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解雇権濫用法理(かいこけんらんようほうり)とは?│労働法務用語集

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解雇権濫用法理とは?

「解雇権濫用法理」とは、使用者による「解雇」を、一定程度制限する判例法理、ないし、この判例法理を元に成立した労働契約法の規定のことをいいます。

会社側(企業側)が、労働者に対して行う「解雇」は、会社が一方的に、労働者との契約を終了させる効果を持ちます。労働者にとって不利益が大きい「解雇」を制限し、労働者を保護する法理が、「解雇権濫用法理」です。

「解雇権濫用法理」の具体的な内容は、「解雇」について、合理的な理由があり、社会的に見て相当性がある場合でなければ、解雇が違法かつ無効となるというものです。

労働者にとって雇用契約上の地位は、生活を安定させるために最重要の給与を得るためのものであることから、一定の保護を与えています。

解雇権濫用法理はどのようにしてできた?

「解雇権濫用法理」は、「長期的に1つの会社に雇用される」という慣行の存在する日本の労働において、判例によって歴史的に形成された法理です。

つまり、日本の伝統的な「長期雇用」を前提とすると、解雇を制限しないと労働者に酷である、ということです。

「解雇権濫用法理」により解雇を一定程度制限することによって、会社側(企業側)の労働者に対する人事・労務管理の裁量の幅を広げることができます。

つまり、「同じ会社で長く勤続する。」のだから、会社側(企業側)が適正な人材配置をするための命令をする場合には、労働者側は従う必要がある、ということです。

日本の伝統的な考え方は、「終身雇用、年功序列、企業別組合」の3つの価値観に守られてきましたが、「解雇権濫用法理」は、まさにこの日本の伝統的価値観から生まれた判例法理です。

最高裁判例で示された解雇権濫用法理

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最高裁で、「解雇権濫用法理」が定式化されたのが、日本食塩事件判決(最高裁昭和50年4月25日判決)です。

この判決で、最高裁は、「解雇権濫用法理」について、次のとおり判示しました。

日本食塩事件判決(最高裁昭和50年4月25日)

「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になる」

更に、最高裁は、その後の高知放送事件判決(最高裁昭和52年1月31日判決)でも、就業規則上の理由に形式的に該当するだけでなく、その処分と理由との間のバランスを求めました。

そして、このことを「社会通念上の相当性」と表現しました。

高知放送事件判決(最高裁昭和52年1月31日判決)

「普通解雇事由がある場合においても、使用者は常に解雇しうるものではなく、当該具体的な事情のもとにおいて、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないときには、当該解雇の意思表示は、解雇権の濫用として無効になる。」

労働契約法に制定された解雇権濫用法理

日本の伝統的な雇用慣行から生まれ、判例法理となった「解雇権濫用法理」は、更に、法律に格上げされることとなりました。

平成15年、労働基準法において法律の条文となり、その後、この条文が労働契約法16条に移されました。

労働契約法において、「解雇権濫用法理」を定める条文は、次のとおりです。

労働契約法16条(解雇)

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

解雇権濫用の判断要素は?

「解雇権濫用法理」について、ご理解いただけたでしょうか。ここまでお読みいただけるとおり、この法理は、抽象的な用語でできています。

そのため、「解雇権濫用法理」に照らして解雇が有効となるか、無効となるかは、具体的な事実を、この法理にあてはめて判断しなければなりません。

「解雇権濫用法理」では、次のような、多くの要素の総合考慮によって決められます。

ポイント

 

  • 解雇の理由とされた事由の内容、程度
  • 動機、目的の正当性
  • 解雇の理由とされた事由の内容と解雇処分とのバランス
  • 会社内における同種の先例とのバランス
  • 同業他社における同種の先例とのバランス
  • 解雇に至る経緯
  • 解雇に至る手続きの適切さ

また、解雇に合理的な理由があるかについては、解雇をする理由によって、次の通り判断されます。

能力・勤務態度などを理由:普通解雇

労働者の能力不足、勤務態度の不良、勤怠の不良等を解雇の理由とする場合には、「普通解雇」という処分となります。

普通解雇の場合には、教育・指導をしてもなお改善の余地がなかったか、雇用契約時に期待されていた能力であったか、過去に懲戒処分等の自省の機会を与えたか、といった点が重要な考慮要素となります。

経営上の理由:整理解雇

経営難、資金難等、会社側の経営上の事情を解雇の理由とする場合には、「整理解雇」という処分となります。

整理解雇の場合には、「整理解雇の4要件」という、判例における判断基準が定式化されていることから、これに沿った判断を行います。

すなわち「整理解雇の4要件」とは、次の4つの判断要素を意味します。

  • 経営上の必要性
  •  = 整理解雇をする程の経営上の必要性があるかどうか。

  • 解雇回避の努力
  •  = 経費削減、役員報酬や賞与の削減、非正規社員の雇止め等、整理解雇を回避する努力を尽くしたか。

  • 人選の合理性
  •  = 整理解雇が止むを得ないとして、人選が合理的か。

  • 手続の相当性
  •  = 整理解雇という重大な処分を行う際の手続が適切にされているか。

労働者の非違行為が理由:懲戒解雇

不祥事、重大なミス等、労働者の非違行為、企業秩序違反行為を理由とする場合には、「懲戒解雇」という処分となります。

懲戒解雇の場合であっても解雇権濫用法理が適用され、不合理な懲戒解雇は無効となります。

懲戒解雇の場合、会社の労働者に対する最大級の制裁行為であることから、普通解雇よりもその合理性は厳しく判断され、非違行為の内容が、懲戒解雇という重大な処分に見合う程度である必要があります。

また、懲戒解雇では、弁明の機会を与える事前手続が適切になされたことが重要な判断要素とされます。

適切な解雇の流れ

解雇権濫用法理によって、会社が労働者を自由に解雇できるわけではなく、むしろ適法かつ有効に解雇できる場合の方が限定的であるとさえいえます。

例えば、

  • 数回遅刻した、もしくは、欠勤した。
  • 上司に意見を言った。
  • 社長に対する態度が気に入らない。
  • 期待していたより仕事ができない。

といった安易な理由で行ってしまった解雇は、事後的に労働審判、訴訟等の方法によって争った場合には、違法・無効とされる可能性が非常に高いといえます。

労働者の能力、態度や問題行為については、段階を踏んで注意指導の実績を残し、「改善の余地がない」といえる程度に至ってはじめて有効に解雇できるのです。

ポイント

  1. 口頭による注意、指導
  2. 書面による注意、指導
  3. 譴責・戒告などの軽度の懲戒処分
  4. 出勤停止・降格などの重度の懲戒処分

ただし、どの程度に至れば解雇が有効となるかは、定型的な確たる基準があるわけではなく、判例・裁判例等の先例に照らして判断をすることとなりますので、労働法の知識・経験を必要とします。

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