セクハラ懲戒処分懲戒解雇量定程度

優秀な労働者の確保が困難となっていく中で、女性労働者の活用は、企業にとってますます重大な課題となっています。労働力を十分に確保できなければ、企業の持続的発展は困難です。

そのため、女性労働者に働きやすい就労環境を提供することは、企業にとって喫緊の課題なわけですが、セクハラ問題は、女性労働者にとって就労環境を著しく劣悪なものにする重大な問題です。

したがって、企業の継続的な運営、発展のためにも、セクハラに対しては厳しく対応していかなければなりません。

企業における秩序違反行為に対する制裁として、懲戒処分があります。懲戒処分には、雇用契約の継続を前提とする軽度のものから、雇用契約の解消を前提とした懲戒解雇などの重度の処分まで、その制裁の程度は様々です。

セクハラ問題も同様、刑事事件になりかねないものから会社内で解決すべきものまで様々であり、ケースバイケースの対応でどの程度の懲戒処分を行うかを判断、決定しなければなりません。

今回は、セクハラ行為に対する企業の懲戒処分の量定について、また、懲戒解雇が可能な場合はどのような場合かについて解説しました。

その他、こちらでも解説した通り、セクハラ問題への対応は多くの労働問題を総合的に考えなければなりませんから、セクハラの予防、再発防止に取り組む際は、企業の労働問題に強い弁護士へご相談ください。

多様なセクハラ行為と懲戒処分

セクハラは、男女雇用機会均等法に、一応、次のような定義がされています。

「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」

しかし、この定義は、セクハラとして問題化する最も典型的な事例を挙げるものです。具体的には、「対価型セクハラ」「環境型セクハラ」と呼びます。

ただ、セクハラは、何もこの定義に厳密に限定されるわけではありません。ただ、どのような行為をするかによってセクハラの程度は様々であり、刑法違反に該当するものから、民法違反に該当するもの、民法違反にすら該当しない軽微なものであるがセクハラとして会社が対処すべき問題まで、幅広いセクハラが存在します。

「セクハラに該当するか。」という問題が、「セクハラ問題として会社が対処すべき問題であるか。」、という意味であれば、被害者が「嫌だ。」と感じれば、それはすなわち、セクハラ問題としての対応が必要であると考えます。

これに対し、「懲戒処分が必要か。」「懲戒解雇が可能か。」という意味で「セクハラに該当するか。」を検討するのであれば、一定程度以上の重度のセクハラが、懲戒処分の対象とすべきセクハラということとなり、その中でも特に責任の重いセクハラに対してのみ、懲戒解雇が可能となると考えるべきです。

刑法違反に該当するセクハラ行為には懲戒解雇も辞さない

セクハラ行為の中で最も責任の重い行為は、刑法違反に該当するセクハラ行為です。

刑法違反に該当するセクハラ行為とは、例えば次の通りです。

  • 刑法上の強姦行為(被害者の意に反して姦淫行為を行う)
  • 刑法上の強制わいせつ行為
  • 被害者の意に反して服の中に手を入れて胸を揉む行為
  • 被害者の意に反して無理やりキスをする行為

刑法違反に該当するセクハラ行為は、「つい調子に乗って。」「酒の勢いで。」等といった言い訳は通じず、加害者に有利に考慮すべき情状なども存在しません。

そのため、刑法違反に該当するセクハラ行為を行った加害者に対しては、懲戒解雇を含む、労働契約の解消を前提とした懲戒処分で、厳しく処罰することとなります。

民法上の不法行為に該当するセクハラ行為と懲戒処分

刑法違反の行為よりは軽度であって、刑法違反には該当しない場合であっても、民法上の不法行為には該当するセクハラ行為があります。

この場合には、強姦罪、強制わいせつ罪等の要件は満たさないため、逮捕、起訴といった刑事処罰は受けないものの、被害者から不法行為に基づく損害賠償請求がなされれば、金銭で被害を賠償しなければならないこととなります。

民法上の不法行為に該当するセクハラ行為とは、例えば次の通りです。

  • 被害者の意に反して、服の上から胸、尻を触る行為
  • 被害者の性的事柄に関する誹謗中傷を行う行為

民法上の不法行為に該当するセクハラ行為を行った加害者に対しては、一度目のセクハラ行為で契約解消を前提とした懲戒解雇を行うことは、厳しすぎると考えられ、労働者から不当解雇であるとして労働審判、訴訟、団体交渉などで争われ、会社に不利な解決となる危険性が一定程度存在します。

これに対し、民法上の不法行為に該当するセクハラ行為であったとしても、会社からの注意指導、懲戒処分などに反して反復継続して行われていた場合には、懲戒解雇もやむを得ないでしょう。

