美容請負雇用

当然ながら、雇用となれば、雇用契約前に労働条件を通知する義務があることから、このような場合のほとんどは、会社が労働者としての労働法の保護を受けることを嫌って、請負として扱っている、というケースです。

この場合、実態としても請負であれば結構ですが、実態は雇用であるのに請負ということにして労働法の適用を免れようという手口は、実際には困難です。最終的に訴訟などで労働者性が争われた場合には、実態が判断の対象となります。

美容業界で嫌われる労働者保護

美容業界は人材が命、といいながら、労働環境は過酷で従業員満足度が低い、という企業は今なお多いものです。

労働者(雇用)と扱われると、労働法の保護を受けますが、美容業界の風習は、労働者に対する保護に反するものばかりです。例えば、次の保護が、美容業界の経営者にとっては非常に腹立たしいものでしょう。

  • 雇用契約で定めた所定労働時間を越えたら残業代を支払わなければならない
  • 雇用契約で定めた法定休日に働かせたら休日割増賃金を支払わなければならない
  • 6か月以上働いたら有給休暇を与えなければならない
  • 遅刻などの勤怠不良があってもすぐには辞めてもらえない(解雇できない)
  • 能力が低かったことが判明しても、合意した賃金を支払わなければならない
  • 成果が上がらなくても、賃金は変わらない
  • 会社に一定額の負担のある社会保険などの保険に加入しなければならない

このような労働者の保護を嫌うがあまり、実際には労働者であるにもかかわらず、スタッフを請負として扱っている企業もあります。

請負とすると、そのスタッフは、労働者ではなく個人事業主として扱うこととなりますので、残業代、社会保険など上記の不満はいっきに解決することとなります。

請負か雇用かの判断基準

雇用契約、請負契約は、民法上の条文では次のように定められています。

民法第632条(請負)

当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

民法第623条(雇用)

当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる

雇用の場合には、労働者は、使用者の指示に従うことが必要であり、業務についての裁量の幅は狭いものです。その代わりに、拘束されることの対価として一定の賃金を保証されます。

これに対して、請負の場合、仕事を完成させることが必要であるものの、完成に至るまでの業務の裁量の幅は非常に広く、請負人に任されています。その代わりに、仕事が完成しなければ対価としての報酬は発生しません。

主な判断要素は次の通りです。

時間的拘束性があるかどうか

雇用の場合、所定労働時間の定めがあり、所定労働時間の間は会社に拘束されることで、その対価として賃金を得ます。

これに対し、請負の場合、どの時間に働くかは、請負者の裁量に任されています。

ただし、雇用であっても、裁量労働制、事業場外みなし労働時間制、フレックス制、変形労働時間制など、労働時間をある程度自由に調整できる制度が利用でき、また、請負であっても業務の種類による制限(例えば、夜中に工事現場で働くことは周囲の騒音被害のため不可能等)があるケースもあります。

場所的拘束性があるかどうか

雇用の場合、どこで業務を行うかについても、会社が労働者に対して指示します。

これに対し、請負の場合には、仕事が完成する限り、どこで働くかも請負者の裁量に任されています。

ただし、雇用であっても、事業場外みなし労働制の対象者や、在宅ワーカー、リモートワーカーなど、場所的制限の希薄な雇用形態も増えています。

指揮命令があるかどうか

雇用の場合、業務の内容、遂行方法について、事細かに使用者から労働者に対して指示をすることが可能です。

これに対して、請負の場合には指示をすることはできません。ただし、注文の内容とされる程度の概括的な指定を行うことは可能であり、全く自由でなければならないというわけではありません。

代替性があるかどうか

代替性とは、「その人が業務をしなければならないか、他の人が行ってもよいか」という問題のことをいいます。

事業者性があるかどうか

報酬・賃金の支払い方

ある美容室の例

例えば、スタッフを雇用するとなると、経営者が自分の好きなように業務内容、業務の遂行方法を指示できる反面、最初に決めた時間以上に働かせる場合には残業代を支払わなければなりませんし、その時間きちんと働いていた場合には、仮に成果が上がらなかったとしても賃金を減額させることはできなくなります。

このような、残業代を初めとする労働者保護を嫌うがあまりに請負としたとしても、根本的問題は解決しません。

雇用と請負は本来的に性質が違うので、同じスタッフの雇用形態を雇用から請負にしたとしても、実態が雇用であれば労働者としての保護を免れられません。

むしろ、実態を請負としてしまえば、経営者から、働き方に関する指示はできなくなりますから、能力ややる気のない者は、収入が下がる可能性が高くなりますから、ますますやる気がなくなり、能力の高い者も転職していってしまうリスクが高まります。

まとめ

「残業代を支払いたくないから」「自由に解雇したいから」「社会保険に加入させたくないから」といった理由で、実態は雇用のスタッフを請負とするのはお勧めできません。

雇用と請負は別物であるということを理解した上で、企業のスタッフそれぞれの働き方の実態に合った雇用形態を選択するべきです。

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