先日「求人詐欺」に関するこちらの記事でも解説した通り、「求人詐欺に遭った」という労働者からの訴えが非常に増加していることから、政府ではハローワークにおける求人で、求人詐欺を行った企業や労働基準法違反を継続する企業を排除するという方針を打ち出しています。

「求人詐欺」を行えば、次の通り大きなリスクがあり、「求人詐欺」とのレッテルを貼られないような適切な採用活動を、専門家と協力して事前に設計しておくべきです。

  • ハローワークで求人が不可能となる。
  • 御社の社会的信用性が低下する。
  • 損害賠償請求の可能性がある。
  • 御社の想定する労働条件より高い条件で雇用する義務が生まれる可能性がある。
  • 精神的損害に対する慰謝料を請求されるおそれがある。

しかし、求人票と雇用契約書とが全く同一でなければならないとすれば、面接の結果、この労働条件では雇用できないという求職者は全て一律に排除しなければならず、少しの柔軟性はあってしかるべきです。

会社都合による変更の相談ケース

ハローワークで、当社従業員の平均的な労働条件で採用の募集を出していました。

応募して頂いた方と面接をしたところ、当社従業員の平均的な労働条件での採用は難しいとの判断に至ったものの、特殊で専門的な技能を有する方であったため、専門職として別の労働条件であれば雇用できると考えているのですが、求人票から労働条件を変更することは可能でしょうか。

面接をした方の合意があれば、求人票から労働条件を変更することが可能です。

求人票を掲載し、これに対して応募することによって労働契約が成立するわけではないため、会社と労働者との話し合いの上、労働条件を決定して、その労働条件で労働契約を締結します。

特に、今回の相談内容のように、一般的な内容の求人票を掲載していたところ、より御社に適性を有する応募者が表れ、それに即して適切な労働条件に調整したという場合には、労働者の納得を得て雇用契約の合意に至ることが比較的容易であると考えられます。

労働条件を大幅に変更する相談ケース

ハローワークでの求人票における記載に対して応募をしてきた人に面接をしたところ、当社の想定する能力におよそ達していませんでした。

「給与が半分であればいいですよ。」と伝えたところ、不満げな表情でしたが、その内容で雇用契約を締結することとなりました。このような人事・労務管理は労働法的に適切でしょうか。

求人票の記載から、合理的な理由なく大幅に労働条件を切り下げるということとなると、「求人詐欺」とのレッテルを貼られたり、損害賠償請求等を起こされる可能性がありますので、お勧めできません。

ちなみに、求人票の半分も切り下げるとなると、最低賃金法違反や残業代未払い等、別の問題も心配です。

既に解説した通り「労働者が合意していれば良い。」というのが原則ではあるのですが、次のような配慮をしなければなりません。

  • 労働条件の合意には、真意からの同意が必要です。
  • 特に、金銭的条件など労働者の関心が大きい部分の同意の真意性は、厳しく判断されます。
  • 労使関係では使用者の方が強いと評価され、同意はなかった(会社の強要であった)とされるリスクが常にあります。

したがって、今回の相談内容のケースでは「不満げな表情でした」ということですから、このまま切り下げた労働条件で雇用し続ければ、いずれ労働問題に発展することが高い確率で予想されます。

もし御社に、労働条件の切り下げに合理的な理由があるのであれば、労働者に対して丁寧に説明をし、その証拠を記録化すべきです。

求人票と労働契約との関係

求人票に労働条件を明示することは、職業安定法で義務付けられているため、全く虚偽の労働条件を記載したり、労働条件を全く記載しなければ、職業安定法違反となることはもちろん、「求人詐欺」とのレッテルを貼られ、御社に取り返しのつかない大損害となるおそれがあります。

しかし、労働条件については、労働契約締結時に会社と労働者の合意によって正式決定するのが原則であり、求人票に記載した労働条件がそのまま雇用契約書の労働条件となるわけではありません。求人票に対して労働者が応募をした時点で雇用契約が成立するということもありません。

したがって、求人票に記載した労働条件を事後的に変更したとしても、労働者が変更後の労働条件に合意する限りは、変更後の労働条件を雇用契約における労働条件とすることが可能です。     

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