とはいえ、雇用契約の存続を前提とした懲戒処分の中では、出勤停止、減給、降格など、相当重度の懲戒処分を行うこととなります。

民法上の不法行為に該当するセクハラ行為に対する退職勧奨

民法上の不法行為に該当するセクハラ行為に対しては、懲戒解雇は厳しすぎるものの、雇用契約の継続を前提とした懲戒処分の中では、相当重度の懲戒処分をすべきであると解説しました。

この重度の懲戒処分を受けたことにより、社内、取引先、家族にセクハラ行為を行った事実は知れ渡ることとなり、セクハラ加害者にとっては会社内で就労しづらい環境となりますから、この点を十分に理解させた上で、退職の意思表示を労働者から自発的に行わせることも検討すべきです。

また、人事労務管理の基本としても、セクハラ行為の被害者と加害者を、このまま同じ場所で一緒に就労させ続けることは適当ではありませんから、いずれかを異動、配置転換させなければならず、その場合にはセクハラ被害者ではなくセクハラ加害者に対する処分によって実行すべきです。このことからも、セクハラ加害者に自発的に退職してもらうことは、退職強要とならない限り、妥当な解決であるといえます。

企業秩序違反行為となるセクハラ行為と懲戒処分

民法上の不法行為にすら該当しない程度の軽度なセクハラ行為や、民法上の不法行為に該当するか否かは微妙であるが損害額が非常に小さいセクハラ行為の場合であっても、刑法にも民法にも違反しないのだから何をやっても自由だ、ということにはなりません。

刑法、民法に違反しないものの企業秩序違反行為となるセクハラ行為とは、例えば次のものです。

  • 「結婚できない女。」「婚期を逃した。」など性的な事柄をことさらに指摘する行為
  • 女性社員だけに、お茶くみ、コピー取りを強要する行為
  • 「女の子」「おばさん」と呼んだり、ちゃん付けしたりする行為

民法上の不法行為として損害賠償請求をしたとしても損害額が僅少であり、裁判における解決が難しいとしても、セクハラ被害者が精神的に苦しんでいるケースは多くあります。このような軽度のセクハラ行為の場合には、会社内における人事処分、注意指導、懲戒処分によって解決されることが予定されています。

会社として、セクハラが会社内で禁止され、厳しく処罰される胸を就業規則に定め、研修、教育を通じて従業員に周知徹底を図るべきです。

また、これらの軽度のセクハラ行為に対して、注意指導を行っても改善が見られない場合には懲戒処分をすべきですが、反復継続して行われたとしても、懲戒解雇に至ることは厳しすぎると考えます。

「証拠がないので放置」はあり得ない。適切な対応を

セクハラ行為は、二人きりの密室で隠れて行われることが多く、セクハラ行為が行われたのかどうか、事実認定が困難であることが多いといえます。特に、セクハラ加害者がセクハラの事実を否定し、加害者と被害者の証言が大きく食い違う場合には特にセクハラ行為の認定が困難です。

しかし、会社として、セクハラ行為が会社内で行われないよう予防し、セクハラ被害の申告があった場合には調査し、対応することは労働者に対する義務です。

そのため、最終的には、「ある証拠から会社の考えを決定する。」という判断をせざるを得ません。セクハラ行為が存在したことが認定できないのであれば、それを前提に被害申告者に対して対応します。

ただ、後に会社による調査が不十分であることが発覚した場合には、会社が安全配慮義務違反の責任を追及されることになるため、「従業員の個人間の問題だから。」と放置する対応は不適切です。

なお、セクハラ被害者の中には、会社内における居心地、将来の業務上の支障、精神的苦痛等様々な理由から、加害者に迎合するような証言をする場合もありますが、これはセクハラ被害者特有の審理、行動パターンであるとされ、損害賠償請求を認めた裁判例も存在します。したがって、セクハラ被害者の証言を鵜呑みにすることなく、会社としての毅然とした対応が求められます。

セクハラ被害の申告を受けた場合には慎重に対応する必要がありますから、企業の労働問題に強い弁護士へご相談ください。

労働問題・企業法務のお悩みは、弁護士へご相談下さい!

労働審判、団体交渉、就業規則、問題社員への対応など、使用者側の労働問題は、経験とノウハウが重要な、非常に難しい法律分野です。

会社を経営していくにあたり、労働者との交渉は避けられませんが、一度トラブルとなれば、致命的ダメージとなるケースもあります。弁護士に頼らずに社長自身で解決するとなると、莫大な時間とエネルギーが必要です。

労働問題に特化した解決実績の豊富な弁護士が、労働法を使って会社を守り、継続的に発展していく方法について、詳しく解説いたします。