労働審判準備早急弁護士会社側労働問題東京

労働審判申し立てられた会社様へ向けた解説です。

労働審判を申し立てられた場合には、早急に準備することが必要不可欠です。

よく、労働審判を訴訟と勘違いされ、「どうせこの先長引くのだから、そんなに急いで準備をしなくてもよいのではないか。」と考えている会社様もいらっしゃいますが、大きな勘違いです。労働審判と訴訟とは、両方とも裁判所で行う手続きですが、その性質は大きく違います。

訴訟の場合、労働の訴訟は1年~1年半程度、長い場合には2年以上かかる場合すらあり、その間に主張立証を繰り返しますので、必ずしも最初の準備を早急に進め、すべて完璧に用意しておく必要はありません。

しかし、労働審判の場合には、原則として最高で3期日の間に一定の判断が下される上、事実の認定は第1回目の期日でおおむね決定されてしまいます。そのため、第1回期日までの準備が決定的に重要となります。

今回は、労働審判を申し立てられた会社様が、なぜ早急に準備をしなければならないのかについて解説します。

労働審判への対応は、専門家の適切なアドバイスが必要です。企業の労働問題に強い弁護士へお任せください。

労働審判で争われる労働問題の特徴

労働審判で争われる労働問題は、「個別労使紛争」です。つまり、会社と、個々の従業員との間の、不当解雇、懲戒処分の無効、残業代請求、雇止め、パワハラ、セクハラ、マタハラなどの労働トラブルです。

この「個別労使紛争」とは、労働組合との間の「集団労使紛争」との比較でいわれる用語です(ただし、最近では合同労組により、労働組合との団体交渉でも個別労使紛争が争われるケースも多いです。)。

労働審判は、各地方裁判所で行われ、これを担当するのは、裁判官と、労使の専門家それぞれ1名からなる労働審判委員会です。労働審判委員会は、労働審判を主導し、調停の際に事実の確認を行ったり、形成した心証を基に和解を勧めたりし、調停によって解決ができない場合には労働審判による最終判断を下します。

労働審判の3回の期日で労働問題が解決しない場合や、労働審判に労使いずれかが異議申立をした場合には、労働審判での解決はできないわけですが、おおむね8割程度の労働問題は、労働審判で解決しています。

なぜ会社は労働審判の準備を早急に行わなければならないのか

以上の特徴のある労働審判ですが、会社側が労働審判の準備を急がなければならない理由を解説します。

この解説を読めば理解いただける通り、労働審判で会社に有利な解決を得るためには、専門的な準備を迅速に進める必要があります。そのため、労働審判を会社側で進める場合には、弁護士に依頼するケースがほとんどでしょう。

労働審判の制度は、労働者側、使用者側いずれでも利用することは可能ですが、大半の場合には、労働者側が会社に対して労働審判を申し立てることがほとんどです。このとき、労働者を「申立人」、会社を「相手方」といいます。

労働審判の準備を、会社側が急がなければならない重要な理由について解説します。

期日を会社側の都合で決定できない

任意交渉による話し合いであれば、交渉の日付は、両当事者の話し合いと合意によって決定されます。そのため、会社の都合の悪いとき、例えば、交渉に重要な役割を果たすキーマンがどうしても用事があって外せない、業務の繁忙期であるなどの場合には、交渉の日付をずらすことができます。

また、訴訟の場合には、長期間戦い続けることから、期日1日の重要性は相対的に低く、1回の期日に重要人物が参加できなかったとしてもあまり影響は大きくありません。証人尋問、和解調整の決定的なタイミングなどの例外的なケースを除いては、期日の対応は弁護士が参加するだけで足ります。第1回期日は、答弁書を提出しておけば、擬制陳述といって答弁書の通り話したこととなりますので、欠席しても特に大きな不利益にはなりません。

これに対して、労働審判の場合には、事実認定を行う第1回期日が決定的に重要なわけですが、第1回期日は、すでに労働審判の申立が会社に送達された時点で決定されており、その後期日を変更できないおそれがあります。労働審判の期日変更が難しいのは、労働審判委員会3名のスケジュール調整の上で期日を決定しているからです。

第1回はとりあえず適当な従業員に参加させておいて、第2回目期日以降で反論をしようと考えていては、労働審判委員会の事実認定に対する意見を言うチャンスを失うこととなります。

準備事項が非常に多い

訴訟であれば、労働者の主張立証に合わせて、その都度、これに対する認否反論を行い、会社側も順番に主張立証を準備していけばよいのですが、労働審判は違います。

労働審判では、第1回期日までに、お互いに、すべての主張立証を提出しなければなりません。

労働者側であれば、申立のタイミングを自身で調整することができますので、主張立証の準備がすべて整うまで申立を待てばよいわけですが、受けて立つ会社側の場合には自分のタイミングで調整することができません。

