者側では、男女雇用機会均等法9条違反の主張もしていたようです。

男女雇用機会均等法には、次のような定めがあることから「妊娠中の解雇は原則無効」であるといえ、解雇が有効となる場合はむしろ「例外」であると考えなければなりません。

男女雇用機会均等法9条
1.事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
2.事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。
(中略)
4.妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。
  ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。

したがって、妊娠中の女性を解雇する場合には、妊娠を理由とした解雇でないことを会社側が積極的に証明した場合のみ、例外的に解雇が有効になるに過ぎません。その上、「ないこと」の証明は、いわゆる「悪魔の証明」といわれ、事実上立証が困難です。

まとめ

今回の判決や、本記事の解説からも分かるとおり、妊娠中の女性を解雇することには非常に大きなリスクがあり、有効に解雇することは相当困難であると言わざるを得ません。

妊娠中や出産直後の女性に対して、妊娠・出産・育児等以外の理由によって解雇を決断する場合には、できる限りそれらの出来事が起きる前に早急に決断すべきでしょう。

能力不足、勤務態度不良といった問題社員がいる場合には、労働問題に精通する弁護士に、日常的に相談しながら長期的な視野をもって進めることが重要であるといえます。

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