労働審判とあっせん、違いと適切な対応

労働者と使用者との紛争のうち、各従業員の権利関係を争う紛争を「個別労使紛争」といい、会社と組合との集団的な争いである「集団労使紛争」と区別されます。個別労使紛争の解決方法には、労働審判をはじめ、調停、あっせん、訴訟など様々な方法があります。

労働審判とあっせんは制度上の大きな違いがあり、労働者がどの方法によって個別労使紛争を争うかによって、会社側でも対応を変え、臨機応変に対処する必要があります。

「あっせん」の制度上の特徴

あっせんとは、労働者と使用者との間で、賃金、解雇、昇給昇格、出向配転といった労働条件に関するトラブルが生じている場合に、労働問題の専門家があっせん委員として交渉を仲介することによって、円満な和解成立に向けた手助けをする制度をいいます。

あっせんを行う機関

あっせんを行う機関は、次の種類があります。

  • 各都道府県の労働委員会
  • 各都道府県労働局の紛争調整委員会

いずれも費用が低額(もしくは不要)であること、短期間で専門家を踏まえた合理的な解決案を模索できることといったメリットから、労働者側が本人で請求を行う場合には活用することが多い制度といえますが、どのように対応すべきか解説していきます。

また、会社側の違法性が明らかであり、立証する証拠資料も十分にある場合は、労働者が労働局に相談に行った時点で、「助言・指導」といった方法によって解決が図られる場合もあります。

あっせんの解決力

あっせんとは、専門家をあっせん委員として加え、当事者間の交渉を仲介してもらう制度ですが、あっせん委員の役割は、あくまでも当事者間の調整と話し合いの促進であって、解決の余地が相当程度ある場合にはあっせん案を提示して歩み寄りを求めます。

あっせんが成立して解決した場合、受諾されたあっせん案は、民法上の和解と同様の効力を有することとなります。

しかしながら、あっせんの中で互いの譲歩によって解決する可能性がおよそ存在しない場合に、あっせん委員が強制的な判断を下せるわけではないことから、あっせんでの解決は限定的とならざるを得ません。

あっせんに対する対応

労働者からあっせんを申し立てられた場合、参加が任意だからといって「すべて不参加」という一律の対応で良いのでしょうか。会社側としてあっせんに対する適切な対応はどのようなものであるか解説します。

あっせんによる解決

労働者があっせんを申請したとしても、会社が応じるかは会社の任意に任されていますし、仮に拒否せずにあっせんに応じた場合でも、合意に達しなかった場合「不成立」となりあっせん手続は終了します。

あっせんが打切りとなった場合には、労働者が打切りの通知を受領してから30日以内に裁判所に訴訟を提起した場合には、あっせん申請の日に訴訟が提起されたものとみなされ、時効が中断されます。

使用者側の適切な対応は?

あっせんに参加するかは会社の自由であり、欠席をして罰則はなく、あっせんが打ち切られるのみです。

しかしながら、あっせんが打ち切られても労働者の不満が解消されない場合、労働審判、訴訟といった更に強力な解決手段に訴えてくることとなるでしょう。したがって、あっせんを拒否する場合には、労働審判、訴訟といった強制的な手段となった場合の結論の方向性を踏まえて検討する必要があります。

したがって、あっせんに参加してもあっせん案の受諾はしないという道もある以上、労働審判や訴訟になると長時間かつ高額の費用がかかることから、とりあえずあっせんに参加して労働者の言い分を聞いてみることには一定の合理性があるといえるでしょう。

あっせんに応じなかったことで不利になるケース

あっせんを申請する労働者の多くは、あっせんが不成立となると労働審判、訴訟へと進行することを見越して方針を検討していることが多いものです。

そして、労働審判、訴訟となれば労働者の請求が認められる可能性の高い事案について、あっせんを拒否してしまうと、会社の交渉態度が不誠実であるとして、労働審判の際に「申し立てに至った経緯」として記載され、労働審判委員会の心証を害するおそれがあります。

また、一般的にいって、あっせん案における解決金の水準は労働審判よりも低いことが多いです。というのも、あっせんでは事実関係の審理を労働審判や訴訟程詳しく行わないためです。労働審判や訴訟で事実審理を詳細に行った結果、ますます不利な状況となり、多額の解決金を支払わなければならないケースも多いといえ、あっせんの不参加は慎重に検討する必要があります。

少なくとも、あっせんを利用しての話し合いに応じる姿勢程度は見せておく必要があるでしょう。

労働審判への対応(あっせんとの違いを踏まえ)

労働審判はあっせんと裁判の中間的な存在と言われることがあります。訴訟では解決まで長期間かかり過ぎ、あっせんだと解決力が脆弱であるという中で、解決案として生み出された制度が労働審判です。

あっせんと労働審判の違い

労働審判は、訴訟との関係においては、原則として3回で結審(平均審理期間約70日)という点で、解決までの期間が比較的短く迅速な解決が可能です。

そして、あっせんとの関係においては、労働審判に併設される調停においてなされる話し合いが合意に至らなかった場合には、労働審判委員会がその心証に基づいて労働審判という強制的な判断をするという点で、強力な解決力を持ちます。

出頭命令に従わない場合には5万円以下の罰金が科せられ、また、不利な労働審判を下されるという点で、会社にとっても適切な対応が必須な制度です。

労働審判への対応方法

労働審判の場合、不参加としてしまえば会社側に不利な内容の労働審判が確定してしまいますから、準備の上で参加をすることとなります。この際、労働法に関する専門的知識が不足している場合には、労働問題を得意とする弁護士に依頼するのが一般的です。

労働審判は、事実審理が第1回期日のみで終了するのが一般的な運用であるため、「第1回目が勝負である」と言われており、第1回目までに主張、立証を固め、すべて提出する必要があり、準備期間は全く十分とはいえません。

労働審判に対する具体的な準備は、こちらの記事をご覧ください。

まとめ

浅野総合法律事務所では、労働審判への対応を得意としていることはもちろんのこと、あっせんへの対応ももちろんお受けしております。

あっせんの場合、労働者は弁護士を依頼せずに行うことも多いですが、会社側の場合、「欠席をする」という選択肢を選ばない限り、出席時には十分な労働法に関する知識を求められ、また、その場での重要な決断を求められることもあります。また、欠席をした場合にデメリットがないかという点についても、慎重に検討する必要があります。

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