労働法務ニュース

派遣事業主の株式会社YSLソリューションが、IT企業等に対して多重派遣を行っていた件について、神奈川労働局は、平成28年2月26日、労働者派遣法に基づく1か月の事業停止命令と、事業改善命令を行いました。

処分対象の派遣事業者らは、「出向」という契約内容で実質的には派遣を行っていたことから、何重にも派遣が積み重なる、いわゆる「多重派遣」として違法性が認められたということとなります。諸報道によれば、この「出向」という名目を使うことによって行った多重派遣は最大で「四重派遣」にもなっていたとのことで、関与した会社は24社にも及ぶとのことです。

IT業界の多重派遣の実態について、氷山の一角が垣間見えたといえるでしょう。

多重派遣の問題点

多重派遣は、次のデメリットがあることから非常に問題ある行為として違法、禁止されています。

「出向」等と、派遣以外の名称で行ったとしても、実態が派遣であれば違法となります。

賃金の不当な中間搾取

派遣労働者に関与する会社の数が多くなるごとに、それぞれの会社が少しずつ利益を得ることから、結果として派遣労働者に交付される賃金は少なくなります。

関与する会社の中には、実際には特に業務を行っていない会社がいた場合など、賃金の不当な搾取を第一目標として行われた構成の場合、特に問題が大きいといえます。

責任の所在が不明確

いざ問題が起きた場合、例えば派遣労働者との間で労働問題が起きた場合や、派遣労働者が就労先で問題を起こした場合などに、会社側の責任の所在が不明確となります。

どの会社に責任追及して良いかわからないとなると、損害を受けた会社、労働者の救済ができなくなるため、多重派遣が禁止されているのです。

神奈川労働局による処分内容

神奈川労働局による、株式会社YSLソリューション等に対する派遣法に基づく処分内容は、次の通りです。

神奈川労働局の定期監督の際に、書類調査において労働者供給の疑いがあったことから調査を開始して、その中で今回の多重派遣の実態が発覚しました。

処分対象の派遣事業者

  • 株式会社YSLソリューション
  • 所在地       :  横浜市中区
    許可・届出受理番号 :  派14-301084 (許可年月日:平成26年12月1日)

  • ユナイテッド・ネットワーク株式会社
  • 所在地       :  東京都江東区
    許可・届出受理番号 :  派13-303084 (許可年月日:平成19年9月1日)

処分の内容

  • 株式会社YSLソリューションに対して
  • 労働者派遣事業停止命令(改正派遣法附則第5条) 
    労働者派遣事業改善命令(派遣法第49条第1項)

  • ユナイテッド・ネットワーク株式会社に対して
  • 労働者派遣事業改善命令(派遣法第49条第1項)

多重派遣とならないために

今回、株式会社YSLソリューション等の派遣事業者が行政処分を受けたことによって、IT業界の多重派遣の違法な実態の一部が明らかになりましたが、これは氷山の一角に過ぎません。

派遣について、複雑な構造となると、当事者となる会社でも、違法な多重派遣であるのかどうか、判断がつきかねる場合もあります。派遣先として派遣労働者を利用している場合にも、違法な多重派遣の片棒をかつがされているおそれがあるため、派遣元の選定、チェックは慎重に行わなければなりません。

自社の行っている派遣システムが派遣法、職業安定法に違反するかどうか、また、自社の利用している派遣元のサービスが派遣法、職業安定法に違反しているかどうか、判断がつかない場合には、専門家の判断を仰ぐのがよいでしょう。

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