有期契約社員育児休業改正法平成29年1月

正社員として、長年会社に貢献してきた女性社員の場合、妊娠・出産・育児といった出来事の際、育児休暇を取得させ、できる限り育児による離職を避け、優秀な人材を囲い込んでおきたいと考える会社が多いのではないでしょうか。

一方で、正社員ではなく、有期契約社員として雇用した場合であっても、一定の要件を満たせば、育児休業が取得可能です。

平成28年3月に改正され、平成29年1月から施行される育児介護休業法の改正によって、この有期契約社員の育児休業取得の要件は、更に緩和されました。

これにより、ますます有期契約社員が育児休業を取得しやすくなり、妊娠・出産・育児による離職を回避することが可能となります。

しかしながら、会社としては、きちんと有期契約社員の育児休業に関する労働法の知識を理解し、事前に準備しておかなければ、有期契約社員が育児休業を取得することが大きな負担ともなりかねません。

その上、有期契約社員の育児休業を理解しない会社や上司が、育児休業の取得に対して一方的に労働者に対して不利益な処分をすることとなれば、労働審判、訴訟などで争った場合、会社に不利な結論となります。

有期契約社員でも育児休業が取得できる

まず、有期契約社員であっても、一定の要件を満たす場合には育児休業を取得できることを十分理解しておいてください。

「有期契約社員の場合は休業は不要で、一度辞めればよい。」という考えの下に、有期契約社員からの育児休業の申し出を一律に拒否する会社の行為は妥当ではありません。

また、会社の従業員に対する教育、指導の徹底が十分でなく、育児休業について有期契約社員から相談を受けた上司が、「育児休業を取得することはできない。」と拒否した場合にも、その有期契約社員が会社に対して労働審判、訴訟などで権利を主張してくると、会社に不利な解決となる可能性が高いといえます。

有期契約社員が育児休業を取得できる要件は、大きく2つに分類されます。

  1. 実質的に期間の定めのない契約と同視できる有期契約社員
  2. 育児介護休業法の要件を充足する有期契約社員

特に、2については、育児介護休業法の改正によって要件が緩和され、平成29年1月の施行以降は、有期契約社員が育児休業をより取得しやすくなります。

実質無期の有期契約社員の育児休業

有期契約社員の形式で雇用されているものの、実質は無期契約に等しいという場合には、無期契約社員と同等の保護を、育児休業についても与えるのが妥当です。

そのため、実質無期の有期契約社員については、その他の要件を要することなく、無期契約社員と同様に育児休業を取得することができます。

有期契約社員が、実質的に無期契約と同視されるかどうかは、育児介護休業法の指針、通達によれば、例えば次のような基準で考慮されます。

  • 業務内容が恒常的か、臨時的か
  • 契約が反復して更新されているか、更新回数と期間
  • 期間満了時の更新手続が形骸化しているかどうか

実質も有期契約社員として、一定の要件を満たさない限り育児休業を与えないことを想定しているのであれば、この基準を参考に、「実質的に無期契約と同視される」と判断されないよう注意しましょう。

また、実質的に無期契約と同視されると判断されると、解雇権濫用法理が適用される結果、会社からの解雇がかなり困難となります。

育児介護休業法の要件を充足する有期契約社員の育児休業

育児介護休業法上、次の要件を満たす有期契約社員は、育児休業を取得することが認められています。

以下では、まず平成29年1月に施行される改正法より以前の、現行の育児介護休業法の要件を解説します。

なお、育児介護休業法6条1項但し書きにしたがって、労使協定を締結することによって、更に一定の労働者を育児休業の対象外とすることが可能です。

同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上

有期契約社員が育児休業の取得を申し出てきた際、育児休業の申し出直前の1年間の雇用関係をチェックします。

育児休業取得の申し出直前の1年間について、雇用契約が継続している場合には、この要件を充足することとなります。

子の1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれる

有期契約社員が会社に対して育児休業の取得を申し出た際、この時点での雇用契約によって、口頭又は書面によって会社が有期契約社員に示していた更新可能性によって、この要件の充足をチェックします。

また、この要件充足の判断の際には、更新が実際になされる可能性があるかどうかについて、実態を踏まえた判断がされます。

したがって、「更新の可能性あり」と書面で示されており、実際に他の有期契約社員も、長期間にわたって契約の更新を繰り返しているという場合には、育児休業の取得を申し出た有期契約社員も更新の可能性があるとして、この要件を充足することとなります。

子の2歳の誕生日の前々日までに労働契約の期間が満了し、かつ更新されないことが明らかでない

この要件が充足されるか否かは、有期契約社員が育児休業の取得を申し出た時点で、更新がないことが確実であるかどうかをチェックします。

「更新がないことが確実」と判断されるためには、会社としては、当該有期契約社員に対し、更新がされないことを書面によって明示することが必要となってきます。

したがって、子の2歳の誕生日の前々日までに労働契約の期間が満了する場合で、会社として、当該有期契約社員に対して育児休業を与えることを想定していないという場合には、更新の上限回数を区切り、それ以上の更新がされないことを書面で明示しておくとよいでしょう。

平成29年1月に施行される改正育児介護休業法

以上の育児介護休業法の要件を満たした有期契約社員の育児休業取得については、平成28年3月に改正され、平成29年1月に施行される改正育児介護休業法により、要件の緩和が行われました。

具体的には、次の通りです。

  • 同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上
  •   → 変更なし。

  • 子の1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれる
  •   → 廃止。

  • 子の2歳の誕生日の前々日までに労働契約の期間が満了し、かつ更新されないことが明らかでない
  •   → この「1歳6か月の誕生日に達する日まで」、の判断に変更。

したがって、これまで判断が困難であって「更新の可能性」という要件が廃止されたことで、ある有期契約社員が育児休業を取得できるかどうかの判断は、比較的容易になります。

また、1年以上雇用契約を継続し、「1歳6か月の誕生日に達する日までの間に、労働契約の期間満了や更新がない」という要件を充足すれば、育児休暇を取得できるようになったということで、有期契約社員の育児休暇取得は、より容易となったといえます。

就業規則の育児介護規程を見直しておきましょう

平成29年1月以降は、就業規則を改定していなくても、改正育児介護休業法に定めた要件を充足する場合には、有期契約社員であっても育児休業を取得できることとなります。

しかしながら、既に説明したとおり、有期契約社員から育児休業を取得したいという相談を受けた上司が誤った判断をしないよう、育児休業を取得できる要件を、従業員に対して周知、教育することもまた、会社の責任であるといえます。

そのため、平成29年1月以降は、改正育児介護休業法に合わせて就業規則を見直しておくべきです。

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