同一賃金同一労働法

「同一労働同一賃金」とは、同じ内容の業務を行っている者は、同じ金額の賃金をもらうべき、という考え方です。

このたび、平成27年9月16日、「労働者の職務に応じた待遇の確保等の施策の推進に関する法律」、いわゆる「職務待遇確保法」が施行されました。

同一労働同一賃金の考え方は、正規と非正規の格差が著しく広がる中で、「疑似パート問題」などというように、実際はパートではなく正社員と同様に、長期間、かつ、長時間の労働をしているにもかかわらず、正社員よりも安い賃金で働かされているパートを救うために提起された問題です。

このいわゆる同一労働同一賃金法などとも呼ばれる法律の制定、施行によって、どのような変化があるのでしょうか。

正規社員・非正規社員の格差問題とは?

今回の同一労働同一賃金の機運の高まり、及び職務待遇確保法の成立の背景には、長年社会問題化してきた正規社員、非正規社員の格差問題があります。

厚生労働省の統計によれば、正規社員と非正規社員の賃金格差は、約6割にもなるということです。

正社員の6割しか賃金をもらっていないことから、非正規社員であれば、フルタイム労働ではなかったり、短期間の就労を予定していたり、責任が軽かったりといった、業務内容に差があることが通常です。

しかしながら、人件費を安く酷使をするブラック企業の中には、正規社員と同程度の業務を与えながら、同様の賃金を与えない「疑似パート」の存在が、非常に問題視されていました。

日本の伝統的な賃金の決定方法に反する

欧米諸国では「職務給」といって、それぞれの仕事内容、業務内容に対して賃金が決定される方法が一般的です。例えば、営業職ならいくら、事務職ならいくら、といった具合です。

この職務給の発想からすると、業務内容が同様で、同じ量の業務を行っているのであれば、期間の制限があろうがなかろうが、賃金は同一である、という考え方と親和的です。

これに対して日本では、業務内容だけで賃金が決定されているわけではありません。日本の賃金決定の方法には、次のようなものがあります(もちろん、業務内容も賃金を決定する重要な要素となるケースはあります。)

  • 年齢給 ; 年齢によって賃金を決定
  • 勤続給 : 勤続年数によって賃金を決定
  • 役職給与: 役職によって賃金を決定

そして、特に年齢、勤続年数によって決定される賃金は、その人個人の属人的なものであって、例え仕事が軽いものに変更された等の事情があったとしても減額されないことが原則的な考え方となります。

日本の労働法において賃金差別が許されない場合

したがって、日本では、「同一労働同一賃金」は労働法上には定められていません。これは、後程説明する通り、今回の職務待遇確保法においても同様です。

ただ、日本においても、均等、均衡な賃金待遇を定める法律が、次の通り存在します。

  • 労働基準法3条 : 国籍、信条、社会的身分を理由とする差別を禁止
  • パートタイム労働法8条 : パートタイム労働者に対する不合理な差別を禁止
  • 労働契約法20条 : 有期契約者に対する不合理な差別を禁止

これらは、業務の内容による差別を禁止するためという目的ではなく、古くから差別が起こりやすい属性に対する差別を、人権侵害等の見地から禁止することを目的としたものです。

職務待遇確保法は、国の責務を定めたもの

この度成立した職務待遇確保法は、企業に対して「同一労働同一賃金」の原則を義務付けたものではありません。

あくまでも、同一の労働に対して同一の賃金を支払うべきという基本理念を推進するため、国の責務、事業主の協力、労働者の主体的努力を宣言したものに過ぎません。

したがって、今後国の施策が、同一労働同一賃金を推進するための法律に留まりますが、今後の国の施策によっては、より厳しく同一労働同一賃金の義務付けがなされる可能性があるため、注視して対応が必要となります。

また、同一の労働に対して同一の賃金を支払うということを推し進めると、単に正規、非正規の2分類、正社員とパートタイマーの区別というだけではなく、業務の内容によって段階的に考えるのも、有効な対応の一つでしょう。「限定正社員」の有効活用も有益です。

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