派遣法キャリアアップ措置義務化

平成27年9月施行の派遣法改正では、派遣元に派遣労働者のキャリアアップ措置(キャリアアップ・コンサルティングの実施)を実施する義務が課されました。義務化により、これまで派遣事業を営んできた中小企業が、この義務に耐えかねて廃業するケースが増えると予想されます。

この派遣法改正では、同時に、全ての派遣事業が許可制となり、無期雇用の派遣労働者への規制が緩和されたこと、期間制限が大幅変更されたことといった面からみて、派遣労働者の雇用確保と地位安定を図る施策が施されたといえます。

そして、キャリアアップ措置義務もその一環として位置付けることができ、派遣労働者の雇用確保とともに、派遣という雇用形態を「短期間の使い捨て」ではなく、能力を向上させてキャリアアップをしていく雇用形態とするためのものです。

キャリアアップ措置義務の基本的考え方

一般労働派遣事業と特定労働者派遣事業の区別がなくなり全ての派遣事業が許可制となり、期間制限も大幅に変更されました、このことが会社側にとって有利であるのか、派遣労働者にとって有利であるのかという議論については、いずれの考えもあるでしょうが、「派遣」という雇用形態に対する基本的な考え方を大きく転換しなければならないのは間違いありません。

派遣元に無期雇用されている場合には規制が緩和され、派遣労働者に対して、派遣元がキャリアアップのための措置を行うこととなりました。

改正派遣法では許可制の派遣事業のみとなることから、派遣事業を経営するためには許可を獲得せねばならないところ、許可要件として「派遣労働者のキャリア形成を支援する制度を有すること」(派遣則第1条の4第1号)が挙げられていることから、対応が必須となります。

行うべきキャリアアップ措置の内容

厚労省により公表された告示によれば、派遣元は、その雇用する派遣労働者の全員を対象として、段階的で体系的な教育訓練を行うものとされ、このキャリアアップ措置は、有給で無償のものであるとされています(平成27年9月29日厚労省告示第391条)。

その詳細な内容は、派遣業務取扱要領に定められていますが、概ね次の流れとなります。

  1. 教育訓練計画の策定
  2. 派遣社員への情報提供・周知
  3. 派遣社員の現状保有能力・意向の確認
  4. キャリアアップ・コンサルティング
  5. 派遣社員への教育訓練

そして、このキャリアアップ措置の中で把握、涵養した派遣労働者の現状保有能力
に鑑み、その適正のある派遣先を選定し、派遣先を変更する毎にキャリアアップ措置を踏まえた修正を行うことによって、派遣労働者の能力と意向に沿った能力開発、雇用安定を図ることができるのです。

キャリアアップ措置を行わないとどうなるか

キャリアアップ措置を行っていることが派遣業務を行うための許可要件となっていること、改正派遣法では一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業との区別がなくなりすべての派遣事業が許可制となったことから、キャリアアップ措置義務の不履行を継続すれば、許可取消、事業停止命令、改善命令の対象となるため、厳しい行政措置が予想されます。

許可取消となれば、派遣事業自体を行うことができませんから、派遣元会社にとって致命的となります。
   

派遣労働者を利用する派遣先の注意点
派遣先としても、派遣元がキャリアアップ措置義務に違反したことを理由に許可取消となると、その後の派遣労働者の受け入れは違法派遣となり、みなし雇用制度の制裁を受ける可能性があります。

したがって、派遣契約を締結する前に、キャリアアップ措置の履行状況及び内容について派遣元に対して確認する必要があります。また、キャリアアップ形成支援を実行できる体制を有しない派遣元に対して、要請に応じて教育訓練の場を提供する協力を行うことも考えられるでしょう。

また、キャリアアップ措置の際に作成される「教育訓練計画書」は、許可更新の際の申請書類とされていますし、毎年の労働者派遣事業報告書に、キャリアアップ措置の実績を記入する欄があること、派遣元管理台帳の記載事項ともされていることから、今後監督、指導は厳しく行われる可能性が高いといえます。

キャリアアップ措置が義務化され、今後の動向は?

「正社員より安価な労働力だから」「不要になったら即座にやめてもらえるから」といった消極的な理由で派遣労働者を利用していたり、同様の理由を売りにして事務作業に類似する業務を行う派遣労働者を提供していた派遣事業者は今後転換が必要です。

逆に、専門特化した派遣労働者を自社の教育・訓練制度によって能力向上させ、その専門性をセールスポイントとして派遣先に対して提供していた派遣元にとっては、派遣労働者に対する人事労務管理をこれまでと大きく変更する必要はなく、チャンスが拡大したといえるでしょう。

適切なキャリアアップ措置義務への対応

今回は、平成27年9月に施行された改正労働者派遣法のうち、キャリアアップ支援措置義務について解説しました。改正派遣法全体の概要は別記事(準備中)で解説しますが、改正派遣法によって、「派遣」という雇用形態への基本的考え方を大きく転換させる必要があります。

御社の派遣事業の将来像について、キャリアアップ措置義務への対応について、お迷い、お悩みの場合は、お気軽にご相談くださいませ。

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