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「ポケモンGoフィーバーが止まらない!」という人もいれば、「そろそろポケモンGoも飽きたな・・・」という人もいる最近、あなたのポケモンGo事情はいかがでしょうか。

とはいえ、ポケモンGoは、いまだに私達に話題を提供してくれています。

今回は、ある従業員が、副社長の命令から、ポケモンGoをプレイすることを業務として命令された、というニュースについてです。

エリート社内弁護士は、ポケモントレーナーになった。【BuzzFeed Japan / 井指啓吾】

ある夜。その男は、上司である副社長と取引先との懇親会に参加していた。

「そういえば」とポケモンGOの話題が出ると、取引先の相手が「ポケモンGOでコンプリートを達成したら非常に話題になるのでは」と言って笑った。

それを聞いた副社長は、「明日から旅立て!」「明日、ほかの役員にも話しておく」と、男に指示をした。

以前に、業務中にポケモンGoばかりプレイして仕事をさぼっている社員に対して、会社はどのように対応したらよいか、という解説をしました。

これに対して今回は、むしろその話題性から、会社から従業員に対して「ポケモンGoをプレイするように。」と、業務として命じるというわけです。

ポケモンGoがこれだけ話題を席巻している中、御社でも、ポケモンGoを利用したプロモーションをお考えの会社に、注意しておいてほしいポイントを解説します。

ポケモンGoを行うことは業務の範囲内か

まず、会社には、従業員に対して業務命令を行う権利が認められています。

これは、労働契約に従って認められる権利であって、必ずしも就業規則や雇用契約書に記載されている必要はないですが、念のため、業務命令に従って誠実に業務を行う必要があることについて、就業規則に記載しておくのがよいでしょう。

労働契約とは、労働者側が会社に対して「労働をする」という義務を負い、会社側は労働者に対して「賃金を支払う」という義務を負います。そのため、労働者は、労働契約を締結した時点で、会社から業務命令を受けることを当然の前提としています。

「労働をする」義務とは、好き勝手労働をしていればよいのではなく、会社の命令に従った労働を行う義務であると言い換えてもよいでしょう。これを「債務の本旨弁済」といいます。

したがって、業務命令の根拠は、労働契約そのものに求めることができます。

電電公社帯広局事件(最高裁昭和61年3月13日判決)
「労働者は、使用に対して一定の範囲での労働力の自由な処分を許諾して労働契約を締結するものであるから、その一定の範囲内での労働力の処分に関する使用者の指示・命令としての業務命令に従う義務がある」

とはいえ、労働契約を根拠としている以上、会社から労働者に対する業務命令も、無制限、無限定に許されるわけではありません。労働契約において業務命令権に誓約を課していなかったとしても、次のような制限があります。

  • 公序良俗に反する業務命令
  • 違法行為を行うことを命じる業務命令
  • 業務上の必要性のない業務命令
  • 労働者に対して社会通念上相当な限度を超える危険を与える業務命令

そして、本来の業務とは全く関係のない行為については、業務上の必要性がないことから、業務命令を行うことができないケースがあります。労働者の労働契約において、その職務内容が特定されている場合には、更に業務命令の範囲が制限されてきます。

例えば、今回の事例では、ポケモンGoをプレイするという業務が業務上の必要性を有するかを検討する必要があります。次に、ポケモンGoをプレイする業務が労働者への過度の負担にならないかを検討してください。

以上の検討で、ポケモンGoをプレイする業務命令ができそうだ、という結論に達したとしても、「経理業務のみを行う」という労働契約を締結している従業員に対しては、ポケモンGoのプレイを一方的に強要することは困難です。

ポケモンGoを業務とすることを拒否された場合は?

まず、ポケモンGoをプレイすることを業務命令として命じる前に、労働者の同意による業務内容の変更が可能でないかを検討するようにしてください。

仮に「経理業務のみに従事する。」という業務内容であったとしても、労働者の真意からの同意によって、ポケモンGoをプレイすることを労働契約の内容とするよう変更できた場合には、ポケモンGoのプレイを業務命令として命じても何ら不都合ありません。

従業員の同意を得ずに命令する場合には、業務命令に進む前に、次の点を検討します。

  • ポケモンGoをプレイするという業務命令に、業務上の必要性があるかどうか
  • ポケモンGoをプレイするという業務命令が、労働者に過度の危険、負担を与えないかどうか

例えば、退職してほしい社員に対して、本業の仕事を与えず、「ポケモンGo要員」として閑職に追いやるような形でポケモンGoのプレイを命じるとすれば、それはパワハラとして違法行為と評価される危険があります。

会社の意図に関わらず、労働者がパワハラだ、と感じてしまえば、トラブル化するおそれもありますので、ポケモンGo命令の業務上の必要性を丁寧に説明するようにしましょう。

ポケモンGoをプレイするという業務命令が有効である場合には、この業務命令に違反する従業員に対しては、注意指導、懲戒処分等を検討しましょう。

ポケモンGoプレイ中の労働時間管理の問題

無事ポケモンGoプレイの業務命令を実行したとして、その後ポケモンGoをプレイするとなると、会社内での勤務ではなくなり、外勤と同様の働き方となります。

ポケモンは、全国のあらゆる場所に出現しますから、ポケモンのコンプリートを目指すのであれば、効率的に会社外を移動してポケモンをゲットしていかなければなりません。

しかし、ここで問題となるのは、会社外でポケモンGoをプレイしている時間の労働時間管理についてです。

この点、会社による労働時間の把握が困難な場合には、事業場外みなし労働時間制を採用することが考えられます。ただし、事業場外みなし労働時間制を採用するためには、労働時間の把握が困難な状態が前提となります。

したがって、ポケモンGoプレイの業務命令においても、次のような場合には事業場外みなし労働時間制を採用することはできない可能性が高いといえます。

  • 会社が、ポケモンの出現地をマップで指示し、順番に回らせる場合
  • 上司が一緒に回りながらポケモンGoをプレイする場合
  • ポケモンをゲットする度に、会社にメール報告を指示している場合

ポケモンGoのプレイによって過剰労働とならないよう注意

最後に、ポケモンGoのプレイ時間について事業場外みなし労働時間制を導入する要件を充足していたとしても、何ら労働時間を把握しなくてよいわけではありません。

少なくとも、ポケモンGoのプレイが長時間労働の強要と評価されないよう十分に気を配る必要があります。

特に、「ゲームなので、負担は少ないはず。」という考えで、本業をいつも通り行わせて、その後にポケモンGoをプレイさせるということとなれば、かなりの過剰労働となる可能性があります。

「ゲームをプレイさせているだけなのだから、残業代は発生しない。」という考え方も甘いでしょう。会社の指揮命令の下に業務を行わせている以上、残業代の支払義務が生じるのはもちろん、その業務中に事故にあったり、過剰労働によってメンタルヘルスにり患したりした場合には、会社の責任が問われることとなります。

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