違法派遣労働契約申込みみなし制度派遣先注意点会社側労働問題弁護士

派遣法が改正され、実務上、多くのトラブルの増加が予想されます。特に問題が大きいとされているのが、違法派遣を行った場合の労働契約申込みみなし制度の適用の問題です。

違法派遣を行った場合には、本来労働契約を結ばずに労働者に指揮命令をしながら利用できる点がメリットであった派遣社員に対し、労働契約を申し込んだのと同様の効果をみなされるということで、派遣先にとって非常に重大な効果を有する改正内容となります。

そのため、今後は、どのような場合に労働契約申込みみなし制度の適用があるのかをきちんと理解した上で、労働契約申込みみなし制度の適用とされる違法派遣を行ったと評価されないよう、派遣先会社は派遣労働者を受け入れる際には細心の注意を払う必要が生じます。

派遣労働者の利用を開始するのは、派遣開始時点ですので、労働契約申込みみなし制による民事上の紛争を回避するための注意も、このスタート時点である派遣契約開始時点から行っておく必要があります。

今回は、労働契約申込みみなし制がどのような違法派遣の場合に適用されるかと、派遣法改正で導入された労働契約申込みみなし制の適用対象とならないよう派遣先会社が注意しなければならないポイントを解説します。

派遣労働者の利用を検討している場合には、企業側の労働問題に強い弁護士へご相談ください。

5つの違法派遣

派遣法改正によって新たに導入された労働契約申込みみなし制では、一定の違法派遣の実態がある場合に、派遣先が派遣労働者に対して労働契約を申し込んだものとみなされ、派遣労働者がこれに同意した場合には、本来雇用関係になかった派遣先と派遣労働者との間で雇用契約が締結されるというものです。

派遣労働者の方が正社員よりも人件費が低く、流動性が高いという意味で使い勝手のよう労働力として重宝していた派遣先が多いでしょうが、これが違法派遣ということとなると、直接雇用契約を締結しなければいけなくなる可能性が高くなるということです。

労働契約申込みみなし制が適用される違法派遣は、次の5つです。

5つの違法派遣
  1. 派遣先が、禁止業務に派遣労働者を従事させたケース
  2. 派遣先が、派遣労働者を無許可事業主から受け入れたケース
  3. 派遣先が、派遣労働者を、事業所単位の期間制限に違反して受け入れたケース
  4. 派遣先が、派遣労働者を、個人単位の期間制限に違反して受け入れたケース
  5. 偽装請負のケース

したがって、今後は、以上の5類型の違法派遣とされないためには、労働者派遣を受け入れるスタート時点から、派遣先としても慎重なチェックが必要となってきます。

違法派遣とされないため派遣受入れ時の派遣先の注意点

違法派遣とならないためには、主として派遣元が注意して派遣を行わなければならない点が多いといえますが、派遣先としても、「派遣元任せであったので、違法派遣かどうかはチェックしていなかった。」というのでは、いざ違法派遣の事態となった場合に、労働契約申込みみなし制によって、思わぬ損害を被ることとなりかねません。

そのため、派遣先が行うべき派遣受入れ時の注意点を解説します。

禁止業務に従事させないために

派遣先が、派遣労働者を派遣が禁止されている業務に従事させていた場合には、違法派遣として、労働契約申込みみなし制の適用を受けます。

そのため、派遣先として派遣労働者を利用する際には、派遣が禁止されている、いわゆる禁止業務への従事を行わないよう注意しなければなりません。派遣が禁止されている業務は、例えば次のものが挙げられます。

派遣禁止業務の例
  • 港湾運送業務
  • 建設業務
  • 警備業務
  • 病院等における医療関係の業務

したがって、労働者派遣を受け入れる際には、派遣労働者に対してどのような職務を担当させる予定であるかを明確にした上で、上記禁止業務に該当しない業務であることを確認しましょう。

無許可事業主から派遣労働者を受け入れないために

派遣先が、無許可事業主から派遣労働者を受け入れた場合には、違法派遣として、労働契約申込みみなし制度の適用を受けます。

そのため、派遣先として派遣労働者を利用する際には、派遣元である会社が、無許可事業主でないかどうかを注意しなければなりません。

派遣元は、労働者派遣契約を派遣先との間で締結する際には、派遣業の許可を受けていることを派遣先にあらかじめ明示しなければならないことが派遣法で求められているものの、虚偽の事実を告げる悪質な派遣元会社がいないとも限りません。