そのため、あらかじめ指定された期限に間に合うように主張立証をすべて準備しなければならず、準備事項が非常に多くなります。

また「書面と証拠を出せばよい。」というだけではありません。適切な書面を書くためには、会社の経営者、人事の担当者、直属の上司など、関係する当事者に事情聴取を行い、調査をしなければなりませんから、この準備はかなりの期間を要することとなります。

労働法の専門的な理解が必要である

いかに準備を時間かけて進めたとしても、労働法の理解が不足していては有利な解決は望めません。調査した事実を、労働法や判例理論にそって、会社に有利なように主張しなければなりません。

例えば、不当解雇の争いにおいて、解雇の対象となった社員の悪いところ、欠点だけを列挙しても、それは経営者の感情、気持ちが強くでてしまい、法的な結論に大きな影響を及ぼすことができないおそれがあります。少なくとも、それぞれの問題点が、会社においてどのような意味を持ち、解雇の有効性に対して、法的にどのような影響があるのかを、説得的に主張しなければなりません。

特に、労働審判では、第1回期日に、事実認定に関する心証形成をおおむね終わらせるのが一般的であるため、従業員の問題点だけを長大な書面に列挙しただけでは、労働審判委員会に「解雇の有効性」について理解してもらうことは困難です。

会社側で労働審判を受けるメリット

以上の通り、労働審判を申し立てられた場合、会社側の負担は非常に大きく、できれば話し合いによる任意交渉で解決できる方がメリットは大きい場合が多いといえます。紛争コストの拡大を回避するため、まずは話し合いでの解決を模索してみることをお勧めします。

しかし、労働審判は、会社に不利な点ばかりではなく、会社のメリットとなる点もあります。

労働審判は、訴訟に比べて短期間で終わり、紛争の拡大を防ぐことができますし、合理的な解決に導いてもらうことが可能な制度でもあります。

労働トラブルの長期化を防ぐ

たとえば、パワハラのトラブルの場合、パワハラの被害者となったと考える労働者は、感情的に非常に高ぶっています。

労働審判の制度がなければ、話し合いでは到底おさまりがつかない場合、訴訟で争うこととなります。訴訟といっても第1審だけでなく、労働者が第1審の判決に納得しなければ、控訴、上告という制度によって紛争が長期化していきます。

そのため、「パワハラを行った上司や、パワハラを放置した会社が絶対に許せない。」「弁護士費用がいくらかかっても徹底的に制裁したい。」と感情の高ぶった労働者の場合、会社としても長期に渡って訴訟を争わなければならないリスクがあります。

これに対して、労働審判の場合には、原則として3回の期日の間に、裁判官からの最終的な意見を聞くことができます。上記のような感情的に高ぶった労働者であっても、裁判官からの一定の心証がきちんと示されれば、それに従った解決となることについて異議のあるケースはあまり多くなく、労働審判によって短期間での解決が実現可能なことも多いといえます。

杓子定規でない合理的な解決ができる

労働審判による解決は、法律に従った杓子定規な解決だけではなく、合理的な解決ができます。

たとえば、不当解雇のトラブルの場合に、不当解雇を受けた労働者としても、解雇は無効であると考えるものの会社への復職は望まないという場合に、退職を前提とした金銭的解決が可能であるといった具合です。

また、残業代請求のトラブルの場合に、残業代について、おおざっぱな計算のもとに、労使間に争いがあることを踏まえて割合的に請求を認めるといったケースも、法的に正確に行うのであれば、1日ごとの労働時間の特定が必要となってきますが、労働審判を利用することで早期の解決が実現できます。

労働審判における弁護士の必要性

以上の通り、労働審判を会社側で戦う場合には、弁護士によるサポートが必要不可欠であるといえるでしょう。

何ら理由がないにもかかわらず労働審判を申し立てられて弁護士費用を支払わなければ勝てないというのでは、「ゴネ得」ではないか、と考える会社経営者も多く、一面ではその通りともいえます。

しかし、労働法による労働者保護は手厚いものがあり、会社としても常日頃からきちんと対応しておくことによって、紛争リスクを回避することは十分に可能です。労働審判を申し立てられたことをきっかけに、会社の労務管理の手法が労働法に沿ったものになっているかどうか、今一度点検してみてください。

労働審判への対応にお困りの会社様は、企業の労働問題に強い弁護士へご相談ください。

労働問題・企業法務のお悩みは、弁護士へご相談下さい!

労働審判、団体交渉、就業規則、問題社員への対応など、使用者側の労働問題は、経験とノウハウが重要な、非常に難しい法律分野です。

会社を経営していくにあたり、労働者との交渉は避けられませんが、一度トラブルとなれば、致命的ダメージとなるケースもあります。弁護士に頼らずに社長自身で解決するとなると、莫大な時間とエネルギーが必要です。

労働問題に特化した解決実績の豊富な弁護士が、労働法を使って会社を守り、継続的に発展していく方法について、詳しく解説いたします。