採用時の就活生へのセクハラ人事部長│トヨタ系企業幹部を提訴

セクハラというと、会社の上司が従業員に対して行う性的嫌がらせ行為が典型的です。その中には、対価型(性的行為の強要と共に、拒否した場合には労働条件の低下等の制裁を加える類型)と環境型(性的行為を行うことによって労働環境を悪化させる類型)があると分類されます。

しかしながら、セクハラが横行するのは会社内だけでなく、まだ社員となっていない就活生もその毒牙の対象となることがあります。特に就活の場合、経営者や人事労務・総務担当者は人事権を握っていることから就活生に対して強い権限を奮うことができます。

そのため、採用を見返りとした対価型セクハラの温床となり得ます。

今回は、トヨタ系企業の幹部が、就活生に対して対価型セクハラを強要したとして提訴された件について、「就活生とセクハラ」という観点から会社の責任、対応策を解説します。

採用面接で聞くとセクハラとなりうる質問

就活生に対して面接官となる場合、採用権限という強力な権限を有することから、何気ない一言が対価型セクハラであると評価されるおそれがあり、注意が必要です。

結婚・出産などライフプランに関する質問

会社側としては、現在結婚していて育児・家事等によって仕事を制限せざるを得ない事情があるのか、今後寿退社等、業務に影響あるライフプランを予定しているか否かについて、把握したいという気持ちは理解できます。

しかしながら、結婚、出産といったライフプランに関する質問個人のプライバシーの領域に立ち入るセンシティブな質問であり、人によっては不快に感じることがあり、セクハラと評価されるリスクがあります。

プライバシーに関する事項に立ち入らなくても、御社の業務に及ぼす影響を図るという観点から限定的な質問によって確認することが可能な事情ですから、質問内容を選択すべきでしょう。

交際相手に関する質問

交際相手の存否や、どのような人物であるかについては、当該就活生の能力、適格性に関係しない事柄であり、プライバシーの領域に立ち入る質問であることから、聞くべきではありません。

交際相手に関することを聞いた場合、不快に感じる人が多いと思いますので、セクハラと評価され問題となることが予想されます。

女性の面接時の服装について言及する

女性就活生がスカートを履くべきか、パンツスーツを着用すべきか、どちらが印象が良いかについて議論がされることがありますが、就活生に対して、その容姿、服装等に面接官が言及することは、セクハラと評価されるおそれの高い行為です。

私生活の予定を聞く

「この後、夜食事にいけますか?」「今週の土日は何していますか?」といった、私生活の時間におけるプライベートな予定を尋ねる行為は、セクハラと評価されるおそれの高い行為です。

日時を特定して予定を聞く必要は、採用の可否を決めるにあたっては不必要ですし、事実上個人的なデートに誘う示唆を含む発言であると評価されかねません。

就活生に対するセクハラとなる行為

面接時の発言以外でも、採用を獲得したい就活生の弱みに付け込んだ性的行為の強要はセクハラとなります。採用権限という強い権限を有している以上、自由な意思による交際であったという反論は、通常の場合に比べて認められ難くなります。

OB訪問、面接と称して個室で二人きり

会社の公式な制度とは異なって、OB訪問、事前面接等と告げ、個室に誘い込む行為は、明らかにセクハラです。

会社としても、このような違法行為を行う採用担当者がいないか、適切な調査、確認をすべきでしょう。

執拗に食事を誘う

就活生に対して有益な情報を教えることを口実に電話番号、アドレス、LINE等を好感し、後日個人的に食事、デートに執拗に誘う行為は明らかにセクハラです。

「あくまで個人的な誘いであって、嫌なら断ればよい。」といった反論は、通常の人間関係にはあてはまるものの、求人求職の中での双方の立場の強弱がある以上、認められることは難しいでしょう。

立場の強弱に十分注意すべき

面接官になった場合、採用権限という強い権限を背景に、就活生に対して一方的に質問することができることから、就活生が自由な意思に基づいて従っているという思いを持ちがちです。

しかしながら、これはあくまで採用の場におけることで、個人的な関係にまで発展すれば話は別です。採用を獲得したいがために内心嫌悪感を抱きながらも従っていたとすれば、悪気がない中でもセクハラを犯していたおそれがあり、労働審判、訴訟等に紛争が拡大すれば、会社に不利な判断が下る可能性が高いと言えます。

就活生に対するセクハラが問題となった事件

就活の場は、特にセクハラ発言、セクハラ行為が起こりやすい構造的な地位の強弱が存在することから、過去にも多くのセクハラ問題が起こっています。

諸報道によれば、平成28年3月25日、トヨタ系企業「アイシンAW」の幹部社員が、採用の見返りとして女性就活生に対して性的関係を迫ったとして、慰謝料請求訴訟を提訴しました。

就活生に対するセクハラについて会社の責任

就活生に対して面接官がセクハラ発言、セクハラ行為を行った場合、「面接官と就活生との個人的な問題であるから会社は関知しない。」という会社の対応はお勧めできません。

面接官の就活生に対するセクハラは民法上の不法行為(民法709条)となるところ、就活の場におけるセクハラは業務の執行に付随してなされたものといえますから、会社もまた、使用者責任(民法715条)を負うと考えます。

会社側の対応としては、面接官となる人事労務・総務担当者に対して、就活生に対する個人的な連絡を一切行わないよう周知徹底すると共に、発覚した場合には厳しく処罰すべきでしょう。

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