国家公務員による副業・兼業が、認められる方向に加速しています。
「働き方改革」において推奨されている「多様な働き方」として、「副業(兼業)」が重要なテーマとなっています。
少子高齢化による、労働力人口の減少にともない、限られた労働力を活用する方策としても「副業(兼業)」の推奨は重要な方策となります。
これまで、公務員の副業・兼業は、一部の地方公共団体や、一部の業務において、ごく限定的に認められているに過ぎませんでした。
今回解説する方針の転換によって、「副業(兼業)」に従事する公務員が、将来増加することが予想されます。
国家公務員の副業(兼業)を容認するながれ
2018年(平成30年)6月15日に閣議決定された「未来投資戦略2018」において、次のとおり、国の方針として、国家公務員の「副業(兼業)」について記載されています。
「未来投資戦略2018」(抜粋)国家公務員については、公益的活動等を行うための兼業に関し、円滑な制度運用を図るための環境整備を進める。
「公益的活動」とは、次のような活動であるとされています。
「公益的活動」とは?
特定非営利活動法人(NPO)などの行う仕事のうち、
- 環境保護
- 教育
- 地方活性化
等の仕事のこと
従来の国家公務員の副業・兼業は?
これまでも、国家公務員の副業・兼業は、「完全禁止」というわけではありませんでした。
国家公務員についてのルールを定める「国家公務員法」という法律と、これに基づいた「通達」によって、国家公務員の副業・兼業については限定が付されていました。
具体的には、「職務に支障が出ない活動」についてのみ、副業・兼業が認められていました。
例えば・・・
例えば、国家公務員の中にも、次のような業務を、「職務に支障が出ない活動」として副業・兼業にしている人がいました。
- 大学の教員として講義を行う活動
- 執筆活動
しかし、いずれも、ごく限定的に認められているだけで、副業・兼業を行っている国家公務員は少ない数にとどまります。
副業の制限も作られる予定
今回、国家の方針として、国家公務員の副業・兼業が容認される方向へと一歩進んだわけですが、容認一辺倒ではありません。
各報道によると、国家公務員の副業には、次のような制限が課せられる可能性が高いとされています。
ポイント
- 国家公務員の所属する省庁の人事担当者への届出義務
- 副業・兼業を業務時間中ではなく休日などに行う義務
- 副業・兼業を行う国家公務員の長時間労働の抑制
- 副業・兼業を行う先の企業と、国との利害関係がないこと
一般企業においても、所属する企業の業務に支障が生じてしまったり、所属する会社の利益を侵害するようなケースでは、副業・兼業が制限されるのが一般的です。
国家公務員であるからといって、このことは変わりませんから、国家公務員の副業・兼業にも一定の制限が加えられるのは当然でしょう。
今後、副業・兼業をする国家公務員が、私企業ではたらくことが多くなるとすると、雇用する側の企業でも、就業規則の整備などを徹底しなければなりません。
まとめ
今回は、「多様な働き方」として注目される、副業・兼業について、国家公務員という職種においても容認の流れが進んでいることについて、解説しました。
なお、2018年6月には、厚生労働省の労働政策審議会で、副業する者の労災についての議論がなされました。
副業・兼業は、「多様な働き方」としての柔軟な活用が期待される一方で、「長時間労働」の温床となって労働者の健康を害するなどの心配もあります。
副業・兼業を推進する会社ほど、労働時間の把握・管理を徹底し、就業規則の整備など、社内の労働法務をチェックを弁護士にご相談ください。