労働審判の答弁書、記載事項と提出期限

労働審判の申立書が裁判所から会社へ送達されてきた場合、一緒に「期日呼出状及び答弁書催告状」というものが同封されており、ここに答弁書の期日が記載されています。

労働審判における答弁書の期日は概ね第1回期日の1週間から10日前に設定されることが一般的ですが、答弁書をこの期日までに充実させることは、労働法に精通した弁護士であっても相当精力的かつ迅速に動かなければなりません

答弁書の期限

労働審判における答弁書の期限は、「期日呼出状及び答弁書催告状」に記載されます。

この書面には、労働審判における第1回期日、裁判所の場所、担当部、担当書記官等が記されます。

同封された書面に、答弁書の記載例が添付されていることが多いですが、こちらはあくまで会社等本人のみで労働審判に対応する場合の簡易なものであり、通常弁護士が労働審判対応の依頼を受けた場合には、訴訟と同様の形式で答弁書を作成することとなります。

答弁書に記載すべき事項

労働審判の答弁書に記載すべき事項は、労働審判規則に次の通り定めがあり、これに従うこととなります。弁護士が答弁書を記載する場合にも、この項目に従って答弁書を記載するのが一般的です

ただしあくまで必要記載事項であり、事案によっては前後を入れ替えたり、加筆したりすることもあります。
  1. 申し立ての趣旨に対する答弁
  2. 答弁を理由づける具体的な事実
  3. 予想される争点および当該争点に関連する重要な事実
  4. 予想される争点ごとの証拠
  5. 当事者間においてなされた交渉その他の申し立てに至る経緯の概要

以下、それぞれの項目について簡単に説明します。

申し立ての趣旨に対する答弁

労働者からの申立の内容(全体的な主張のことをいいます)を、「申し立ての趣旨」といい、これに対する会社側の意見を「申し立ての趣旨に対する答弁」といいます。

例えば、「残業代を支払え」「不当解雇なので労働者としての地位を認めろ」という申立に足して「労働者の申立はすべて認められない」といった答弁を行うこととなります。

答弁を理由づける具体的な事実

答弁の結果となる理由を記載することとなります。

労働法の法律、判例・裁判例に照らして適切な主張を構成し、その主張ごとにその要件に該当する事実を記載します。

会社の概要、申立人となっている労働者の概要、事実に関する時系列も記載した方が労働審判委員会に対してわかりやすい答弁書となるでしょう。

予想される争点および当該争点に関連する重要な事実

労働者の申立に対して会社の意見が異なる部分を記載し、その争点について、会社の主張が正しいと説得するために要件となる事実を記載します。

争点には、法的な争点(「法律の解釈が異なる」「法律の適用が異なる」等)と、事実的な争点(「事実関係が真実と反する」等)があります。

予想される争点ごとの証拠

争点について労働審判委員会に有利な心証を抱かせるためには、適切な証拠を準備しなければなりません。

ただし、労働審判では迅速性が重視され、山ほどの証拠を提出することは不適切とされます(24条終了によって訴訟に誘導されることもあります)ので、的確なポイントを絞った立証が功を奏すでしょう。

当事者間においてなされた交渉その他の申し立てに至る経緯の概要

労働審判における最終判断への影響は少ないですが、交渉経緯と労働審判に至った経緯を記載します。

労働者が適切な申立をしているにもかかわらず会社が不誠実な対応をしていたことが明らかとなった場合には、労働審判委員会の心証に一定の影響を与えることが懸念されます。

答弁書記載の順序は?

答弁書には、事実経緯と法的主張の双方を記載しなければならないのですが、どのような順序で記載すべきかは事案によって様々で、答弁書の品質を向上させるため弁護士の腕の見せ所といえるでしょう。

基本的には労働審判委員会に理解してもらいやすい答弁書の記載の仕方が一番で、この考え方に基づいて考えることとなります。

事実に対する認否の仕方

答弁書に記載する「認否」とは、申立書に記載されている事実部分について、会社の認識を示す作業です。

認否の基本的な考え方

なぜ認否を行わなければならないかというと、限られた時間で迅速に労働審判委員会が判断すべく、争点を限定するためです。

認否を行うことによって、労使双方が争わない事実が明らかとなり、その部分は審理をする必要がなくなります。

したがって、事実関係を認める場合には、認めた部分については後で争うことが困難になりますから、最初の答弁書における認否が非常に重要な意味を持ちます。

認否の具体的な方法

労働審判における認否では、申立書記載の事実につき、「認める」「否認する」「不知(知らない)」の3つに分けて意見を示すこととなります。

労働審判の申立書には会社に不利なことばかり記載してあるため、「全て否認する」と言いたくなりますが、前述した認否の基本的な考え方から適切ではありませんし、労働審判委員会から「問題ある会社なのでは?」というあらぬ誤解を招きます。

ただ、認める場合にも、事実を限定して認否を行うようにしなければ、後々、認めた事実を争えないことによって不利な状況になりかねません。

労働法に基づいた法的構成の考え方

事実に関する認否を行ったら、次は会社の法的主張を記載することとなります。

会社の法的主張を適切に記載するためには、労働法に関する正しい理解と、判例・裁判例に対する適切な情報収集が必要となります。

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