勤務態度不良普通解雇有効労働問題会社側弁護士東京

勤務態度が悪いことは、普通解雇の理由に該当します。

というのも、能力や健康状態が十分であったとしても、従業員にやる気がなかったり、勤務態度が悪かったりすれば、成果を発揮することは困難であるからです。

とはいえ、「勤務態度不良」と一口にいっても、その行状は様々であり、従業員の問題点に合わせた適切な改善方法をとらなければなりません。少なくとも、軽度の勤務態度不良が一度発覚しただけで、即座に普通解雇の踏み切るとすれば、労働者から労働審判、団体交渉などの労働トラブルを起こされた上、会社に不利な解決となることは目に見えています。

そのため、解雇理由として十分な程度の勤務態度不良を、労働審判などの法的手続きにおいて客観的に証明できるよう、注意指導、懲戒処分などの改善の機会を与えたという証拠を、きちんと保管しておく必要があります。また、会社に求められる改善への努力の程度も、勤務態度不良の内容や程度、その従業員が新卒社員であるか中途採用であるかといった事情によって、個別に異なりますから、問題社員ごとに対応を検討しなければなりません。

今回は、勤務態度の悪い労働者を普通解雇することが可能なケースと、その解雇方法について解説します。

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勤務態度不良は積み重ねが大切

勤務態度不良を理由にして普通解雇をする場合、その普通解雇が社会通念上相当であると判断されるためには、勤務態度不良を表す具体的な労働者の行為を積み重ねていく必要があります。

少なくとも、一度の勤務態度不良だけを理由に普通解雇するとなれば、解雇権濫用法理に従って無効と判断されるリスクが非常に高いため、慎重に対応しなければなりません。

勤務態度不良を示す具体的な行動を積み重ね、複数回の問題点に対して普通解雇によって対応する場合には、一つ一つの具体的行動が解雇理由として十分な程度に至っていなかったとしても、もはや信頼関係をこれ以上継続できないとして、普通解雇が有効であると判断できることも少なくありません。

インチケープ・マーケティング・ジャパン事件(大阪地裁平成7年12月21日決定)
「それぞれの事実をここに見れば、中には程度の軽微なものもないわけではないが、これらを全体としてみた場合には解雇理由として既に十分であり、これを理由とする解雇を解雇権の濫用とみることはできない。」
シンワ事件(東京地裁平成10年3月3日決定)
「原告の行状の数々は、その一つ一つを個別に取り上げる限り必ずしも重大な不都合とはいえないものの、これを全体としてみた場合、組織として活動している会社にとって決して看過することのできない事柄である。」

したがって、会社側としては、解雇理由には満たない程度の軽度の勤務態度不良であると考える場合であっても、今後重度の勤務態度不良が積み重なり、普通解雇とする可能性があることから、証拠の収集・保全に注意しなければなりません。

いざ、重度の勤務態度不良が発覚して普通解雇に踏み切る決断をした場合に、過去に、軽度とはいえ同種の勤務態度不良を繰り返していたという事情が証拠に残っている場合には、会社に有利な事情の一つとなります。

十分な注意指導・改善の機会を付与する

勤務態度不良について、数々の勤務態度不良の行為を積み重ねて普通解雇に至るという場合には、会社が十分な注意指導をし、従業員に対して改善の機会を与える努力をしたことが重要となります。

注意指導には、口頭で行う場合、書面によって行う場合、懲戒処分によって行う場合があり、勤務態度不良の程度によって使い分ける必要があります。

ただ、注意指導の履歴を証拠に残しておくためには、少なくとも普通解雇するまでの間に、口頭での注意指導しかないとなれば、その勤務態度不良は比較的軽度のものであったと判断されるおそれが十分にあります。したがって、普通解雇を検討している場合には、その前に、書面での注意指導や懲戒処分を行っておくことをお勧めします。

