労働審判基本答弁書書き方ポイント労働問題会社側弁護士東京

労働審判では、労働問題を迅速に解決するために、第1回の期日で、事実認定の大半を終わらせるのが一般的となっています。そして、その第1回期日までの間に、会社の主張を労働審判委員会に伝える方法は、答弁書の提出しかありません。

したがって、答弁書に全精力を込めて、会社側に有利な主張を書ききることが、労働審判で勝つために重要となります。

答弁書で記載しなければならないことは、事実と法的主張です。これを労働者側の労働審判申立書の記載を労働法に即してきちんと理解しながら行う必要があります。特に、労働者側に弁護士がついている場合には、会社側が労働法の知識で負けてしまうおそれがあります。

そのため、適切な答弁書を準備、提出するためには、労働問題に強い弁護士等の専門家のサポートが必須となります。今回は、会社側が労働審判で争うにあたって、適切な答弁書を作成、提出するために注意すべきポイントを解説します。

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労働審判委員に伝わりやすい書き方を理解すること

労働審判委員に伝わらなければ、いかに会社側有利な状況であっても、また、いかに労働法の知識を多く有していたとしても意味がありません。労働審判は、労働審判委員が主導的に進め、調停による解決、労働審判による解決のいずれも、労働審判委員の心証によって有利・不利が決定します。

そのため、労働審判委員が理解しやすいように記載しなければなりません。特に、スピーディな解決を優先する労働審判では、労働審判委員といえども、答弁書を熟読する時間は限定されており、分かりづらい記載であると、会社に有利な主張を十分労働審判に反映してもらうことが困難となります。

そこで、労働審判委員に伝わりやすい書き方とはどのような書き方かという点ですが、これは、民事訴訟における主張、立証、証拠の構造と同様に考えるべきです。

すなわち、まず、労働者側の申し立てには、大元に請求があり、これを基礎づける法的な主張があり、その前提となる事実と、事実を立証する証拠があるというピラミッド構造といわれるものです。

会社側も、この労働者側の申し立てのピラミッド構造に従い、請求に対して答弁を行い、主張と事実に対して認否を行い、労働者側の事実とは異なる事実を立証するのであれば、そのための証拠を準備するという具合です。

認否の区別は明確に行うこと

この答弁書の記載の中でも、特に「認否」が重要となります。「認否」とは、労働者の提出した労働審判申立書に記載された事実について、会社が「認める。」か「認めない。」か「知らない。」かの三択でその経験を示すことをいいます。

労働審判における解決を迅速に進めるために、会社が「認める。」としたところはその通りの事実があったものと認定され、「認めない。」「知らない。」とした部分いついては、証拠による立証が必要となるといった形で審理が進みます。というのも、労働審判は当事者同士の争いであるため、労使双方が認める事実については、それを基礎として審理を進めて良いと考えられるからです。

このように解説すると、全て「認めない。」とした方が、会社の態度がはっきりして良いのではないか、徹底的に争いたいと考える会社も多いようですが、認否を漠然と考えることは不適切です。

特に認めても争点には影響のない部分については「認める。」とすることによって争点を明確にできますし、このことは、1つ目に解説した労働審判委員に理解してもらいやすい答弁書にも繋がります。

逆に、労働者側の言い分が不明確な部分や、抽象的であって何を意味しているのかが直ちにはわからない場合には、安易に認める旨の認否をすべきではありません。

具体的な事実を列挙すること

労働審判の答弁書に記載することが必要なのは、法的な主張と事実の2つです。これは車の両輪であって、どちらが欠けても労働審判を勝ち抜くことはできません。

ここでいう事実の記載の際に重要なポイントは、具体的な事実を記載することです。

概括的、抽象的な事実をダラダラと記載するだけでは、その事実を重要な事実として労働審判の判断の際に考慮してもらうことは困難です。労働審判委員会が重視するのは、具体的なエピソードであって、具体的な事実をどれだけ列挙できるかが勝負の分かれ目となります。

例えば、不当解雇が労働審判で争われた場合に、「能力が不足する問題社員であった。」という主張を基礎づけるために、「業務遂行能力が低い。」という抽象的事実を挙げるだけでは、会社の主張が認められる可能性は限りなく低いといえます。

どのように能力が低いのか、例えば「業務命令によって与えた○○という業務を、○月○日を期限とし、遅れそうであったので注意指導を重ねたが、期限までに仕上げることができなかった。」というように、具体的エピソードを挙げていきます。具体的なエピソードを主張するにあたっては、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、どうした)を明確にするよう心掛けましょう。

その上で、労働審判の答弁書に記載した具体的な事実を証明するために、収集した証拠を提出します。

具体的な事実を基礎づける証拠を準備すること

必ず、具体的な事実を基礎づける証拠を準備するようにしてください。

また、証拠が全く存在しないと考える場合であっても、客観的な事実と矛盾する主張を行うことは、会社の主張の信用性を下げ、会社に不利な労働審判が下る危険があります。

そのため、人間の記憶は曖昧なものですから、事後的に客観的な事実を総合して、会社の主張が客観的な事実、証拠関係に矛盾するものではないかどうかを検討する必要があります。

記憶のみに頼った漠然とした主張を行ったり、「労働者のことが嫌いだ。」という感情や気持ちの先走った主張を行ったりすることは、労働者からの思わぬ反論を招く危険があるため、お勧めできません。

労働審判は、短期間で決着のつく勝負ですから、漠然としたブラック企業のイメージがつくことや、「この会社の言っていることは信用できない。」という根拠の薄い心証が、結果的に、事実上最終的な解決に大きな影響を及ぼしてしまうおそれもあります。

まとめ

以上、労働審判を会社側でお受けすると、準備期間が少なく、答弁書の記載はほどほどにして当日の期日で主張すればよいと考えている会社もいるようですが、大きな誤解です。

労働審判の期日は、答弁書の記載を労働審判委員会が読んでいることを前提として、労働審判委員会が最終判断に必要な部分を、追加で聴取するという形で進行します。そのため、労働審判の期日より前に、答弁書によって会社の考えを、正確に、わかりやすく伝える必要があるのです。

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労働審判、団体交渉、就業規則、問題社員への対応など、使用者側の労働問題は、経験とノウハウが重要な、非常に難しい法律分野です。

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