労働審判と訴訟

会社が従業員を解雇した場合には、不当解雇であるとの理由から、従業員から異議申立がされることがあります。

まずは任意交渉、すなわち、話し合いで解決をこころみるわけですが、従業員側にも弁護士や労働組合がつき、紛争が激化すると、任意交渉ではおさまらず、法的手続へと移行することがあります。

労働者が解雇事案を争う場合に選択される法的手続として、最も一般的なのが、労働審判と訴訟でしょう。労働者側の弁護士は、解雇事案が話し合いでどうしても解決できない場合には、労働審判とするべきか、訴訟とするべきかを労働者と相談して選択し、法的手続を進めます。

今回は、労働審判と訴訟で、どのような違いがあるのか、また、解決金による解決となる場合に、どのような違いがあるのかについて、解説していきます。

解雇事案を訴訟で争うケース

労働者が、解雇事案を訴訟で争う場合、すなわち、労働者側弁護士が、不当解雇を争う法的手段として訴訟を選択する場合とは、労働者が、真意から会社への復帰を強く求めているケースであるといえます。

労働審判であっても訴訟であっても、不当解雇を争う際の労働者側の請求内容は「地位確認」、すなわち、会社の従業員としての地位があるからそれを認めろ、という内容ですが、必ずしも、どのようなケースでも「本音」と「建て前」が同じとは限りません。

その中でも、訴訟を選ぶということは、多額の弁護士報酬と、約1年程度もの審理期間をかけても争いたいという覚悟があるということですから、本当に会社に戻りたいという気持ちが強いのだと考えるべきでしょう。

中には、地位確認請求をしながら、既にもっと良い会社に勤務しているなど、地位確認は単なる「建て前」であり、駆け引きであると疑問視せざるを得ないケースもあります。

ただ、単なる駆け引きで、労働審判という簡易かつ迅速な制度を行うチャンスを捨てて、訴訟を訴えてくるということは、あまり多くはないでしょう。

解雇事案を労働審判で争うケース

これに対して、解雇事案を労働審判で争うケースは、労働者は既に会社に戻る意思がないケースが多いといえます。

合意退職を前提として金銭を請求する制度が日本労働法には存在しないことから、建前上、地位確認の請求をしているに過ぎないということです。

労働審判の場合、簡易かつ迅速な、和解を前提とした制度ですから、お互いの譲歩が重要です。

会社としては、「退職」という条件は譲れないのであれば、解決金を支払うこととなります。労働者としても、解雇までされた会社に、今更戻りたいとは思わないのであれば、この和解は円滑に進み、労働審判によって早期の解決が可能ということとなります。

訴訟で争う場合、仮処分も

労働者が、真意から会社に戻りたいと考えている場合、労働審判をやっても会社が「退職」だけは全く譲歩しない結果、調停、和解が成立しないことがよくあります。

とはいえ、労働訴訟となると、1年以上の審理期間となることも多く、労働者としての地位を失いながらこれほどの長い期間を戦い続けることは困難です。

そのため、真意から会社に戻りたいと考え、しかしながら短期間で審理を終結したいと考える場合には、「賃金仮払いの仮処分」や、「地位確認の仮処分」を利用することもあります。

これらの仮処分は、労働審判によって早期の解決が可能となってからは、利用されるケースが少なくなったものの、「退職」は、いくら解決金を積まれても合意しかねる、という場合には、選択肢に入ってくるでしょう。

解決金を検討するにあたって

労働審判において、合意退職を前提として解決金による解決を検討する場合、解決金がどの程度とされるかは、会社にとっては大きな関心事です。

この点については、まずは、その解雇が有効とされるか、それとも不当解雇として無効とされるか、という労働審判委員の心証が重要となります。

この労働審判委員の心証が最大の考慮要素となることは、心証による調停提案を無視した場合には、開示された心証と同内容の審判がなされる可能性が高いことからもわかるでしょう。

ただし、不当解雇であるという心証が下されても、諦めてはいけません。会社側としても、会社の経済状況、労働者側の帰責事由、解決に要した時間、解雇期間中の賃金、労働者が他に仕事を探せたかどうかなどによって、総合的に判断するように主張しましょう。

また、労働者の駆け引きがあまりに強く、また、会社としても労働者の労働力に魅力を感じるという場合には、解雇を撤回して復職してもらう、というケースもあります。

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