建設業労災

建設業、建設現場は、潜在的な危険が非常に多い業種、職種であることから、怪我、死亡事故等が起こるリスクが高いといえます。労災、安全配慮義務違反等の相談ケースが非常に多い業種です。

加えて、建設現場では、多重下請関係が常態化しており、元請、一時下請、二次下請、親方、職人等、その立場によって取扱いも様々で、いざ労災トラブルが起こったときに、対応すべき会社、責任を負うべき会社がどの会社なのか非常に分かりづらい場合が多いです。

建設業の労災保険の仕組みは、通常の労災と比較して特殊な構造となっていることから、専門の弁護士、社労士等のアドバイスを聞いた上で加入手続、労災事故対応を進めた方が良いでしょう。

建設現場の労災事故

労災事故とは、「業務に内在した危険が現実化したとき」に業務起因性があると判断されますが、建設現場の場合、この「業務に内在する危険」が通常の職場に比べて非常に多く、労災事故の起こりやすい業種であるといえます。

例えば、次の通りです。あくまでも、これらは一例に過ぎません。

  • 足場の老朽化での踏抜き落下
  • 塗装工事中の一酸化炭素中毒
  • 屋根工事中の墜落
  • ビル解体中のアスベスト吸引
  • 後方不注意車両の衝突
  • 解体物中の建物の倒壊
  • 積み荷に挟まれ圧死
  • フォークリフトの転倒
  • 上階作業中の部材の落下
  • 電気設備工事中の感電

建設業の労災保険の特殊性

建設業の労災の基本的な考え方

建設業の場合、建設現場には元請、下請業者、孫請業者、親方、職人等、多様な職種の者がいて、その関係が重層的であることから、どの会社が事故に対する責任を負うのかが必ずしも明確でない場合が多いといえます。

建設現場において実際に指揮監督した会社が安全配慮義務違反の責任を負うのが原則ですが、どの会社が被害者の労働を実質的に指揮監督していたと評価できるかは、事案によって非常に難儀な判断となります。

元請の一括補償が原則

労災保険は、使用者に保険料の支払いを義務付けることによって、労働者の安全配慮義務違反の責任追及について、立証の困難性を解消することと、使用者の経済的リスクを保証することを主要な目的としていることから、このような重層的請負関係という建設業特有の困難性に対しても、救済が必要となります。

そのため、基本的に、建設業の労災保険では、「元請会社だけが労災保険上の責任を負う。」というのが原則とされています。

ただし、下請会社、孫請会社であっても、被害者の労働を実質的に指揮監督し、その職場環境に責任を負っていたと評価できる場合、労災とは別に安全配慮義務違反の責任を負う可能性があることに注意が必要です。

元請会社の労災対応

建設業の労災保険は、元請の労災保険によって一括して対応することとなっているため、元請会社の適切な対応が最重要であるといえます。

建設業の場合、それほど社員数が多くなくても元請業務を行うことがあり、これまで下請としての業務を行ってきた工務店が、元請業務を行うようになることがあります。特にこのような場合、これまで元請に対応してもらっていた労災事故対応を御社で行うこととなるため、事前に、労災に関する知識を十分備えておく必要があるでしょう。

元請会社の労災保険の保険料は、請負金額を基準に計算され、元請会社のみが負担することとなります。

この結果、元請会社の労災保険の加入手続、保険料の支払いは、通常の会社とは異なる手続きが必要となるため、専門家にアドバイスをお願いするとよいでしょう。

下請会社の労災対応

下請会社の従業員

建設業の労災保険は、下請会社に雇用された職人についても元請会社の労災によって補償を受けることとなるため、下請会社が労災保険料を支払う必要はありません。

下請会社の従業員が、重層的構造の建設現場で就労中に労災事故に遭遇した場合には、元請会社の労災保険によって一定の補償を受けることができます。ただ、個別の事故ごとの事情によっては、下請会社も安全配慮義務違反の責任を負う可能性がありますから、注意が必要です。

下請会社の経営者(事業主)

元請会社の労災保険で補償を受けることができるのは、下請に雇用されている従業員のみであり、下請会社の経営者(事業主)は、この補償を受けることができません。

したがって、下請会社の事業主にも労災事故に遭遇するリスクが存在する場合には、次の「一人親方」の場合と同様、労災保険の特別加入制度の利用を検討することとなります。

労災保険の特別加入制度に加入せずに労災事故に遭遇した場合、下請会社の事業主は、何らの補償も受けることができないこととなります。

親方・職人の労災対応

雇用された職人

元請、一次下請、二次下請といった会社に雇用されている職人の場合、労災事故に遭遇した場合には、一括して元請会社の加入する労災保険によって保護されるということとなります。したがって、労災申請は、元請会社に対して協力を求めることとなります。

また、労災保険でカバーされない部分について安全配慮義務違反による損害賠償請求を行うこととなりますが、この請求先がどの会社になるかについては、業務態様、指揮監督関係等の個別の事情によって判断しなければなりません。

一人親方(個人事業主)

一方で、どこの会社にも所属せずに個人事業主として建設現場で働く労働者を「一人親方」といい、一人親方の場合には元請会社の労災でも補償を受けることができません。

一人親方は、労災事故の際に何らの補償も得られないリスクを抑えるため、労災保険の特別加入制度を利用することを検討する必要があります。

まとめ

建設業を経営する会社の経営者、人事労務・総務担当の皆さんは、建設現場に内在する危険が通常の職場に比べて非常に多いことを十分に理解する必要があります。万が一建設現場で死亡事故が起こり、元従業員の遺族から損害賠償請求訴訟を起こされた場合、数千万~憶単位の、非常に高額な訴訟を争わなければならないこととなります。

万が一の事故が起こってから慌てて対応するのでは、不適切な対応となるおそれが高いため、労災事故、安全配慮義務違反に対する御社の対応方法について、再検討しておくとよいでしょう。

労働問題・企業法務のお悩みは、弁護士へご相談下さい!

労働審判、団体交渉、就業規則、問題社員への対応など、使用者側の労働問題は、経験とノウハウが重要な、非常に難しい法律分野です。

会社を経営していくにあたり、労働者との交渉は避けられませんが、一度トラブルとなれば、致命的ダメージとなるケースもあります。弁護士に頼らずに社長自身で解決するとなると、莫大な時間とエネルギーが必要です。

労働問題に特化した解決実績の豊富な弁護士が、労働法を使って会社を守り、継続的に発展していく方法について、詳しく解説いたします。