企業のマタハラ防止策

マタハラに関する重大な裁判例が、最近いくつも登場していることで話題となっています。

「マタハラ」とはマタニティハラスメントの略語で、妊娠や出産を理由として職場においていやがらせ(ハラスメント)を行うことをいいます。

たとえば、妊娠をした女性社員を退職させる、出産によって産休に入ることによって減給、降格するなどといった会社の処分が、マタハラとして社会問題化しています。

マタハラは女性の人格権の侵害であり、違法性の強い行為といえます。近時、厚生労働省は、マタハラ防止策に関する指針を公表しました。平成27年度、労働局の雇用きんとうしつの統計では、マタハラに関する装弾件数は増加の一途をたどり、4762件となっています。今後もますます注目度の上がる問題であるといえるでしょう。

その他のマタハラの記事は、こちらをご覧ください。
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厚生労働省発表のマタハラ指針

厚生労働省がマタハラ防止に関する指針を発表していますので、こちらを参考に、企業は、自身の会社でマタハラがおこらないよう防止策を検討すべきでしょう。

厚生労働省の指針が示すマタハラ防止策には、懲戒理由の一つとしてマタハラの禁止を、就業規則に明記するという案があります。

懲戒理由には、よくありがちな非違行為のケースを列挙するのが通常ですが、これは、実際に問題となったときに従業員を懲戒処分に処しやすくするために列挙するという理由と共に、あらかじめ就業規則を読ませることによって、非違行為を事前に予防する抑止力とするという意義もあります。

マタハラを懲戒理由として列挙し、この就業規則をあらかじめ労働者に周知徹底しておくことによって、どのような行為が悪いことか、すなわち、「マタハラは悪いことなのだ。」というのを労働者にしっかり理解させるのです。

会社でマタハラ防止策を検討する際の参考とすべき経緯

会社で、就業規則の改正などでマタハラを防止する際に検討すべき資料は、次の通りです。

  • 雇用機会均等法・育児介護休業法改正(平成29年1月1日施行)
  • 最高裁平成26年10月23日判決
  • 厚生労働省の不利益取り扱いに関する指針解釈通達の改正(平成27年1がつ 23日)
  • 「今後の仕事と家庭の両立支援に関する研究会」報告書(平成27年8月7日

特に、平成29年1月1日より施行される雇用機会均等法、育児介護休業法の改正では、職場における言動によって労働者の職場環境の害されることのないよう、会社が適切な体制の整備をすることが義務付けられ、次の理由によるハラスメントを防止すべきであることが明示されました。

改正雇用機会均等法

  • 妊娠したこと
  • 出産したこと
  • 産前産後休業を取得したこと
  • その他の妊娠や出産に関する事由に関する言動

改正育児介護休業法

  • 育児介護休業
  • その他の子の養育、家族の介護に関する制度、措置の利用に関する言動

このように明示されて防止の対象となっていることについては、会社としても、教育、指導を特に力を入れて徹底しなければなりません。

マタハラ防止策をとらない場合のリスク

企業がマタハラ防止策をとらない場合、いざ会社内でマタハラが起こった場合、その責任を負うリスクがあります。

マタハラがこれだけ社会問題化しているわけですから、パワハラ、セクハラと同様に、「知らなかった。」「社員が勝手にやったことなので。」というような言い訳は通用しないでしょう。

企業が負う責任としては、使用者責任、安全配慮義務違反の責任の、大きく二種類に分かれます。

いずれも、マタハラによって被害者が被った損害を、企業が賠償する責任を負うこととなります。

就業規則の再確認をしましょう

就業規則とは、「会社の憲法」ともいわれる、会社規程の中でもっとも重要なものです。

労働者は、労働法によって保護されていますが、これに対して、会社が自身を防御するための根拠は、就業規則に他なりません。

雇用機会均等法、育児介護休業法の改正によって就業規則にマタハラ防止を定めることが義務化されたわけではないものの、会社によるマタハラ防止の体制を適切に整備する義務の一内容として、就業規則に明記し、懲戒事由とすることは非常に効果的です。

懲戒理由にマタハラを列挙し、厳しく処罰することによって、いざというときに企業の責任を軽減します。

また、単に就業規則に書けばよい、ということではありません。実質的にマタハラを防止するためには、就業規則の周知を徹底し、労働者に対して教育、普及を行わなければ、十分とはいえません。就業規則改正以外に、どのような教育、指導、周知徹底、苦情処理などの予防体制の設置を行ったらよいかは、既に出されているセクハラ指針が参考となります。

当事務所では、就業規則の作成、見直しも、弁護士としての予防法務的な視点からご依頼をお受けしております。

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