どの程度の改善努力を行うことで、勤務態度不良を理由とした普通解雇が有効になるかについては、次の事情を総合的に検討してください。

  • 会社の規模
  • 新卒社員か中途社員か
  • 勤務態度不良の程度、回数、頻度
  • 業務に与えた支障の程度

したがって、「○度の改善の機会を与えたから普通解雇として大丈夫。」という基準があるわけではなく、その問題社員ごとに柔軟な対応を検討する必要があります。

新卒社員を勤務態度不良で解雇する場合

勤務態度不良を理由に普通解雇する場合であっても、その従業員が新卒社員である場合には、解雇はより困難であると考える必要があります。

そのため、上司に反抗的な態度を示したり、企業秩序を侵害したりといった、ある程度重い勤務態度不良が頻繁に見られる従業員であったとしても、新卒社員である場合には、まずは問題点を明らかにして、書面で注意指導を加える必要があります。

この際最も重要なのは、書面による注意指導を、普通解雇への準備として形式的に行うのではなく、「改善されるのであれば雇用を継続したい。」というつもりで行うことです。新卒社員の場合、社会人としてのマナーや常識が備わっていない従業員もいるため、まずは是正を求めて人材を有効活用することを目指すべきであるといえます。

会社が真摯な態度で改善を求めるからこそ、新卒社員であれば、自分のあやまちに気付けば、勤務態度不良が改善され、その後長期にわたって活躍、貢献することも期待できるのです。

そして、会社側の適切な注意指導にもかかわらず改善の余地がない場合には、初めて普通解雇を検討する段階となります。

中途採用社員を勤務態度不良で解雇する場合

新卒社員と比べて、中途採用社員の場合には、雇用が流動化しており、何度も転職を繰り返している労働者も少なくありません。そのため、労働者自身も、どのような勤務態度が適切であるかについて、十分な理解を有していることも多いものです。また、社会人経験が長い場合には、その程度の常識を身に着けていて当然であるといえるでしょう。

そのため、中途採用社員が、勤務態度不良の問題を起こす場合には、是正の機会を与える回数、注意指導の内容、回数は、新卒社員に比べて少なくてもよいものと考えられます。

すなわち、会社として、注意指導を繰り返し、改善の機会を何度も与えることをしなくても、普通解雇が有効と判断される可能性が高いということです。

勤務態度不良で普通解雇する際の注意点

最後に、勤務態度不良が続き、注意指導をしても改善されない場合に、普通解雇に踏み切る際の注意事項を解説します。

注意指導を記録に残す

注意指導をどの程度丁寧に行ったか、また、どの程度の回数行ったかによって、その後に行う普通解雇の有効性が判断されます。

労働審判や団体交渉によって普通解雇の有効性が争われると、「そのような注意指導を受けたおぼえがない。」「全く改善の機会を与えられずに突然解雇された。」と労働者側から反論を受けることとなります。

そのため、事後に労働トラブルが悪化した場合に備え、注意指導の内容とその回数を、記録にとっておく必要があります。できる限り書面による注意指導を行った上で、証拠として保全しておくようにします。

また、この際重要なことは、注意指導を受けた労働者の対応も、合わせて記録しておくことです。徐々に改善の兆候が見られ、成長と努力が見られるのであれば、普通解雇は性急である可能性があり、解雇無効と判断されるおそれがあります。一方で、全く改善をする努力がない場合や、むしろ会社に対して反抗的な態度を示した場合には、解雇を有効と判断する一つの事情となります。

「懲戒解雇」ではなく「普通解雇」

懲戒解雇とは、労働者の企業秩序違反行為に対する制裁であって、重度の勤務態度不良が行為が具体的に指摘できる場合には懲戒解雇とすることも考えられますが、通常は、勤務態度不良を理由とする解雇は、普通解雇が適切です。

労働審判、団体交渉になった場合であっても、懲戒解雇の方が、有効性が認められるハードルが高いと一般的に考えられることから、明らかな問題行為があったとしても、念のため普通解雇としておくべきです。

なお、解雇をする際には解雇理由書を作成して解雇の理由を丁寧に説明し、労働者の納得を求めることが、事後的な紛争リスクを回避するのに有効です。

まとめ

以上の通り、勤務態度不良を理由として普通解雇をする場合には、複数回の勤務態度不良を示す具体的事実と、これに対する会社の適切な注意指導を、記録に残して証拠化しておかなければなりません。

また、勤務態度不良を理由とする場合、普通解雇を有効と判断してもらうためにどの程度の具体的事実の積み重ねが必要であるかは、問題社員の事案によってケースバイケースの判断が必要となります。

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