派遣労働者を利用する会社が注意すべき3つのポイント

派遣労働者を利用する際には、派遣先事業主が気を付けなければならないポイントが多く存在します。

派遣業務の場合、派遣法は主として派遣元に対する業法規制ですから、派遣先が注意する必要はないと考え、受け身なままの会社様も多いです。

しかし、平成27年10月から施行された改正派遣法によって労働契約申し込みみなし制度が適用される等、派遣先に具体的な不利益が生じる事態も十分想定されます。

したがって、以下3つのポイントを見ながら、解説をまとめていきます。

派遣事業におけるルール

派遣事業を行う際に気を付けなければならないルールは、派遣法にすべて記載されているわけではありません。

むしろ、実務上の対応では、行政の発表する指針や業務取扱要領に記載されていることが重要です。この中には「派遣先指針」という資料もある通り、派遣先が派遣事業において受け身であってはならないことは、実務対応からも当然です。

特に、平成27年10月1日に施行された改正派遣法における労働契約申し込みみなし制度では、違法な派遣を受け入れた場合には、雇用することを申し込んだとみなされるおそれがあり、これに対して派遣労働者が受諾すると、派遣労働者を直接雇用しなければならないこととなります。

派遣労働者の特定行為禁止

派遣先は、紹介予定派遣でない場合には、労働者派遣契約を派遣元と締結する前に派遣労働者を特定する行為をしてはいけません。これは、労働者派遣法26条6項では努力義務となっているものの、派遣先指針では禁止行為とされています。したがって、実務上の田泓としては、行ってはならないこととなります。

労働者派遣法26条6項

労働者派遣(紹介予定派遣を除く。)の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない。

        

派遣先指針

派遣労働者を特定することを目的とする行為を行わないこと

派遣先して派遣労働者を利用する場合、より良質な派遣労働者を確保するために事前に選考をして自社業務への適正を見極めたいと考える場合が多いでしょうが、このような要請は、派遣契約において能力水準やスキルをできる限り具体的に特定することで、一定水準以上の高品質な派遣労働者を確保するようにします。

万が一、派遣契約で約束する水準に満たない労働者が派遣されてきた場合には、派遣労働者の交代を要請することで対応しましょう。

派遣先指針で禁止される派遣労働者の特定行為とは、次のような行為をいいます。

  • 派遣労働者を自社に呼んで面接を行う。
  • 派遣元を経由して派遣労働者に筆記試験を行わせる。
  • 派遣労働者の年齢制限を課す。

なお、派遣労働者が自社の判断で派遣先を訪問したり、派遣先に履歴書を提出したりすることは禁止されていないものの、派遣先指針の潜脱とならないよう慎重な運用が必要です。

派遣労働者の使用者として責任を負う可能性

派遣とは、派遣元が雇用主となり、派遣先はあくまで業務上の指揮監督、業務命令を行う権限を有するのであって雇用主ではないというのが原則です。

しかしながら、派遣先といえども派遣労働者の就労に対して一定の責任を負うと判断した裁判例もあり、これに即した配慮が必要となってきます。

安全配慮義務を負う

使用者は労働者に対して、健康で安全に働くことのできる職場環境、設備等を提供する義務(安全配慮義務、職場環境配慮義務)があるところ、派遣労働者の場合、使用者は派遣元ですが、職場環境を提供しているのは派遣先となります。

したがって、職場内でのトラブルで派遣労働者の生命、身体の健康、安全が害された場合には、派遣先が責任を追及されるおそれがあります。

例えば、次の例が考えられます。

  • 派遣先の正社員のパワハラで派遣労働者が精神疾患となった。
  • 派遣先の正社員のセクハラで派遣労働者が職場を辞めた。
  • 派遣先の過酷な労働環境を原因として派遣労働者が過労死した。
  • 派遣先の正社員のいじめが原因で派遣労働者が自殺した。

したがって、派遣先はこのようなトラブルが発覚した場合には、派遣元と連携しながら迅速に対処しなければなりません。

この点は、派遣法にも次の通り定められています。

派遣法40条1項

派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者から当該派遣就業に関し、苦情の申出を受けたときは、当該苦情の内容を当該派遣元事業主に通知するとともに、当該派遣元事業主との密接な連携の下に、誠意をもつて、遅滞なく、当該苦情の適切かつ迅速な処理を図らなければならない。

団体交渉の当事者となる

派遣先は原則としては使用者に該当しないことから、労働組合法上の団体交渉の相手方とはならないのが基本です。

しかしながら、派遣労働者の労働条件について、事実上派遣先が決定しているという場合もあり、その場合に派遣元しか団体交渉の相手にできないのは妥当ではないとの考慮の下、労働条件を事実上決定している場合等の一定の場合には、団体交渉の相手方となり得ることが、裁判例でも示されています。

例えば、次のような場合です。

「雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配決定することができる地位にある場合」(朝日放送事件、最高裁平成7年2月28日判決)

なお、この場合であっても、派遣先が団体交渉に応じなければならないのは、自身がコントロールできる議題に限られるのが原則であり、全ての議題について派遣元と同様に使用者と同視されるかは事案によります。したがって、労働組合から団体交渉を求められている団体交渉事項を検討の上、団体交渉に応じるかどうかを決定しなければなりません。

まとめ

今回は、派遣先として派遣労働者を利用する場合に気を付けておかなければならないポイントを、3つに絞ってまとめて解説しました。

労働者派遣法の度重なる改正によって派遣労働者の利用方法は大幅に変わっています。この点について、派遣労働者を利用している以上、派遣元の説明だけ受け身に聞いて、特に理解していないというのでは、労働契約申し込みみなし制度を利用される等、思わぬところで足元をすくわれる可能性があり、十分注意が必要です。

派遣労働者を利用している場合の適切な人事労務管理についても、お気軽にご相談くださいませ。

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