普通解雇問題社員弁護士会社側労働問題東京

普通解雇とは、会社から一方的な意思表示によって労働者との間の雇用契約を解消する「解雇」のうち、労使双方の信頼関係の悪化によって行われるものをいいます。

日本では、解雇権濫用法理によって、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である解雇でなければ、普通解雇は無効になりますから、会社が問題社員を発見したとしても、普通解雇を検討すべき場合とは、それほど多くはありません。

多くの場合には、会社が問題社員を発見したとしても、普通解雇以外の方法で、注意指導、懲戒処分、退職勧奨などで対応すべきであって、雇用契約を解消する普通解雇にまで踏み切るのは、例外的なケースであるといえるでしょう。

しかし、中には、どうしても改善の兆候が見られず、これ以上放置しておいては会社の業務に支障が生じたり、他の従業員のモチベーションや公平感に悪影響が生じたりといった理由によって、普通解雇をせざるを得ない場合があります。

今回は、普通解雇をせざるを得ない労働者、逆に言うと、会社の側で、「このような問題社員を発見したら、普通解雇も含めた処分を検討すべきである。」という労働者のパターンについて解説し、どのように解雇に向けて準備を進めればよいのかを解説します。

問題社員への対応に苦慮する会社様は、企業の労働問題に強い弁護士へご相談ください。

普通解雇は、労働者が約束を果たさない場合に行う

労働関係とは、労働者と会社とが、雇用契約を締結し、雇用契約上の義務をお互いに果たすことによって、また、その義務を継続することによって、信頼関係を構築していくものです。労働関係は、1日、1月といった短いものではなく、人によっては一生ものの付き合いの場合もあるほど長期的な関係ですから、その間お互いに義務を果たし続けることが、信頼関係の継続につながります。

この労使が違いに負う義務というのが、会社が労働者に対して賃金を支払うこと、労働者が会社に対して約束された労働を提供することを意味します。

これに対して、労使のいずれかが義務を果たさない場合には、信頼関係を安心して築くことができなくなってしまいます。例えば、会社が労働者に対して「明日から賃金は支払いません。」といえば、労働者としても、その後会社を信頼して働き続けることはないでしょう。

これと同様で、労働者の側から雇用契約で約束された労働が提供されない場合には、会社としてもこの先労働者を信用して雇用契約を維持し続けることが困難となりますから、普通解雇を行うということになるのです。

約束された労働を行わない労働者とは?

以上の通り、労働者が会社に対して果たすべき義務は、約束された労働を提供する義務であって、この義務を労働者が果たさなくなれば、会社が労働者を、信頼関係が破壊されたとして普通解雇にして会社から追い出しても仕方がないということとなります。

ここで、労働者が会社に対して提供すべき労働の内容が問題となります。この労働の内容は、採用時に、能力、学歴、職歴、経験、年齢、適正などを見極めながら、最終的には労働者と使用者との合意の上で、雇用契約によって定められるものです。

したがって、どのような労働を約束したかによって、普通解雇が許される場合というのが異なることとなります。

例えば、専門特化した高度な技術による労働を約束していた場合には、実際に約束した技術を習得していなかった場合や、技術が衰えた場合には、普通解雇が有効とされる可能性が高くなります。これに対して、事務的な単純作業による労働だけを約束していた場合には、これを超えた過度の期待を労働者が果たせなかったとしても、会社は労働者を普通解雇とすることができないこととなります。また、社会人としての常識、人としてのマナー、良好な健康状態などは、業務の内容にかかわらず、労働契約の内容として約束されているものと考えて良いといえます。

普通解雇を検討すべき具体的なケース

以上のことから、解雇権濫用法理にもかかわらず、普通解雇を検討せざるを得ない問題社員のパターンとは、どのような約束が雇用契約においてされているかのパターンと言い換えることができます。雇用契約上で約束をしたことができていない問題社員に対しては、会社としても普通解雇を検討していくべきということです。

知識、経験、能力、専門性の不足するケース

まず、知識や経験、能力、専門性など、労働者の保有する性質について、雇用契約において一定の約束が前提となっていることが多いでしょう。このような場合、雇用契約で前提となっていた能力などが労働者に欠けていた場合には、普通解雇を検討していくこととなります。

新卒一括採用の場合には、労働者それぞれの高度な能力を前提として採用しているわけではなく、正社員として採用した後で会社内で教育、指導によって能力を磨き上げていくことを前提としています。そのため、雇用契約において、個別の労働者ごとに高度な能力などを保有していることが約束されているわけではありません。ただし、学歴から推測できる一般的な知識、マナーを保有していない場合には、やはり普通解雇を検討するケースとなります。

