療養休職中人事労務報告方法報告事項

療養休職中であっても、会社の従業員である以上、全く会社に関与しなくてもよいわけではありません。またこれは、会社の側から見ても同様で、適切に療養に専念させ、適切な時期に復職の判断を行うためには、療養中も労働者に連絡をとったり、報告をさせたりすることは必須です。

一方で、療養に専念する必要があり、私傷病の状況が非常に重いことから、報告が不可能な場合もあり、一律に一定の報告を強要することもまた困難です。

休職期間が長期化する場合には、復職の可否を判断し、復職できない場合には自然退職という判断を下さざるを得ない場合もあります。この場合に、会社が労働者の情報を十分に収集せず、単に休職期間が経過したという形式的な判断で復職を認めずに退職を迫れば、労働者の側から地位確認の労働審判、団体交渉、訴訟が提起されて争いが拡大するケースも少なくありません。

以上の労働問題は、休職、療養期間中に、会社が労働者に対して必要かつ十分で、過不足のない報告を求め、適切な指示を行うことによって、ある程度回避が可能です。

休職中の労働者の処遇、報告の指示等についてお悩みの場合は、企業の労働問題に強い弁護士へご相談ください。

療養期間中に報告を指示すべき事項

療養期間中に報告を指示する目的は、労働者を療養に専念させること、復職の時期を適切に判断すること、復職が不可能な場合に、復職が不可能であることと療養状況についての情報を得ておくことといったものです。

あまりに多くの報告を求めては、労働者の負担となり、療養専念義務の妨げになりかねませんが、「療養中である。」という内容のみの電話やメールでは、会社が復職の可否を判断するにあたっての適切な情報を得ることはできません。

労働者の療養に関する情報収集を怠った結果、復職の可否に関する判断を誤ったというのでは、会社としての人事労務管理が不十分であったといわざるを得ず、労働審判や団体交渉、訴訟において、会社に不利な結論が下されるおそれがあります。

したがって、会社の正しい人事労務管理として、休職中の療養状況について、必要かつ十分な情報を、書面によって収集する必要があります。

療養の状況

まず、具体的な療養状況、復職の準備状況を把握することが、定期的な報告を指示することの一番の目的です。

そのため、療養状況について、具体的に報告させる必要があります。報告内容が抽象的な場合には、具体的な報告内容とするよう指示し、次回の定期報告から改善を求めましょう。

なお、療養に専念していて報告が困難であり、前回の報告から全く状況が変化していない場合には、その旨のみの報告に留めるようにし、労働者の負担を減らして療養に支障が生じないようにすべきです。

前回報告からの改善点

前回の報告から具体的にどのように状況が改善されたかについての報告を求めます。

定期報告を連続して行い、その間の改善状況についての報告を求めることによって、療養の流れを把握することができます。

例えば、状況は全く改善していない旨の報告が続いていれば、休職期間が経過した際に、復職不能との判断を下しやすくなります。そして、労働者が主治医に「復職相当」との意見を書かせたとしても、報告状況との矛盾が明らかであり、あまりに不自然であることから、適切な説明を求め、結果として会社が「復職不能」との判断を行いやすくなります。

他方で、復職をさせる場合であっても、改善の流れを把握することによって復職の時期をより具体的に予想しやすくなるでしょう。

復職の可否について

復職の可否、時期について、復職を希望する場合には、労働者の意見を求めておきます。ただし、会社が労働者の意見に左右されるわけではなく、一つの参考資料となるに過ぎません。

主治医の考え

後で説明する通り、会社がすぐに主治医にコンタクトをとるべきではなく、まずは労働者から主治医の言っていたことを聴取し、その上で疑問があったり、会社の判断のために必要であったりといった場合には、労働者の同意をとって主治医の意見を求めるようにします。

家族による代理の報告を認めるべきか

休職となった直後は、その病状の重さによっては、療養報告を労働者自身で行うことは困難なケースも少なくありません。

しかし、労働者の病状が重く報告ができないからといって、会社が労働者を放置し、何らの情報も得ないというのでは、その療養状況を把握し、適切な時期に復職を指示することができなくなります。

家族による代理の報告を認めれば、労働者が自身で報告をできない状況であっても、療養の状況を会社が適切に把握することができますから、休職直後の時期は、定期報告を家族に代理して行ってもらうようお願いするべきでしょう。

また、家族から会社に報告をしてもらうことによって、家族にも休職、療養に協力してもらうことができます。

いざ、復職不能という場合であっても、家族の納得感があることが、将来の労働審判、団体交渉といった労働問題の回避につながることもあります。

主治医との適切な連携

労働者を休職させ、療養させる際には、主治医との連携は必須です。

復職の可否についての判断は、主治医の診断を重要な資料として行うことから、主治医との連携をおろそかにしたために復職の可否に関する判断を誤ってしまえば、地位確認の労働審判、団体交渉などの労働問題を避けることができません。

特に、主治医との連携を怠ったことによる労働問題では、次のケースがあります。

  • 主治医が会社の業務内容を把握していない結果、「復帰相当」との判断をしたが、主治医の想定していない困難な業務が会社内に存在し、会社は「復帰不相当」との判断をして退職させた。
  • 会社が復職は不可能であろうと考えていたところ、労働者が主治医に泣きついて「復帰相当」との診断書を出してもらい、会社の判断を迫られている。

主治医も医師ですから、全く復職が不可能であるような症状の労働者に対して「復職相当」との診断書は出さないでしょうが、主治医が会社の業務による負荷を軽く見て「復職相当」としてしまうケースは少なくありません。

このようなケースでは、会社としては、会社の当該労働者に求める職務の内容を、主治医に対して説明し、理解してもらう必要があります。

ただ、安易に主治医から事情聴取を行うことは、個人情報の観点から問題がありますから、まずは労働者を通じて報告を求めることで、主治医の意見を聴取するようにしましょう。

まとめ

会社が労働者に対して休職命令を発する場合、最も労働問題がトラブルとなりやすいのは、復職の可否を判断する時点です。

そのため、復職の可否を判断する時点までに、会社が労働者に対して、いかに適切な対応をしたか、そして、十分な資料を基に適切な復職の可否に関する判断を行ったかどうかが、会社にとって重要なポイントとなります。

休職期間中から療養状況に関する報告をこまめに求める理由は、休職期間満了時のトラブルを回避するためにあります。

なお、休職期間満了によって当然退職とすることを前提として対応するのではなく、円滑かつ早期の復職ができる限り可能なように療養に専念させ、会社もそれをサポートすべきであることは当然です。

休職中の労働者の処遇、報告の指示等についてお悩みの場合は、企業の労働問題に強い弁護士へご相談ください。

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