そのため、派遣先としても最低限、インターネット上で、派遣元が派遣業の許可を有しているかどうかを確認しておくべきです。

有料派遣事業者認定制度の認定を受けている派遣元事業主は、こちらのサイトで確認できます。

事業所単位の派遣制限期間に違反しないために

派遣先が、事業所単位の派遣制限期間に違反して派遣労働者を受け入れた場合には、違法派遣として、労働契約申込みみなし制度の適用を受けます。すなわち、同一の事業所に対して同一の派遣労働者を派遣する場合の期間制限は3年となります。

そのため、派遣先としては、事業所単位の期間制限に違反しないかどうか、また、クーリング期間に該当するかどうかの確認をする必要があります。

受け入れ予定の事業所に、他に派遣労働者が派遣されていないかをチェックしておく必要があります。ちなみに、最初に期間制限の対象となる労働者派遣を行った日が、この期間制限の起算点になるので、3年の間に派遣労働者が交代した場合や、他の労働者派遣契約に基づく労働者派遣を始めた場合でも、期間制限はリセットされませんので注意が必要です。

また、期間制限に提唱する場合には、企業規模にもよりますが、他の事業所での受け入れに変更することも考えられます。

個人単位の派遣制限期間に違反しないために

派遣先が、個人単位の派遣制限期間に違反して派遣労働者を受け入れた場合には、違法派遣として、労働契約申込みみなし制度の適用を受けます。すなわち、同一の組織単位に対して同一の派遣労働者を派遣する場合の期間制限は3年となります。

そのため、派遣先としては、個人単位の期間制限に違反しないかどうか、また、クーリング期間に該当するかどうかの確認をする必要があります。

この際に個人単位の制限期間の判断要素となる同一の組織単位は、通常の会社では「課」程度の単位を想定することとなりますが、今後の裁判例では、企業規模によって様々な判断が下ることが予想されます。

なお、派遣元と派遣先が派遣労働者の受け入れにあたって締結する労働者派遣契約において、今回の派遣法改正で、契約において定めるべき事項として、個人単位の派遣制限期間の判断要素となる「組織単位」の記載が求められることとなりました。

したがって、この労働者派遣契約の記載をチェックした上で、派遣先としては、受入れようと予定している組織単位に3年間派遣された後、3か月のクーリング期間を経過していないために個人単位の制限期間に違反する派遣労働者でないかどうかを確認することが可能となります。また、期間制限に抵触する場合には、他の組織単位での受け入れに変更することも考えられます。

実務上残された課題

派遣法改正で導入された労働契約申込みみなし制は、まだ新しい制度であり実務の運用も進んではいませんから、当然まだ裁判で紛争化して判決となった先例が多くありません。そのため、裁判になった場合に、どのように判断されるかについては予想の範疇に過ぎず、確たる結論は明らかとはなっていません。

例えば、次の点は、裁判例の動向を注視していく必要があるとされています。

労働契約申込みみなし制の実務上残された課題
  • 違法派遣に該当する場合に、派遣先との間でどのような労働条件となるか
  • みなし制度によって締結された労働契約の契約期間
  • 労働契約申込みみなし制の適用されうる派遣労働者と派遣先との団体交渉義務

そのため、最終的な判断は司法判断を待たざるを得ないわけですが、少なくとも、労働契約申込みみなし制の対象とされる違法派遣の5類型に該当しないよう、派遣先は注意して派遣労働者の受け入れを行う必要がありす。

まとめ

派遣労働者を利用している会社は非常に多いといえますが、違法派遣の実態となっていた場合のリスクを正しく認識してる会社は少ないのではないでしょうか。一人でも派遣労働者を利用しているのであれば、派遣法の改正を正確に理解し、労働契約申込みみなし制による思わぬ損害を回避しなければなりません。

改正派遣法への対応に不安がある会社様は、企業の労働問題に強い弁護士へご相談ください。

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