労働法務ニュース

解雇をされた従業員5名が、日本IBMに対して、解雇予告なく解雇を通告され、更には会社に入れないよう締め出した(いわゆる「ロックアップ解雇」)として争っていた訴訟の判決が、平成28年3月28日、東京地裁(千代田区霞が関)でなされました。

東京地裁の判決内容は、解雇を無効として労働者としての地位を確認し、未払賃金の支払を命ずるものでした。

端的にいうと、会社側の敗訴であったといえます。判決の理由としては、一部の従業員に業績不良があったものの、解雇の合理的な理由となるほどのものではないとしています。今後、日本IBMが控訴を行うかが注目されます。

IBM判決を検討し、ロックアウト解雇がどのような場合に有効となるか、外資系企業における有効な解雇を進める方法について解説します。

ロックアウト解雇とは?

退職勧奨は、「勧奨」の範囲に留まる場合には適法ですが、会社が退職を一方的に強要することとなると、違法な退職強要となります。これを超えて、一方的に雇用契約の解約を通告すると、解雇となります。

「ロックアウト解雇」の場合とは、更に、従業員が会社に来た場合に社屋に入れないよう締め出すことを伴う解雇をいいます。

「ロックアウト」とは、会社が労働者の提供する労務の受領を拒否する行為をいい、労働組合と会社との争いの際に、会社が組合に対して行う強硬措置という意味でよく用いられる用語です。したがって、集団的労使紛争において用いられる「ロックアウト」とは、労務の集団的拒絶を意味します。

今回のロックアウト解雇では、集団的な労務の受領拒絶ではなく、解雇した元従業員の労務を受領拒絶したことを指すもので、会社側としては有効に解雇したと考えるわけですから、その後の労務受領を拒絶することは当然の取扱でしょう。

ロックアウト解雇の違法性、有効性については、こちらの記事をご覧ください。

不当なロックアウト解雇は無効

ロックアウト解雇となると、解雇を通告したその日には、解雇通告の面談を行ったその足で、従業員の私物をすべて回収し、IDカード、貸与パソコン、貸与携帯、名刺などの会社からの貸与品をすべて返還を求め、解雇予告手当を交付して即日解雇とします。

このようなロックアウト解雇のやり方は、解雇が合理的なものであれば、解雇後の措置としては適切なものです。

すなわち、解雇となれば、従業員から貸与品の返還を受け、私物を預かるわけにはいきませんから回収してもらい、即日解雇とすることには問題ありません。また、即日解雇が労働者の重大な責任によるものであれば、解雇予告手当を支払わなくてもよいケースもあります。

しかしながら、日本では解雇権濫用法理によって解雇は制限されています。

労働契約法16条(解雇権濫用法理)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

したがって、いざ解雇が合理的な理由を欠くとして無効となった場合には、ロックアウト解雇という強硬手段によって労働者を一方的に排除したことは、解雇の違法性を高めることとなり、注意が必要です。

外資系企業の労基法違反

IBMはアメリカに本社を有する外資系企業であり、今回問題となった会社はその日本支社である日本IBMでした。

外資系の企業の場合、日本の解雇権濫用法理による解雇制限にあまりなじみがなく、本国と同様、会社の都合によって自由に解雇が可能であると考えている会社もありますが、この考え方はリスクが大きいと言わざるを得ません。

また、解雇に至らないまでも、日常の業務指導、評価の仕方も、日本の伝統的企業や法制度とは異なる点があります。

たとえば、退職勧奨の際には、PIPという業務改善の制度を用いて徹底的に指導教育を行うことが多いですが、このPIP自体が、能力向上・業務改善といった本来の目的ではなく、労働者にストレスとプレッシャーを与えて自主的な退職を促すことを目的としている場合があります。

このようなPIPを利用した事実上の退職強要が違法と評価されるリスクが大きいことは言うまでもありません。

能力不足で有効に解雇をするには

諸報道によれば、IBM判決では、判決の理由で、従業員の能力不足について一部触れている部分があるようです。しかしながら、解雇する程の理由にはならないというのが東京地裁の判断でした。

能力不足を理由とする解雇を有効とするためには、些細な能力不足で即座に解雇することは妥当ではなく、ある程度の時間をかけて指導、教育を行い、その後に解雇を検討することが重要です。これは、次の理由からです。

  • 能力不足が御社の業務にとって致命的であることを明らかにすること
  • 指導・教育をしても改善の余地のない従業員であることを明らかにすること

   
これらの配慮を行わずに即座に行った能力不足を理由とする解雇は、無効となるおそれの非常に大きいものです。特に、新卒社員の場合には、能力があまりなく、教育が必要であることが当然の前提とされていますから、解雇の有効性は非常に厳しく判断されます。

まとめ

今回の判決の背景には、IBMが本社をアメリカに有する外資系企業であり、日本の解雇権濫用法理による解雇制限が、会社内ではあまり重視されていなかった可能性が指摘できます。

解雇権濫用法理のない諸外国出身の外資系企業は、日本に進出して従業員を雇用する際には、日本の解雇制限の法理を十分に意識して人事労務管理を行う必要があります。この点は、日本の労働法務に詳しい専門家の意見を尊重しながら人事労務管理を本国とは別の基準で進めることも検討すべきでしょう。

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