解決事例

十分な準備が整わないまま問題社員を解雇してしまった結果、労働者から、労働審判を申し立てられたケースについて解説します。

労働者側としても、上司の指示に従わない、顧客に対して会社の名誉、信用を毀損するといった、行為態様に問題のある事案でしたが、会社が解雇に踏み切るのがあまりに性急であったため、そこに付け込まれて「不当解雇だ。」という労働者側からの主張を許す形になっていました。

今回の解決事例では、労働審判での主張立証によって、一定の成功を勝ち取っていますが、解雇をする以前からご相談をいただいていれば、会社の出血をより減少することができたケースであるともいえます。

事案と方針

ご相談の内容

今回の相談は、今年の初めに中途採用をした社員の解雇に伴う労働審判についてです。

今年の初め、人手不足から募集採用を行っていた際に応募してきたAさんという労働者は、面接をすると非常に優秀な感じで、受け答えもしっかりしていました。

営業マンとしての即戦力を期待していたため、Aさんのように話がうまく、自分で考えて率先して行動できる人材がほしかったこともあり、すぐにAさんの採用を決め、入社し、営業部に配属して外回り営業をしてもらうこととなりました。

しかしながら、Aさんは試用期間を過ぎると途端に上司の指示を聞かなくなりました。

元々、Aさんの営業職の能力と経験に期待して、できる限りAさんの思うままに新規開拓を進めてもらっていました。また、外回り営業を一人で行わせていたこともあり、監督が不十分であったこともあります。

Aさんは、新規のお客様の開拓に行く度に、当社の経営体制や営業マンの処遇について不平不満をいい、新規のお客様の当社に対する評判を貶めるようになりました。

このことが顧客からの連絡によって明らかになったため、上司から何度か口頭で厳しく注意指導をしましたが、Aさんは全く聞く気もなく、悪いとも思っていない態度でしたので、これ以上雇用し続けても改善は難しいだろうと考え、解雇に踏み切りました。

後日、Aさんの代理人を名乗る弁護士から連絡が来て、労働審判で解雇の有効性を争うこととなりました。

企業の労働問題に強い弁護士の方針

ご相談を受けて即座に、次の関係者に、順番に事実聴取(ヒアリング)をしました。

  • 社長
  • 人事総務、労務の担当者
  • 注意指導を行った直属の上司
  • Aさんの採用面接を担当した役員

その結果、弁護士の目から見ても、Aさんの業務態度は非常に問題のあるものであって、会社の従業員としてこれ以上雇用しておくことは困難であったことは痛いほど理解できました。

しかし、問題社員の解雇に向けたプロセスの履行が不十分であったことから、労働審判では解雇が無効との心証が下される可能性が高く、厳しい戦いが予想されました。

労働審判による解決

相談を受けるとすぐに会社へ急行し、今用意できる資料をすべて集めました。

注意指導に関する資料が少ないことがネックとなりましたが、口頭であるものの何度も注意指導していたのは事実であり、このことは上司に対する報告書などの証拠にも表れていました。

これらの証拠を最大限に利用し、Aさんの問題行為をわかりやすく説明する力強い答弁書を起案することとなりました。

裏付け証拠のない主張は、どうしても弱腰で、抽象的、あいまいなものになりますから、まずは資料を集め、掘り下げて調査をすることが必要です。答弁書の起案は一日がかりの作業となりました。

労働審判では、裁判官から、「解雇を行うのが早かったのではないか。」「もっと他にできる指導があったのではないか。」と、解雇が有効ともとれる会社側に不利な発言を繰り返していました。

しかし、会社側からも、粘り強くAさんの問題点を逐一具体的に指摘したことにより、裁判官もAさんの問題点については十分理解したようでした。

低額の解決金により金銭解決

労働審判第1回期日では、裁判官から以上の通りの心証が開示された結果、経験的に、解決金による歩み寄りは十分に可能であるように思えました。

そのため、まずは会社側から、最低額の提案とも想定される月額賃金1か月分を提案したところ、この金額でただちに和解の成立は難しいという結論となり、双方さらなる歩み寄りのために一旦持ち帰りとなりました。

月額賃金1か月の提案は、解雇の準備が会社内であまり行われていない現状を考えれば、労働審判で得られる解決としては困難であろうという見立てで、次の期日までの持ち越しは狙い通りでもありました。

その後、話し合いの結果、第2回期日において月額賃金2か月分という非常に低額な解決金により、合意退職を前提とした金銭和解が成立しました。

なお、Aさんの問題点は際立っていることは明らかでしたから、解雇に踏み切るより以前に相談いただけていれば、結果はより良いものであった可能性もあったケースであると考えます。

労働問題・企業法務のお悩みは、弁護士へご相談下さい!

労働審判、団体交渉、就業規則、問題社員への対応など、使用者側の労働問題は、経験とノウハウが重要な、非常に難しい法律分野です。

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