これに対し、高度な専門性を保有していることを前提とした中途採用の場合、約束した能力に満たなかった場合には、それだけを理由として普通解雇を検討しよいこととなります。

健康状態が悪化しているケース

次に、良好な健康状態は、雇用契約に約束された業務内容を果たす上で必須のものですから、やはり雇用契約において約束されている内容であるといえます。したがって、通常の労働者として就労することが困難なほどに健康状態が悪化していた場合には、普通解雇を検討していくこととなります。

どれだけ能力の高い従業員であっても、健康状態が良好でなければ、その能力を生かし、成果を上げることは不可能です。

そして、「健康状態」には、身体的健康が含まれることはもちろんですが、精神的健康も含まれます。最近では、長時間労働の強要によるメンタルヘルスが問題となっているように、精神的健康もまた、雇用契約に約束された業務内容を遂行するために必須の要素です。

ただし、健康状態の悪化を理由として普通解雇とする場合には、その前に、会社側の安全配慮義務、職場環境配慮義務が果たされているかに注意が必要です。また、就業規則上の要件に該当する場合には、休職によって解雇を猶予して様子を見なければなりません。

勤務態度が悪質で協調性がないケース

健康状態が良好で、かつ求められる能力も十分に保有しているにもかかわらず、成果を上げることができなかったとすれば、それは本人の行動に問題がある場合も少なくありません。つまり、本人の勤務態度、素行が悪く、誠実に仕事をしようという努力をしなければ、成果を上げることは不可能です。

したがって、勤務態度が悪質で協調性がない場合には、普通解雇を検討していくこととなります。

自分勝手な行動ばかり繰り返し、他の従業員と協力、協調しようとしなければ、会社において組織としての成果を上げることはできません。これでは、どれほどその従業員に能力があっても宝の持ち腐れです。

勤務態度、協調性という点に問題がある場合には、注意指導によって労働者が自発的に改善できることでもあります。そのため、普通解雇を検討する場合には、その前に、注意指導、懲戒処分などを行い、改善を促してから普通解雇に移ることが重要です。

私生活が荒れているケース

健康状態が良好で、能力も申し分なく、本人も誠実に努力を重ねているにもかかわらず、私生活からの横やりが入って、成果を上げることができない労働者もいます。私生活でトラブルを抱えておらず、所定労働時間中は会社の業務に専念できることもまた、雇用契約で約束されている事項の一つです。これを、職務専念義務といいます。

そのため、私生活でトラブルを抱えており、そのことで仕事に集中することができない従業員に対しても、普通解雇を検討していくこととなります。

普通解雇を検討する前に、私生活を安定させるための協力を会社も一定程度行うべきであって、ワークライフバランスを整えたり、止むを得ない事由がある場合には欠勤を認めたりすることによって、早急に私生活上のトラブルを解決するよう命令してください。それでも職務に専念できない場合には、普通解雇を検討しましょう。

ただし、原則として私生活上のトラブル自体が解雇理由となることはありませんので、例外的に会社の業務に支障が生じる場合を除いては、私生活上の理由のみを根拠に解雇をすることはできません。

まとめ

以上の通り、解雇は最終手段であり、解雇権濫用法理による厳格な制限を受けるのではありますが、一定の場合には普通解雇によって対処するしかない場合があります。

普通解雇にすべきところをそのまま放置しておけば、他の従業員のモチベーションが下がりますし、会社の業績にも支障が生じます。普通解雇を行うときは慎重に準備を進めなければなりませんが、解雇自体を怖がってはいけません。

問題社員に対する解雇を検討している会社様は、企業の労働問題に強い弁護士へご相談ください。

労働問題・企業法務のお悩みは、弁護士へご相談下さい!

労働審判、団体交渉、就業規則、問題社員への対応など、使用者側の労働問題は、経験とノウハウが重要な、非常に難しい法律分野です。

会社を経営していくにあたり、労働者との交渉は避けられませんが、一度トラブルとなれば、致命的ダメージとなるケースもあります。弁護士に頼らずに社長自身で解決するとなると、莫大な時間とエネルギーが必要です。

労働問題に特化した解決実績の豊富な弁護士が、労働法を使って会社を守り、継続的に発展していく方法について、詳しく解説いたします。